せっかくエロゲな世界観なのに頭脳戦が多すぎて萎えるんですけど!?
家葉 テイク
第1話
エロゲっぽい世界に転生したらしい。
いや、ぶっちゃけ自覚はなかったんだ。それらしいタイトルの心当たりもない。
……のだが。
一五歳になってから、その平凡な日常は激変した。
なんか想獣とかいう現代兵器が効かない淫獣が夜な夜な女性を強姦してるとか。
そんな想獣から人類を守るために『想起使い』という女性だけの異能者がいるとか。
そして想起使いをまとめる『ADM』という組織があるとか。
想獣に襲われ、それをなんとかして撃退した
突如現れた淫獣と、戦う女性たちの組織。
そんなもん、エロゲだろう。どっかしらのレーベルから腐るほど出ているくらい、あからさまにエロゲな世界観だろう。
あの瞬間、
その日から一年。
「ハッ……! ハッ……!」
『ドウシタ モウ オシマイカ?』
──そして今、新手の想獣に追い詰められていた。
想起使いとして目覚めた
幻想存在っていうのは要するに、『通常の物理法則が通用しない存在』だ。トラックに轢かれようとガソリンぶっかけられて火達磨になろうと、傷一つつかない。
唯一正常に働くのは重力や慣性くらいだ。何故重力や慣性が効くのかについては、おそらく調べればノーベル賞ものの原理があるんだろうが
閑話休題。
そんな今の
真っ白いサイハイソックスに二の腕までを覆うドレスグローブと合わせて──本当に、どこぞのエロゲに登場しそうな『変身ヒロイン』そのものだった。
目の前に立つのは
しかしその緑がかった異形の肉体は分厚い脂肪に覆われながらも尚見え隠れするほど筋骨隆々だ。体躯は実に三メートルにも及び、狭い路地裏をたった一体で埋め尽くすような威容を誇っている。
衣装と同様異能の力によって作られているこの武装は、下手な金属よりもはるかに頑丈だが……効果は薄い。
会敵してから一分。かれこれ十数発は目や喉などの急所に攻撃しているものの、オークは少しも傷ついた様子を見せていなかった。
敵は傷つかず、人間の
今はまだ
一切の攻撃が、全く通用しない想獣。…………ひょっとしたらついに、
最強の想起使いなんて呼ばれて、機関のみんなから尊敬の眼差しで見られているのに、こんな路地裏で……得体のしれないオークに負けて、犯されるのだろうか?
そして、
…………っ。
『ドウシタ、動キガ ニブッテイルゾッ!!』
「しまっ!?」
やばっ!?
防御は……間に合わない! 備えろ! 腹にデカイのが来るぞ! 意識を保て……気を失えばそこで終わりだ!!
…………。
そうして、オークの一撃に身構えていた
一拍遅れて、振り返ったオークが大振りな一撃で攻めてくるが……当然、その動きは周回遅れだ。剛腕が通過した時、そこに
「…………………………あー」
そこで
想起使いもそうだが──想獣というのは、一人につき一つの能力を持つ。
殴ったものを燃やすとか、空中に足場を作り出すとか、そういうものだ。中には初見殺しの能力もあるため、多くの想起使いがそうした想獣の餌食になっていると聞く。
おそらく──というか十中八九、コイツもその類だ。
「『正面から受けた衝撃を無効化する能力』か」
溜息のように、
コイツの目や喉に攻撃を繰り出しても全く効いていなかったのは、コイツと
単純に、
何よりそう考えれば、絶好のチャンスに追撃を仕掛けず、わざわざ向き直ってから攻撃を仕掛けてきたのも納得がいく。
「
『ナ……ナニヲ…………』
加えて、カマかけてみたらこの反応。腹芸もできない、と。猪突猛進とはよくいったもんだな。
大体──こんな感じか。
想起名:
能力:
正面から受けたダメージを無効化する能力。
他者からの攻撃はもちろん、自身の攻撃の反作用すら無効化する。
反想起:
正面から以外のダメージは倍加する。
攻撃の反作用も同様であり、正対した対象を起点とするダメージはたとえ自身の攻撃の反動であっても全て倍加する。
(例:正面から銃撃されても毛ほども傷がつかないが、裏拳で豆腐を殴った場合は拳が砕ける)
Attack:5 Defence:2 Speed:‐
Technique:1 Stamina:3 Possibility:3
後ろに回った
そして振り向いた後の動きも若干鈍いのが気になっていたが……おそらく、攻撃が大振りになって壁にぶつかるのを警戒していたんじゃないだろうか。もしも壁に拳がぶつかれば、それはそれで
この狭い路地裏という環境──相手に機動力がなければ一方的に相手を『正面化』して封殺できたようだが、跳躍で回避が可能な想起使いでは、オークもまたじり貧だったというわけだな。
…………はぁ。
「萎えたわ」
『ハ?』
「萎えたって言ってんだよ。お前……」
種が割れてしまえば、なんてことはない。
屈み、そして上に構えることで、
……まぁ、それって先のない悪手なんだけどな。
根本的に、この
つまり、消したり出したりは
相手が
『ナッ 消エ──』
「消すのは
そしてまた
オークは、上段からの
ダメージの倍加。
それを体内で爆裂させられたオークの末路は、あまりにも分かりやすい。
ゾザンッッッ!!!!
