賽ノ二十九:六角は/未曾有に
のっぴきならねえ事態にコトが進みつつありそうな、そんな今更な思考が、靄がかって意識を包むかのように広がってきやがるが。
「……」
人がぶっ倒れるのを目の当たりにするのは、今日これで何回目だ? しかもそのまま目覚めないままに運ばれていっちまうっていうのは。
どうにも尋常じゃねえ感じが、ふつふつと俺の二の腕辺りを粟立ててくる。
「……」
先ほどの相棒同様、こちらの問いかけには全く応答しないものの、呼吸・脈動、それは確認できた。レノマン氏……はじめはこいつが相棒を……? とか見当違いの疑心を抱いちまっていたが。
こいつが何かしていたってことは無さそうだ。あるいは、何かしていたとしても、その裏に必ず別の何者かがいるはずだ。
周囲をそれとなく窺う。担架に乗せ運ばれていく大柄な外人にそこまでの視線は集まってはいねえ。黒服共もきわめて淡々とまた「処理」をしているといった感じだ。何だこの空気……気に入らねえ。
「負けて意識を失う」っていうのがふたり続けて起こったわけだが、それはここだけの話らしい。隣のボウルでの敗者は、黒服に促されながらも自分の足でこのホールを出て行ったのを先ほど確認している。
何が起こっている……? ここまで来て偶然と言い切るには流石に無理があんめえ。だが、相変わらずの有無を言わせなさで、進行はつつがなく流れていくわけで。
<ベスト6に勝ち残られた皆々様!! 心よりお祝い申し上げますぞぉぅ……さあでも、ここからもあくまで淡々と!! いやさここまで来たのだからもうあっさりと!! ずいずい進行していきましょうねぇッ!! いやいやワタクシ興奮してきましたぞぉッ!!>
が。俺は俺でまた、何と言うかの「自分の別人感」みたいな奇妙な感覚が、脊椎に沿うようにして駆け上がってきているようで。いやそれこそ正に意味不明だが。
妙に見ている視界にピントが合っているかのような……テーブルに張られた真っ白なクロスとその奥に見える紅色のカーペット生地の境とか、あるいは見上げると否応目に入るシャンデリアを構成する、ひとつひとつの透明な造作の輪郭とか……はっきりくっきり認識している。
やるしかねえってことは……のっけから分かってんだ。加えて相棒・レノマン氏の容態安否も気になる。ここまで来たら「俺」がもう突っ走るしかねえんだ。
あと何戦あるのかは分からねえが、全部が全部とこ、
……勝つしかねえ。
<
【074:854211】(19):ザキモト カリヤ
VS
【057:872220】(25):キサ ワカ
【169:544422】(32):アオナギ ヨリヨシ
VS
【101:765210】(39):チギラクサ ウヨ
【133:665310】(29):フタバ シュンスケ
VS
【126:743331】(27):カワミナミ ジュン
>
いよいよ場も煮詰まってきたようだが、行く末は皆目見えてねえ。それでも。
……最後までこの場に立って見届けてやるぜ。
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