第4話

「あ、お疲れさま。」

「おつかれ。」


ヒラヒラ、と手を振る橋本くんに私も手を振り返す。


そばまで行けば橋本くんがゆっくり歩きだして、私も隣に並んで歩く。学校を出て少し歩くと、小さな神社がある。橋本くんが転校してきて数週間。お互い部活にも入っていなくて家の方向が同じだった私たちは、帰り道そこから一緒に帰るのが日常になっていた。


「今日は寒いね。」

「ね。夏ももう終わっちゃったんだな。」


天気の事、学校の事。なんでもない話をしながら、帰り道を歩く。


「佐々木(ささき)のさ、カツラがズレててさ、」

「うそー!笑わなかった?」

「笑っちゃったに決まってるじゃん。」

「ふふっ、でも私も多分笑っちゃうな~。」


橋本くんと話すのは楽しくて、まるで小学生ときに戻ったみたいだった。4年も会ってなかったなんて、忘れてしまいそうになる。


笑いながら話を続ける橋本くんの横顔を見上げる。

小学校の時は私の方が高かった身長も抜かされて、

声も低くなって、顔つきも少し変わって。けれど、屈託のない笑顔は昔と全く変わらないままだった。


そんな彼の笑顔を見る度、胸がぎゅっとなって。


なんとも形容できない切なさが、襲ってくるのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る