と。
三メートル以上の巨体は、振り回された三又槍の暴風に巻き込まれて散り散りになり、『異次元』へと還っていった。
後に残ったのは、路地裏の奥に突き立った
一人残された
「…………竿役ならもうちょい頑張れや」
* * *
──めっちゃ気持ちいいことしたい!!!!
この世界がエロゲっぽく、その被害を最も受けやすいポジションにいると気付いた瞬間、
だって想獣被害って、別に死ぬわけでも後遺症が残るわけでもないのである。
想獣に強姦された女性は胎に想獣の仔を孕むのだが、連中は幻想存在なのでお腹が破裂することはないし、出産時もスッと身体から抜けるように出て行ってくれる。
強姦時と出産時に女性の持つ特有のエネルギーは奪われるらしいのだが、それも数日安静にしてれば元通りに戻るらしいし。
問題といえば、想獣によるエネルギーの強奪にはめちゃくちゃな性的快楽がともない、耐性のない女性はそれですっかり快楽中毒にされてしまうのだとか。
耐性のある人──想起使いは大分マシらしいけどね。
そりゃあ…………憧れるだろ。
ぶっちゃけ、持て余してるのだ。一七〇センチという女にしては高い身長と、それに見合うかのようなモデル顔負けのプロポーションと美貌。
長い黒髪は手入れを欠かしていないし、きっと街で男とすれ違えば一〇人中一一人が二度見するはずだ。余分な一人は鏡に映った姿を二度見した
自慢じゃないが前世では非モテ童貞オタクだった
結果は伴ったから、それが嬉しくてどんどん自分を高めた。だが……高めれば高めるほどに、『それを崩したい』という欲求も膨らんでいった。
これまで
でもここまで頑張って来たんだ。崩すんなら相応の舞台が欲しい。そう思っているうちにどんどんタイミングを逃し……そして、想獣の存在ときた。
だから、相応の想起を設定した。
想起名:
能力:
破壊を伴う干渉を快楽に変換する能力。
痛感が発生する程度の内出血を伴う干渉を検知した場合、これを無効化し、代わりに同等の性的快感を発生させる。
発生する快感の指標は、竹刀の全力殴打が性感帯への愛撫と同程度。
毒や熱等も、細胞レベルの破壊を伴う干渉と見做し、干渉を無効化した上で快楽に変換するものとする。
能力によって変換した快楽が能力者の限界を超えた場合、発狂や心神喪失を防ぐ為に自動的に失神する。
この能力による快楽で失神した場合、能力者は快楽を与えた者に対し、対象が絶命するまで絶対服従を誓うものとする。
一度絶対服従状態となった場合、失神は発生するものの、対象以外の者に対して絶対服従状態とはならない。
能力者の快楽度合いは、下腹部の宝石の色合いによって第三者が容易に判断できるものとする。
(平常時は緑。限界に近づくにつれて桃色となる)
Attack:0 Defence:5 Speed:‐
