第4話 異色に見えるコンビ

ガマ介とポセ丸。

他人から見れば、どう見てもガマガエルと豆柴の子犬なので、接点など、あるはずはない。

しかし、ガマ介とポセ丸は、常に寄り添っている。

散歩の時には、ポセ丸の背中にガマ介が乗って龍神池を一周する始末。

自然界では、あり得ない。

さすがに、戸澤白雲斎も不思議でならない。

『慎之介・・・

 あれは、なんとしたこと

 じゃ。

 ガマ介が、龍神池の青龍な

 のは、存じておるが。』

白雲斎と宗幸と小太郎の3人で、慎之介に詰め寄った。

『だって、名前でバレバレじゃ

 ないですか。

 雅が、名付けのセンスなさ

 過ぎなんです。

 ポセ丸って、ポセイドン丸

 出しで、海神なのに尻尾振

 って。

 ガマ介を、背中に乗せて散

 歩して。』

まさか、世間に広めるわけにもいかない。

その日の夕方のポセ丸の散歩に、白雲斎と宗幸と小太郎を誘った慎之介。

龍神池の畔の、慎之介の庵。

現在は、地蔵菩薩を奉って。

前の庇が長いのはもちろん毎年夏の地蔵盆というお祭りを行うために伸ばした。

近江の国(現在の滋賀県)にある甲賀忍者の集落。

京都滋賀の、八月下旬の風物詩である地蔵盆は、子供達の夏の終わりの楽しみになっている。

もちろん、慎之介と雅も幼少期から、慣れ親しんだ行事。

慎之介は、龍門館で、それをやろうとしている。

とはいえ、今はガマ介とポセ丸。

その地蔵堂の前で、ガマ介が青龍の姿になると、他の生徒達も集まってきた。

青龍の姿とは言っても、頭から肩程度。

とてもではないが全身は見えない。

ガマ介の青龍は、全長数千メートルに及ぶ巨大怪物。

従って、一般の目に見せるのは、胸まででも大きい。

それでも、100メートル近い高さ。

並んで、ポセ丸がポセイドンの姿を現した。

高さ50メートル以上あるだろう。

集まった生徒達は、ポセ丸の正体に驚くよりも、手を合わせる者が多かった。

神獣青龍と海神ポセイドン、どちらも宗教上は、神と崇められる立場なのだが。

慎之介と雅にとっては、ガマ介とポセ丸に過ぎなかった。

『さぁ、ガマ介・ポセ丸・・

 散歩しようか。』

慎之介の言葉に、青龍とポセイドンが、姿を変えて付き従い、いつもの光景。

尻尾を上げて振りながら、ガマ介を背中に乗せて、雅の周りを駆け回る黒い子犬がポセイドン等とは、思えない光景が戻ってきた。

その実、ガマ介とポセ丸は、雅に付き従っているのではなく、慎之介のお供をしている。

戸澤白雲斎は、青龍にしても

ポセイドンはなおさら、天上の民であるにもかかわらず、慎之介に付き従う意味がわからない。

しかし、ポセイドンと青龍は見たのだ。

マーシャル諸島の深海で、クラタマにまとわりつかれた慎之介が放った光の温かさは、自分達をはるかに凌駕していた。

『あの光は、菩薩様のもの。

 慎之介様は、天上人としての

 位が、はるかに上で。』

ガマ介の説明に納得はしたものの、慎之介をそこまでの人物と思えない白雲斎。

それはある程度仕方がない。

祖父が孫に過剰な期待をすると、孫はプレッシャーが大き過ぎる。

ただ、慎之介が真っ直ぐに育つことを望んでいる。

慎之介の放った光は、慎之介が手に入れた守護神の力。

光の温かさや霊力からすると、弥勒菩薩の力を使えるようになっていると考えるのが妥当。

慎之介が、弥勒菩薩になったわけではない。

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