Dice-16:次戦は/無作為に
運営の手により既に為されていた次戦の「組み合わせ抽選」……プラス、幸運な抜け番であるところの「シード」とやらの選出……はと言うと、
「……」
「第一局」の鬼ヅキの勢いを駆って、すわ僕が「シード」か? とか平常心を保った能面ながら目だけは血走っていただろう不穏な顔つきで注目をしていたのだが、あにはからんや、あっさり別の者の番号が告げられたのみだった。
なにか、未知なる能力とか、とんでもない幸運体質とかがこの身に宿ったかに思えていたのだが、それはどうやら錯覚のようだった……気を取り直し、ホール前方のスクリーンに赴いて自分とアオナギの次の対局相手の番号というか「出目」を探していく。他ならぬ二人がカチ合っていないことを内心祈りながら。
【169:544422】(8)
【136:664410】(6)
【068:855300】(1)
【134:655220】(3)
数字の羅列も、先ほどからは「半分」になっていることから、だいぶ把握しやすくはなっていた。そして、アオナギ【169】と僕【068】は運よく(?)、別の相手とだった。【136】と【134】は番号が近しいこともあって出目は似た感じだが。そこは作為ってほどのものは感じない。
と、ホール内にせわしなさと高揚感を伴ったような、何ともこちらを逆撫でしてくるかの音声が流れ出てくる。
<さあ『第二局』開始まで残るはあと『10分』!! ぞ、存分にお考えの上、勝負の舞台におのぼりくださいましねッ!?>
何かもうその主催者のテンションはおかしな方向へと向かっているようで、痛々しいような苛立たしいような、そんな感想しか抱けないが、「存分にお考え」っていう言葉には引っかかるものがある。例えばこの渡された「カネ」を使って他の対局者たちと何かしらの「交渉」でもするとか? ホールの端々に目線をさりげなく飛ばすと、何やらふたり、三人組になって何やら話し込んでいる面々も窺えるものの。
「あの……アオ、ナギさん……」
僕の隣で、曲がった背骨ながら突っ立ってスクリーンをぼーと見ていた曲がった顔の男の名を初めて呼んでみる。何だよ相棒、とさして興味も無さそうな濁った目と目が合ってしまうが。
「何か、いやな予感がする」
大脳以前で感じてしまった悪寒のような感覚を言葉にして表すと、そんな漠然としたものになってしまう。だが、押し寄せる奔流のような……これは一体、何なんだろう。
「……あるいは、もう覆すことの出来ねえ『事実』になっちまってるのかも知れねえ、とかか?」
鼻で笑われるかと思ったが、鼻から抜けるように力み無く、しかしてそのような意味の掴めない言葉を返されるばかりであった。そして、
「……こっから先は本当に判らねえぜ。このサイコロ振り振りゲームがどこに帰着するか? ってよりも、もっともっと根源的な『覆し』? みてえなのが起こらねえとも限らねえ」
その長細い顎を右手指でごしりと擦りつつ、アオナギの放つ言葉はこれまた難解過ぎて何もひっかかかる事もなく、僕の意識をすり抜けていくかのようだが。
「意識」。この場に放り込まれて何度も意識させられた言葉が浮かぶ。「意識」が
「意識を集中」「意識を外す」……いやいや大分僕の「意識」も毒されてきているな。ともかく臨む……それしか無さそうだ。
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