Technique:5 Stamina:3 Possibility:5
──見れば分かる通り、完全無欠にエロ目的のビルドである。
言い忘れていたが、想起というものは自分である程度設定することができ、想獣を倒しエネルギーを奪うたびに能力を拡張させたり変更したりすることができるのだ。
ぶっちゃけ快楽変換の能力は後付けだ。
どうもこれらは全部
これにより、
いかに破壊無効とはいえ、快楽は蓄積する。戦いが続けば続くほど疲労で
一度でも膂力に勝る相手に捕まれれば、『握られた痛み』は持続的に快楽へと変換され、抜け出せなくなった
必死に足掻いて足掻いて足掻きぬいても、力及ばず敗北し、そしてめちゃくちゃに犯されて完全服従する……めちゃくちゃ興奮するシチュが、到来すると思っていた。
ドロドロでねちょねちょでアヘアヘな未来が待っていると思っていた。……のに。
いざ蓋を開けてみたら…………萎えた。
というのも、この世界はなんというか……理詰めなのだ。
さっきのオークもそうだが、想獣には、基本的に『理由のない頑丈さや強靭さ』は存在しない。
幻想存在ゆえに現代兵器が通用しないことを除けば、耐久力は最大でも熊程度なのだ。もし仮にダメージがなかったとしたら、それは何らかの想起でそう見せかけているだけである。
そして
そうなると……萎えるのだ。
想像してみてほしい。ちょっと観察しただけで能力の穴が分かっちゃうような敵に手を抜いて倒されて、それで『一生懸命頑張ったけど無惨にも敗北してしまいました』と……心からそう思えるだろうか?
心の底から敗北の惨めさを噛み締めて、でもどこかで自分の敗北に納得した気持ちを抱えながら快楽に堕ちることができるだろうか?
答えは否。そんなことは不可能だ。
頑張って知恵を働かせてもなおそのちっぽけな策略を踏み倒して力でねじ伏せられたいのだ! そういうシチュエーションがめっちゃ興奮するのだ!!
だというのにどいつもこいつも初見殺しだのハメ技だの、暴力のぼの字も感じられねえ頭脳戦ばっかりしやがって、圧倒的暴力による脳死戦法で
はー…………はー…………。
……少し取り乱した。
ともかく、そうやって萎えては弱点の割れた敵をボコボコにして一年あまり、気付けば
まぁ、それはそれで『最強の想起使いが雑魚想獣に負けるなんて……』みたいなシチュがとても捗るのでいいのだが、最近は
…………どうしてこうなった。
* * *
と、いうわけで。
一仕事終えた
移動費はもちろん
お昼なので電車の中はかなり空いている──というかほぼ無人であり、
……おかしいよなあ。普通、
……なんでだ! 最強の想起使いだというのに、何故想獣による痴漢事件の囮調査をやらないのだ!! というか想獣さんサイドもなんで通勤中のオッサンに擬態して満員電車で痴漢をはたらかねえんだ。凌辱生命体としての自覚が足りてねえんじゃねえのか?
