ラピスレポート

ラピスチルドレン

 モドラーから綺麗な宝石が取れた。それはその巨体に似合わない小さくて丸い瑠璃色の玉。


 モドラーには心臓をはじめとする臓器はあるが栄養を吸収する器官がない。

 口はあるが胃や腸などが存在しないのだ。これに対し様々な議論がなされたが、この瑠璃色の玉が出てきて更に物凄いエネルギーを秘めている事が分かった。

 これによりモドラーはこの瑠璃色の玉をエネルギー源にして生命活動しているのであろうと結論付けられる。


 瑠璃色の玉を『ラピスコア』と名付け研究が進められる。

 軍事兵器や未来のクリーンエネルギーなど様々な分野で研究がなされる。そんな中モドラーが後に『眼力』と呼ばれる能力を保有し人間側の作戦に支障をきたすようになる。

 何の手立てもなく苦戦を強いられる人間。


 ある人が考え訴える。こちらもモドラーの力を得れば対向できるのではないかと。

 そもそもラピスコアはモドラーの中にあるだけで他の臓器のように繋がっている訳ではなく体内にあるだけなのだ。 


 人間の体内に埋める。その変化は劇的だった力はみなぎり運動能力も判断能力も上がる。そしてモドラーを前にしても発狂しないことが分かるとその研究は一気に進められることになる。


 だがラピスコアを埋められた人間が自我を失い人間を襲い始めた為に処分。原因究明と研究の結果ラピスコアに適する人間とそうでない人間がいることが判明する。そしてラピスコアとの融合率が高すぎても自我が保てなくなることも後に判明する。

 そして成長期の子供であれば一緒に成長するのでラピスコアの定着率は良くなり、融合率も安定して安全な60%を目指し調整しやすいことも分かり実行に移される。


 多くの犠牲を払い生まれた1人の男の子は研究施設ですくすく育つ。拒否反応も自我の崩壊もなく育つだけでなく、体内で新たなラピスコアを産み出すその男のは奇跡の子と呼ばれ番号で呼ばれていたが名前を与えられる。

 ラピスコアの元になったラピスラズリの和名『瑠璃』の名前が与えられる。


 瑠璃が産み出した3つのラピスコアを適合係数の高かった『穂花』『アネット』『真瑚』に与えられる。そのうち真瑚は暴走し射殺、この際にラピスコアが割れてしまうがまだ生きているそのコアのうち大きい方を成績の良かった『寧音』にそして割れた際性質が変化した小さな欠片と相性の良かった『翠』に与える。


 この真瑚を含めた5人は元々仲が良く特にそれぞれが瑠璃に対し憧れ、恋愛、恩等を感じていた模様。欠片を与えたことにより5人は瑠璃を強く求めるようになる。

 元々それぞれが持っていた好意が増幅した結果であると推測される。

 これは安全の為に記憶を消し別の記憶を与えた後も変わらず瑠璃を求め続けた。これについてはラピスコア同士が引かれあっていると思われる。試しに他のラピスコア所持者に近付けても反応はみられなかった。



────ねえ?


「アネットちゃん今日は何して遊ぶ?」

「えっとね、うーんとね、結婚式がしたい! 瑠璃くんが新郎でアネットが新婦さん!」


 アネットの提案に瑠璃は少し考えてパアッと明るい表情をするとアネットの手を握っる。


「僕良いもの持ってるんだ! ちょっとまってて」


 アネットを残し走って行くとすぐに額に汗を光らせながら息を切らし戻ってくる。


「これっ」


 瑠璃の指に握られていた光るオモチャの指輪。オモチャといっても合金性でガラスの宝石が光輝いている。それを見たアネットの表情が明るく輝く。


「うん♪ やろう」


 アネットが瑠璃を引っ張り木の下に引っ張るとレースのカーテンを切った物を頭に被り向き合う。


「それじゃあ瑠璃、 アネットは今、瑠璃を夫とし 神の導きによって夫婦になろうとしています。

 汝健やかなるときも 病めるとき……も 喜び…… 悲しみのときも、ん~と、色んなことがあっても 共に助け合い……えーと、アネットを好きだと誓いますか? 」

「なんか最後おかしくない?」

「良いの! アネットは誓う!」

「うん僕も誓うよ」


 瑠璃がアネットの左手の薬指に指輪を通すとアネットは嬉しそうに手を空にかざしてうっとりする。


「なにやってんのアネット?」


 背後から突然声をかけられアネットは瑠璃の背中に隠れる。


「ん~? アネットなに隠した?」

「な、なんでもない。なんの用事? 真瑚ちゃん」


 瑠璃の後ろから顔を除かせてアネットは突然の来訪者、真瑚から左手を隠す。瑠璃の後ろに隠れるアネットを疑いの目で真瑚が見る。


「瑠璃と遊ぼうと思ったらいつの場所にいなかったから探してたわけよ。でアネットが頭にレースのカーテン被ってたから新しい遊びかなってねえって──」

「うわっ!?」


 話の途中で油断したアネットに真瑚が飛び付く。


「ダメ! やめて! 痛いよ真瑚ちゃん」

「痛いのが嫌なら隠してるの見せなよ」

「やめて2人とも! ほら真瑚ちゃん一回離れてあげて、アネットちゃん痛がってるから。ねっ?」


 アネットの上にのる真瑚を瑠璃は離そうと必死に引っ張るが真瑚は調子にのってアネットが背中に隠す左手を引っ張る。


「真瑚離れなさいよ! 怪我させたらあんたまた先生に怒られるわよ」

「ちぇ~」


 揉める3人の後ろから掛けられた声に真瑚はしぶしぶ従う。


「ありがとう穂花ちゃん」


 土で汚れた顔に涙目のアネットが声の主、穂花にお礼を述べるが穂花はアネットに近付くと胸元に指を突き立てる。


「アネットあんたね、瑠璃の後ろに隠れてばかりいないで堂々としてなさいよ!」

「うん……ごめんなさい」


 アネットがショボンとして謝ると真瑚に詰め寄る。


「真瑚はもうちょっと人に優しくする!」

「ああ、はい、はい」

「はい、は1回でいいの!」

「はーーい」


 真瑚の適当な返事を聞くと穂花は次に瑠璃の胸ぐらを掴む。


「瑠璃! あんたアネットに頼られてんのならちゃんと守りなさいよ! 優しいだけじゃダメよ! 真瑚みたいな奴にはビシッと言ってやんなさい!!」

「う、うん頑張る……」

「頑張るじゃない! やるの!」

「は、はい!」


 穂花が掴んでいた手を離すと「まあそこが良いとこなんだけど」とボッソっと呟く。


「真瑚ちゃんごめん。これ……」


 アネットが左手を見せると真瑚と穂花の視線が指輪に釘付けになる。


「瑠璃これは?」

「ちょと説明してくれる?」


 真瑚と穂花に攻められタジタジの瑠璃の後ろで顔を赤らめてアネットが恥ずかしそうにしながらも自慢気に左手を掲げる。


「私、瑠璃くんのお嫁さんになったの。誓いも済ませたよ」

「はああ!?」


 真瑚と穂花の不満の声が瑠璃を責める。

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