♮37:
「なるほどなるほど、そういうことかよぉ」
!?
「もうひとり存在したってわけだな、まあそのくらいじゃあ無いと、逆に説明がつかねえかもだが」
アオナギ……? 何故、まだ好き勝手喋っている?
「
こいつ……知ったような口調で……何でだ? お前もまた、私が作り出した存在に過ぎないはず……っ!!
「……ひとつ上の次元から見下ろしていたと、そう言いたいわけだよな? 『創造主』ぶって。でも本当にそうかなぁ? お前さん自体が、取り込まれていると、そう考えることは出来ねえかな?」
よく分からない笑みに彩られた、ひしゃげられた長い顔と相対するが。こいつ、何をのたまっている? いや、そこはさしたる問題じゃあない。
「私」は誰だ? なぜこの「作品」の中に入り込んでいる? 主催者のクガでも無い。「私」の意識なのか? 作者たる私の? いや何でだ?
「『意識』云々をどうにかしたいってのは、こちとらもう把握してんだぜ? お前さんの書いた『作品』を読ませてもらったからよお」
なぜ読める……? いや、確かにその体でクガは書いていた……書かせていたが……それはその体で、この作品自体をひっくり返すため……それだけだったはずだ。
私は自分の身体で感じる「五感」のそれぞれに、今更ながら慄いてしまうが。ここはあのホテル……描写したエレベータホールの前……クガが置かれていた状況に、私がすり替えられている? いや、これはここは、私の「作品」に過ぎないはず。
「お前さんの望んでいた状況と、言えなくもないんじゃないか? 今のこの状況は。『意識の移行』……それが行われたと、考えられなくもねえんじゃねえか?」
こいつは本当に何だ。私の意識をどうこうするだと? それはあくまでも私が主体となって行おうとしていたことだ。そのためのこの作品だ。私の思うがままになるこの世界のはずだ。
「……そういや書いてあったなあ、『自分の意思ではなく、賽の出目次第で変わる世界』を目指したとかよぉ」
そうだった。そこは自分の意思がそこまで反映されないように「実験」したつもりだ。だが結局、それは起きなかった。あくまで作者たる私のままの意識で、この作品は進行していたはずだ。
「お前さんの『意識』ってのは、いったいどこに存在するんだろうなあ……『作品』に落とし込んだ、らしいが、その『作品』ってなんだ? それが意識の発露、もうひとつの『意識世界』っつうことにはならないもんかね」
言ってる意味は分からない。だがこのアオナギの言葉は……何だ? いったい何なんだ!! どうしてこちらの意識を揺さぶってくる?
「生まれてからずっと、お前さんはお前さんのままの『意識』だ、とかも言ってたよな? 本当にそうか? お前さんはいったい誰だ? お前さんの意識の中でのお前さんは、本当に『固定』されていたと、言い切れるのかよ? そう認識させられていただけだと、そう考えることは出来ねえのかよ?」
分からない。こいつの言ってることは分からないが、分からない中に、どうとも揺さぶられる何かがあるのも確か。
「私」は誰だ?
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