「…………動くなよ」
そう呟いて、
そこには、一人の少女がいた。
俯きがちな女は、ある種異様な格好をしている。
西部劇の保安官と開花したつる植物を合わせたような意匠の格好は、どう考えても一般人の姿ではない。あんなものはコスプレイベントのレイヤーさんか、そうでなければ──臨戦態勢の想起使いくらいしかしない恰好だ。
「そういえば、最近想起使いが失踪したって話を聞いたことがあったが……」
想起使いは想獣に負けると、ヤツらの棲む次元の狭間に引きずり込まれ、そこで凌辱の限りを尽くされる。向こうとこっちでは時の流れが違うが、大体引きずり込まれた被害者の体感で一週間ほど監禁され──そしてこちら側では、一か月から半年くらいしてから、解放される。
そして、そうした想起使いはほぼ間違いなく想獣の仔を孕んでいるわけだ。
珍しい話だが、ないわけじゃない。
そして最近、ある想起使いが連絡を絶っていると聞いて、その行方を探っていたのだが。
「情報と見た目……一致するな。やれやれ……」
「フ フ」
この殺気。
……どうやら今回に限っては、想獣に誘拐されたわけではなさそうだった。
いるとは思ってたんだけどな? ADMの裏切者。
だってこんな世界だ。身内の裏切者に騙されて最強の能力者が本領を発揮できず凌辱される。一年に三回はないと、世界の怠慢を疑うレベルだろう。ただなあ……、
「襲い方が雑なんだよ!!!!」
言いながら、瞬時に『変身』した
想起ってのは、別に自由自在に設定できる便利な異能ってわけじゃない。
いやまぁ、ある程度自由に設定できはするんだが、それでも傾向というのがあってな。要するに『自分がノリノリで使える能力』じゃないと、大した効果は発揮できない。
変身後の恰好も同様で、そういう事情から衣装と能力はある程度関係しやすい。
そして保安官みたいな恰好してるヤツがどんな想起を設定しているかと考えれば……まず間違いなく、銃撃系の能力だろ。
加えて、この距離でこっちが警戒態勢をとっている状態で、殺気駄々洩れの状態で笑う余裕。その状態からすぐにこっちの
そこから考えれば────相手の能力が『遠隔地から銃撃を行う』ことであると予測するのは、そこまで難しいことじゃない。
「屋内……能力によっちゃあ厄介かもな」
武装の解除と発現には一瞬のラグがある為、オークみたいな鈍重な輩ならともかく対人戦で武装を解除するのはリスキーなのだが……能力も分からないうちに、相手の一撃を受け止めた得物をいつまでも手元に置くのも不用心だからな。
想獣のものでも想起使いのものでも、想起には『一撃を入れないと発動できない』という
尤も、そもそも相手の一撃自体が能力の産物という可能性もあるので、そのへんの見極めは経験に頼るしかないのだが──
「……粉。ビンゴか」
──解除した
だが、妙だ。想起というのは一人一能力が原則。このままだと、『突然銃撃した能力』と『粉を起点とする何らかの能力』で二つの能力があることになる。何かカラクリがあるはずだが……、
……あるいは、だな。
ふと思いついた
一瞬前までいた場所を銃撃が通過したのを音だけで確認しながら、
変身状態じゃなければ頭蓋骨が粉砕して死亡しているところだ。
「……そして粉──いや花粉、か」
回し蹴りを叩きこんだウェスタンガールの身体からは、やはり光る粉が散っていた。肉体が削れているわけではない。イマイチ見えづらいが、彼女の身体はどこも粉に塗れている。
そしてそれで、
「イイねえ」
そもそも、ぶっちゃけ最初の時点で違和感はあったのだ。
西部劇の保安官然とした少女の意匠に、つる植物? そりゃああまりにも取り合わせが悪すぎるだろ。これで武装が木組みの拳銃で、着弾したところから植物を生やす能力とかならまだ理解できたが……出てきたのは遠隔地から銃撃する能力とかいう植物が全く関係ない能力。
そこに何らかの関係性を見出すよりは、もっと浪漫に溢れた解釈が一つある。
つまり。
「倒した想起使いを操る悪堕ち想獣!! イイねえ!
