Dice-23:心象は/空隙に
「……」
もう、くぐもった呻き声は出なかった。極めて静かに瞼を持ち上げると、そこには輪郭を掴ませないほどに輝くシャンデリアの吊られた威容があり。
「……」
僕はまた、「昏倒」していたことをうん、と確かめるように悟る。三回目ともなるとまあ慣れたもので、ゆっくりと両肘を使って仰向けになっていた上体をまず立たせ、遠巻きにこちらを見ている参加者たちのいぶかしげな興味深げな顔を見回しながら、ざらりとしたカーペットの手触りを撫で確認気味にしながら、いったんあぐらの姿勢になって体のふしぶしの異常の無いことを確認してから立ち上がったりもするのだが。
この昏倒という事象については何ひとつ判ってはいないわけで、そこは平静を装いつつも、胸底にどんより溜まる粘液感は相変わらずある。
ともあれ。「これ」に関しては自分に有利なる「演出」であることは過去二回の経験に基づき確信めいた感覚はある。
【068:855300:3-0-】(7)
【154:644322:4-2-】(10)
昏倒前、二投を放ったままの僕と相手の出目は、まあ僕が押し込まれているように見える。だが、
……ここからだ。
「……」
姿勢を正し、「ボウル」と向かい合う。先ほど僕に「木星なんたら」と軽やかなる声で告げてきた対戦相手であるところの流麗な少女は、ちょっと理解しがたい、何かを待っているかのようなそんな微笑を僕に向けて浮かべているが。
その光を放っているかのような人影に軽く目礼をしてから、「排出口」に戻ってきていた赤い「賽」を三本の指でしっかりと摘まんでみる。指先に等分に伝わる、温かくも冷たくもない、つるりとして「目」が穿つ穴だけが与えて来るぽこぽことした触感。確かに「僕」は此処にいて、「意識」はここにある。
五感がもたらす感覚だけが、「僕」を僕に繋ぎ留めていると言えなくもなかったが、あっさりと「意識」を三度も奪われていてなんなんだが、今。今だけを知覚し、あやふやな「意識」の尻尾を掴んでおく。
「……!!」
意思通りに動いてくれた僕の右手指先から宙に放たれた「賽」は、まるでその存在の軽さを誇示せんとばかりに、「ボウル」へと連なる細い「筒」の中で一層激しく反射している。のがスローモーションのように僕の視界で展開している。
一瞬の、切り取られたような時間を経て、
【8】
【2】
僕の最大の出目と、少女の最小の出目とが、「ボウル」の中央付近で寄り添うように佇んでいた。
感慨なのか、当然のことが当然のように起こったのをただ傍観しているのか、自らの心中は推し測ることすら出来なかったが。
「……」
自分の手であると認識しているところの「手」(そこまで意識しないと、何か、ブレ動いてしまいそうだった。意味不明だが)、それをゆっくりとブレずに伸ばし(不思議と身体はなめらかに『意思』を受けて動いていってくれているように感じた。いや、それが普通とは思うが)、赤い賽を握(赤い。確かに赤い。こんなに赤かったか?)るやいなや、それを力まず気負わず(無音が周りを支配しているかのようだった。何も聞こえない)、「筒」の中に落とし込むように(不要になった何かの殻をごみ箱に放りいれるかのように)、投げ放っている。
【8】
【3】
二度続けての
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