第3話 海神ポセイドン

青龍姿のガマ介、さすがに速い。

マーシャル諸島まで超低空飛行にもかかわらず超音速で飛んだ。

2時間ほどでビキニ環礁の上空に到達してしまった。

一気に海底まで潜ると、慎之介はガマ介を離れ、辺りを探していた。

クラゲのような生き物がまとわりついてくる。

どう考えても危険ではなさそうだが。

とにかく鬱陶しい。

海神ポセイドンですら手を焼くイタズラ者のクラタマである。

ゴジラが生まれた時の核実験で残された核廃棄物と放射能によって異形の魔物になってしまった。

死ぬことすら許されない。

そのことを感じとった慎之介。

身体を極限まで縮めると、いきなり両手両足を広げた。

慎之介の身体が眩いほどの光を放つ。

真っ暗闇の深海が、温かい光に包まれると。

魔物クラタマが、クラゲの姿に戻っていった。

寿命の尽きていた者達は、昇天できた。

海神ポセイドンは、慎之介に菩薩の優しさを感じていた。

海面に浮いた、クラタマの遺骸を、雅が天に昇らせていく。

海神であるにもかかわらず、自身にはなし得なかった天空の慈悲の技を見た。

『慎之介様・・・

 青龍どん・・・

 儂を、ご家来衆の末席にお

 加え下せぇ。』

ポセイドンは平伏してしまった。

『おいおい・・・

 君は、元々神だろう。』

ガマ介は、半分あきれた。

半分である。

神獣であるガマ介は、同じ理由で慎之介に仕えている。

『鈍いお前さんでも感じたか。

 我が大将の将来を。』

ガマ介、呆れながらも、理解している。

しかし、慎之介は、あくまでも謙虚。

『家来やなんて、とんでも

 ない。

 友達になって下さい。』

ポセイドンは驚いた。

自分より、はるかに高い位の天上人から、そんな優しいことを言われたことなどなかった。

『ところでポセやん・・・

 日本の刀の小柄。

 沈んでるの、見たことな

 いかい。』

慎之介は、ニックネームのつもりだった。

『それなら、先日ガマ介に渡

 しましたが。』

ポセイドンも仲間意識が生まれたようだった。

『おぅ、あれが天空の小柄な

 のかい。

 もう、龍神池で海水を抜い

 ている。』

長年、深海に沈んでいたので、海水を洗い流す必要がある。

『ありがとう、ポセやん。

 ガマ介・・・。

 雅・・・

 帰ろうか・・・。』

雅も、戻って慎之介とガマ介に乗った。

帰路は、気にせず高く飛べるので、

ガマ介は、一気に、高度1万メートル以上まで飛び上がり、龍門館を目指した。

当然、往路とは段違いのスピード。

1時間ほどで龍神池に到着してしまった。

慎之介からテレパシーを受け取っていた白雲斎が皆を龍神池に集めてしまっている。

青空から虹が降りてきたと思ったとたん、ガマ介と慎之介が龍神池に飛び込んだ。

すぐに、天空の小柄を手に池から上がった慎之介。

『みんな・・・

 これが、天空の小柄だ。』

皆に見せながら、抜刀すると、小柄が赤く輝き出した。

『素材が、オリハルコンだ

 から、赤く光るんだ。』

そこに、小走りで近づく雅と黒い子犬。

『お前、その犬。』

慎之介はいぶかしげに見た。

『この人が、うちのダーリン

 なのは、知ってるよね。

 この人が、月山の宗さん。

 この人が、風磨のこた兄さん

 仲良くするんだよポセ丸。』

名前に慎之介とガマ介は、ひっくり返った。

『こら、ポセやん・・・

 なんぼなんでも豆柴って。』

慎之介が、あまりに驚いたので、皆が変な予想をはじめた。

『しかし、ポセ丸って。

 もう少し、えぇ名前。

 思いつかんのかい。』

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