欲を言えば操られている想起使いの意識があって快楽堕ちしててレズっぽいことを言いながら
まるで、お前の本領など発揮させないぞと言わんばかりの搦め手。
正直、いくら
その上敵の攻撃を受け止めても、敵に直接攻撃しても粉が発生する。おそらくこの花粉が想獣のモノで、これを一定以上浴びればつる植物が生えて
何せ、敵の攻撃は破壊を伴わない。『
ここが屋内でなければ、もう少し戦いやすかったのだが……とはいえ逃げるという選択肢はない。もしここで
「ご め……なさ」
その瞬間。
ウェスタンガールの口から、何事かの言葉が漏れた。
「………………あ?」
思わず、
目の前のウェスタンガールは……少女は、さらに続けて、まるで搾りかすのような声を出す。
「から、だ……うご、けな…… ……ごめ …… ころ し ……て」
想獣に身体を縛られた彼女の、命を振り絞った言葉だっただろう。
憎き想獣に敗北し、辱められ、そして矜持の為に引導を渡すことを依頼する。なんと気高い少女だろう。こういう末路を迎えたいと、
ほんと、こういうのでいいんだよ。変な弱点とか、ピーキーな無敵性とかじゃなくてさ。地道にこっちが本気を出せない状況を整えて、静かに詰みに持って行ってくれるだけでいいんだ。
それだけで
「………………なんで
少女は、泣いていた。
口で気高いことを言っておきながら、
「
手の中に、
ゆっくりとそれを肩にかけて、まるで粉塵のように舞う花粉を見回して、
こんなもん見せられたら、意地でも負けるわけにはいかなくなっちまったじゃねえか。
「……………………萎えたわ」
直後。
気流によって舞う花粉には目もくれず、電車の天井にどんどん『切れ目』を入れていく。相手も流石に
「それがどうした」
右の脹脛に直撃。破壊を伴う干渉が快楽に変わり、力が入らなくなるが……問題ない。まだ
「お前のその能力。操作対象の想起まで自在に使えるとなると、随分な
全ての想起に
能力が強ければ強いほど、その反動も大きくなる。『粉をまぶすだけ』というアクションで、対象の肉体を制御するどころか、幻想の能力である想起すらも操ることができるという破格の能力。
しかもおそらくは
「そういえばさっきから、お前の扱う『花粉』……風にあおられてるよなあ?」
想獣も変身した想起使いも、基本的に幻想存在であり、物理法則の埒外に在る。
だがコイツの『花粉』は、さっきからその場で粉塵みたいに舞ったり、
幻想存在は、重力や慣性の影響以外は受けないはずなのに。
「それがお前の
ミシミシ!! という音を立てて、
どうやらもう支配が始まったらしい。戦い始めてから三分ってとこか。
だがもう遅い。
決着は、ついている。
お前の敗因は、想起使いの攻撃力を見誤ったこと──じゃあない。
お前は、もっと重要なものを見誤った。
即ち──
「良いか……
最後にそう言って、
ガギギィ!! という金属音を立てて、半端に切れ込みを入れられた天井の一部がめくれ上がるように歪む。そして──
ズッバチチィチッ!!!!
と。
歪んだ天井の一部が電線と接触し、車内に大量のスパークが飛び散った。
「さて、草畜生よ」
火花は車内のシートへ飛び散り、そして空気中に舞っていた花粉たちを燃やす。当然、
そして幻想存在である
「焼き加減は何がお好みかな?」
萌芽しかけていたつる植物は何も言わない。どうやら、ウェルダンがお好みのようだ。
* * *
当然、路線は停電し、電車は停止することとなった。
まぁかなり問題行動だったわけだが……想起使いを操る想獣の存在と、被害者の奪還という手土産があったため、この件については不問ということになった。
少女の方も無事に助けることができたし、よかったよかった。最後の最後で萎えたのがアレだったが、ヤツの本体もまだ残ってることだし、いつかどこかでぶつかることだろう。
ただ問題は……、
「あ、ありがとうございました!!」
助けた女の子。
全身に炎を纏わせたため、もう完璧に操られていた後遺症は残っていないのだが……あれほどこっぴどくやられたのだ。当然気落ちしているだろうし、もう現場復帰は無理だろうなーと思っていたところ……、
「それで、さっきもお願いしましたけど…………私に、修行をつけてください!!」
これなのだった。
いや君、あんだけ精神的に大ダメージを受けてたらもうリタイヤしとこうよ……。正直
っていうか、師匠とかそういうのは柄じゃないんだよ。想起使い歴短いし。そもそも行動を共にすると巻き込まれの可能性が発生するから萎えやすくなるし……、
…………待てよ?
自分が凌辱されて操られても立ち直れるような強メンタルの持ち主だ。この子なら…………この子なら、
最強の想起使いの師匠が、ある日突然想獣に敗北し、無惨な姿になって帰ってくる……のを見届ける弟子を、やってくれる可能性があるのでは!?
あんまり可哀相なことに他人を巻き込むのはちょっと嫌なので今までは避けていたシチュエーションにも、付き合ってもらえるのでは!?!?!?
そうと決まれば善は急げだ……。
すぐさまこの子を鍛え、最強の弟子にし! あわよくば
うおおお! なんか燃えてきた!!
待ってろ、
せっかくエロゲな世界観なのに頭脳戦が多すぎて萎えるんですけど!? 家葉 テイク @afp
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