第2話

「ゼェゼェ…お昼を食べるだけでこんなにも消耗するとはな…」


「えっひなたん大丈夫?なにか悪いものでも食べたのかな…?仕方がないから保健室一緒に行く?ハァハァ」


 藤原は自己省察力が常時バグっているせいか勝手なことを言っている。おまえ!そういうとこだぞ藤原ァ!


「そこのお二方、お待ちくださいまし」


 ふと後ろから声を掛けられ二人して振り返るとそこには灰桜色の髪の小柄な少女がいた。


「あなたが神崎さんですの?」


「そうだけど…」


 少女はにっこりと柔和な笑みを浮かべた。


「投稿小説数25作品。最大評価作品『喰らう箱と死なない少女』☆93…カクヨム甲子園でジャンル別大賞受賞経験あり」


 微笑を崩さないその顔を見て、私は背筋が冷たくなるのを感じた。


 なぜ私のことをそこまで知ってるんだ?


「ふふ、不思議そうですわね?」


「ちょっと待ったぁ!」


 そうこうしてると藤原が間に挟まってきた。


「ひなたんに触れるのは私を倒すことが出来てからっていうのは忘れてもらっちゃ困るぜ!?」


「いつから出来たそんなルール!?」


 そんな私と藤原のボケとツッコミを少女は意にも介さない様子だった。


「そういうあなたは藤原さんですのね?投稿小説数14。最大評価作品『アイリーン・F・ウッド』☆41」


 んふ、と含むような笑いと共に少女はどこか蠱惑的な手つきで藤原の顎を軽く一撫でした。


「ひっ!?」


「くす…浅ましいワンちゃん?そのだらしないお口からどんな情けない声が漏れるか教えてくださる?」


「えっ…あっ…ひぃっ!?」


 少女の白い指は藤原の顎を伝って耳の裏を撫でつけた。


 突然の桃色展開に私はなすすべもなくただ突っ立ていることしかできなかった。


「ふふ…」


「な、なにしてるんだよお前ぇ!?」


 ようやく我に返った私は震える声で制止を叫んだ。


「おっと…少しやりすぎてしまったかしら…」


 藤原はその場で膝から崩れ蕩けたような顔で虚空を見上げている。


「…」


「お、おい藤原…」


「しゅ、しゅきぃ…」


「あまりにもチョロいなお前!?」


 お前には人としての尊厳は存在しないのか!?


「い、一体なんなんだお前は!こんな変態一人蕩かしたところで…わ、私は怯まないんだからな!?」


「くす、ちょっとした戯れではございませんか。ご堪忍くださいまし」


 少女は手を口に当てて短く笑うとスカートの端を摘みカーテシーをして見せた。


「申し遅れました。私は外部転入生の九瑛是徒クエイ ゼト。私をこの学校の文芸部にご案内くださいまし」


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