双口尾怪獣 ツヴァイムント

 緊急召集に応じ集まった3人はすぐにMOFU KUMAへ搭乗するように指令を受ける。


 走りながら瑠璃が穂花に近寄る。


「あの意味後で教えろよ。俺と寧音2人にな」

「え~3人でですか~ 瑠璃くんの趣味は理解できないでもないですけど~ 初めては1人がいいですよ~」


 瑠璃が穂花の頭を軽く叩く。


「冗談ですよ。いいですけどあんまり大きな声は出さないでください」


 小声で穂花に言われ頷く瑠璃はスナイパーグマへと搭乗する。

 スイッチを入れ起動し、オートモードで地上へ向かって歩いていくようにするとモニターに現状の様子を映し確認する。

 映像では既にモドラーは海中を泳いでいる最中らしく自衛隊の悲惨な状況しか映っていなかった。

 今までだって自衛隊の人達に感謝していたし、申し訳なさも感じていた。


 ただアネットがいなくなった今この状況を見ると死んでいった人達の家族や恋人なんかを思い浮かべてしまい頬を涙が伝う。


「人間なんて勝手なもんだよな……その立場を分かってるつもりで実際は分かっていない。結局同じ立場になって初めて理解できるんだから。それじゃあ遅いのにな……」


 地上に出た瑠璃達に通信が入る。


〈到着予想時刻 02まるふた34さんよんそして今回のモドラーの名前は『ツヴァイムント』です。見た目は2足歩行の怪獣なんですがお腹にも口と歯が確認されています。あと尻尾も2本生えています気をつけてください〉


 翠の通信が名前と特徴を知らせてくれる。やがて海面から大量の水しぶきをあげながらツヴァイムントが姿を現す。

 頭の左右に後ろに向かって短い角が生え顔は恐竜太い手足と太い爪に対して横に平べったい体に2本の尻尾。

 特徴はなんといっても腹部に人間の口の様なものがあること。開くと鋭い牙が確認出来る。


「なにあれ、気持ち悪い」


 気持ち悪がる寧音の頭上を弾丸が飛んでくるツヴァイムントの肩に少量の血が飛ぶ。


「最近俺役にたってねえだろ。前に出ながらサポートするから寧音と穂花でやってくれるか」

「分かった!」

「了解です~」


 ツヴァイムントを目の前にしてファイターグマが下に置いていた武器を手に取る。ハンマーのように見えるその武器はカブトガーの頭に金属を詰め込み重量を待たせたものである。

 カブトガーの角を両手で持ちハンマーのように振るとツヴァイムントが腕でガードするがよろける。

 その隙を逃さず下から上にハンマーを振り上げる。顔面を強打し後ろに反り返るツヴァイムントに振り上げたハンマーを振り下ろそうとすると口が光り始めすぐに散弾のようにエネルギーが飛び散りながら放たれる。


「な!? 散弾?」


 直撃は免れたファイターグマにツヴァイムントが回転して尻尾で足をすくうとひっくり返ったファイターグマを2本の尻尾で叩いて連打する。

 その間も瑠璃の銃弾は当たっているがダメージを与えられていない。そんな中ラダルグマが走って来て滑りながらバールを振り抜くと背中に突き刺す。


「穂花ちゃん!」


 ファイターグマが持っていたハンマーを投げると空中で受け取ったラダルグマがバール目掛けハンマーを打ち付ける。深く入り込むバールを痛がるツヴァイムントの頭をハンマーで殴るとハンマーを下に落とし。背中に回り込みバールを引き抜いて顔面目掛け振り上げようとするところを再び散弾が襲う。


「今までのモドラーと違って~ 熱線の出が速いですね~」


 アーマーモドラーのプレートが焦げているのを見て汗を拭う穂花。


「威力も確実に上がってきてますね……このプレートもいつまで通用するんでしょうか」

「おい! 浜辺に留まらないで陸地に誘き寄せろ。そっちのが武器も多いだろ」


 瑠璃の通信と共に放った弾丸がヒットし傷口にめり込み血が吹き出す。怯む隙を狙ってファイターグマがハンマーで殴る。転げたツヴァイムントにラダルグマがバールを振り下ろすが足を尻尾で払われ転ぶ。

 すぐ立ち上がりツヴァイムントと対峙しながら徐々に内陸の方へ進んでいく。


 内陸には武器が設置されたりアンカーなどの拘束具があるのだがここ最近の度重なるモドラーの襲撃に補修が間に合っていないのが実情である。それでも遮蔽物はあり、武器の入れ換え補給が出来るメリットは大きい。


 下まで降りたスナイパーグマが銃弾を撃ち込みながら足止めをしてる隙にファイターグマがハンマーで強打しラダルグマも撃ちながらバールを突き刺していく。


「腹の口が何なのか分からないから近寄るなよ!」


 腹部に集中して銃弾を撃つ瑠璃からの通信が入る。2匹が後ろに回りやすいように瑠璃が正面を受け持つ。

 正面に立つと時々吐く散弾の熱線に苦しまされる。


「なんだよこの熱線。装甲が焼けるぞ」


 瑠璃のモニターに映るラダルグマのプレートも焦げているのが確認出来る。視線をずらした瞬間だったツヴァイムントの腹部の口が開くと光りを溜めると大きな火球を放ってくる。それに合わせ口から散弾を放つ。

 反応が遅れたのもあるが火球を避けた為に散弾が右腕に直撃する。


 右の爪1本が吹き飛び、1本がブラブラと配線かチューブだかでぶら下がっている。


「くそ! 腹からも熱線出せるのかよ」


 ファイターグマが腹の口めがけハンマーを振るうが口が大きく開き受け止められる。


「なにこれ!?」


 バリバリとカブトガーの頭部部分に歯を立てヒビを入れ始める。やがてバッキィン!! と音をたて破片を散らしカブトガーの小さな角の部分が砕かれる。


 ハンマーを砕いて半開きの口の中にスナイパーグマが右手に爪にのせたナパーム弾を腕ごと突っ込む。


「穂花! 腕を外してくれ!」

「了解しました~」


 瑠璃の通信より前にバールを振りかぶっていたラダルグマがスナイパーグマの右肩の隙間にバールを突っ込み関節部を外しスナイパーグマは腕を引っ張り引きちぎる。

 それと同時にツヴァイムント残された腕目掛けファイターグマがマシンガンを乱射し腕を破壊させながら口の中のナパーム弾を爆発燃焼させる。


 体内から爆発したツヴァイムントがよろめくのを逃さずカブトガーのハンマーを持つファイターグマとメイスに持ち変えたラダルグマが頭を潰すまで交互に叩き続ける。


 周囲の建物や地面が緑に染まり動かないツヴァイムントをそれでも叩き続けるクマたちを沈み始めた太陽がオレンジ色に染める。

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