第3話

 正直な話、宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者や悪の組織やそれらと戦うアニメ的特撮的マンが的ヒーローなんかは、ぼくは小さいころから信じてはいなかった。もちろんサンタクロースもだけど、それこそラノベのように部活にヒロインの女の子の周りで宇宙人や未来人や超能力者やそれらとはかけ離れたヒロインに寄り添う凡人なんかが現実に存在していたこともぼくは知っていた。知っていたというよりは純粋にそれらを信じることが出来なかった。そう悔過離れすぎている。小さいころからそう思っていた。

 そう思っていたのだ、この超常現象研究部通称オカルト研に。


 しかしそれらの存在がいないということに懐疑的になった、特に幽霊や都市伝説なんかはなまじ舐められるものではないということ。またそれらの存在の中で一番怖いのは人なんだということをぼくは高校生になって改めて考えるようになった。なまじ人間のほうが幽霊なんかより考えていることがはっきりしない分やっかいというかなんというか。

 そしてこれも初めて知ったこと。


「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!」


 乃木先輩が大声をあげて腕をぶんぶん振り回しながら顔を隠している。隠れているのか?

 そう、女の人の本気の悲鳴である。それがホラー映画なもんだから突然大声で悲鳴を出されたら映画よりも悲鳴がいつ来るのかと思うと怖い。てかうっさい!これ旧校舎の外にも絶対聞こえているはずなんだけど、大丈夫だろうか?校庭で活動している部活からは特に何も言ってこないことからすると今のところ大丈夫なんだろうけど。


「あー、うるさいよー恵美ちゃん」

「だっ、、、だって・・・・」


 まあ普通かわいい人が怖がっているのを見るのは何となくかわいい印象だけど、そうではないみたい。しかし本当にうるさい。だいいちそこまで怖がれるものですかね。まあホラー映画ではあるけど、何度か見てはいるけどしかも映画の一番最初だから怖いのはほんと最後のほうだと思うんだけど。、まあ人それぞれか、なんて考えているとまた一人教室に入ってきた。


「ういーっす、お前らうるさいぞー、外からも聞こえるぞー」


 けだるそうに入ってきたのがこのオカルト研の顧問の筒井先生。てかわっぱり聞こえてたのね。まあ当然かあんなト〇ロの自己紹介よりもでかいと思う。


「お、なんだリン〇かぁ」


 先生はそのまま開いている椅子に腰を落とすと黙って映画を見始める。そう顧問といってもこんなことしかしない。ほんと何しに来ているんだろう、まあさぼりだろうけど。別に活動に対し喝を入れるわけでもなく、かといってこのダラケタ活動を黙認し放置するわけでもない。一緒に参加するとはまた変な先生だ。


 しばらくして映画が終わり外の様子を見るといつの間にか陽も傾き、暗くなっていた。そろそろ下校時刻だ。先生はまっすぐ帰れよーと一言いい職員室絵と戻っていった。本当に何しに来たんだろう。


「じゃあそろそろ帰りましょうか」


 乃木先輩が一言いい、部室で飼っているアオシタトカゲの『つっちー』に餌のコオロギをピンセットで一匹づつ与えている。虫は平気なんだなあ。めでるようにやさしい笑顔を浮かべながら、大きくなあれ、大きくなあれとゆっくりと。


「後輩くん、こっち」


 梓先輩がぼくに手招きをする。要は変えるのを手伝えということだ。これもぼくの仕事の一つである。荷物を持って家まで送る。途中まではそれだけでもいいがまあ松葉杖なので途中でどうしても疲れてしまう。ということはだ。帰りで疲れるのだから当然行きも僕の仕事である。


「じゃあお先失礼しますね」


 と乃木先輩はいつの間にか餌をあげ終えて身支度をし部室から出て行った。


「じゃあ行こうか、後輩くん」


 思わずため息をついてしまう。まあ帰り道も一緒だし家も途中なので問題はないが。しかしこれを毎回繰り返すのはなんともつらいもので、これをあと何日続くのかと考えると頭が痛い。


 先輩は準備を整え、バックをぼくに渡すと窓にかかっている松葉杖を両脇に抱える。ぼくはそれを見守り電気を消し、先輩と二人部室をあとにした。

 やはり6月といえど19時半になるとだいぶくらい。もちろんこんな時間まで残っている生徒は運動部くらいなものだがここは旧校舎、もう人っ子一人いないみたいだ。おかげで廊下は全く見えないほどではないが結構暗い。


 こんな感じでひがな1日を過ごすのがこの部活である。だいいち何のためにこの部活があるのか、そもそもよくこの部活が今も続いているのかそれこそ謎だし、いっそそのことを調べたりしてみてもいいのではないだろうか。そっちのほうがいくらか活動としてましだと思う。

 

 先輩がゆっくりと松葉杖を使いながら歩きぼくはその後ろをペースに合わせながら歩く。高後ろ姿だけ見るとなんともけなげな少女のように見えるのになんとも、暗い廊下をこつこつと杖が地面をつく音を響かせながらゆらいゆらりと歩く髪長い少女とはまさしく学校の七不思議やよくある怪談話にありそうだと思う。だからつい口走ってしまった。


「なんか先輩が1人でここを歩いてたら、幽霊だなんだと騒がれそうっすね」

「ふふ、そうなったら面白そうね。それこそオカルト研ぽい」

「まあこんな口うるさくて、わがままで、性格が悪い人幽霊なんてぼくは嫌です」

「失礼!」


 そんなくだらないことを言いながら下駄箱にようやく着いた。


 前にも言ったがぼくは宇宙人や未来人や幽霊や妖怪や超能力者なんてのはいないと信じていた、でも今はなんとも言えない。そうぼくは今は疑っている。本当はいるんじゃないのか、板としても不思議ではないんじゃないのか。まあ証明もできないことを頭の中だけで自問自答しても答えは一向にでない。だからだろうかその答えをくれるのがこの先輩なのではないだろうか。なんてね。


「ほら、何してるんだ後輩くん。ん」


 先輩はぼくにおぶってくれと合図してきた。ぼくはまた大きなため息をつく。ぼくの持つ荷物を一度地面に置きおぶれるようにする。その前に一応聞いてみることにした。とてもくだらないことだけれど


「ねえ先輩、幽霊とかやっぱり信じてるんですか?」

「当然」

「へぇ」

「幽霊がいるのだとしたら、私は見てみたいんだよ後輩くん」


 予想通りの返答である。


「何でです?そんな足になってまでなんでそう思うんです?」


 先輩は腕を組みながら今から格言でもう言う勢いで返答した。


「そっちのほうが面白そうじゃない」


 そんなセリフをどこかで聞いたことあるよなぁなんてそんなことを思いながらぼくと先輩は自宅へとかえるのだった。

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