第13話 林間学習 その3
飯盒炊爨の場所から帰ってきた俺たちは宿に向かい、明日の催し物とキャンプファイヤーに備えて準備をしていく。俺たちがやる催し物は、俺のクラスで決めた肝試しと宝探しで決まったようだ。そして、肝試しと宝探しは、組み合わせるそうだ。単純に肝試しをしながら宝探しを行うということだそう。
どのみち夜にやる時点で、肝試しも宝探しもそう変わらんだろう。
「瀧くんのその衣装、結構いい感じだね」
「そうか?これで本当に驚いてくれたらいいけどな」
「あとは、瀧くんの演技次第だね」
「そうだな、これであいつらの怖がっている顔を見られたら最高だな」
実は、林間学習で催し物が決まって役割を決めるとき、堀北さんが俺に「もしよかったら、私と一緒にどうかな?」とお願いされて、彼女のお願いを根拠なしにそのまま受け入れる形となり、今に至った。なぜか、自然と良いと言った自分に疑問を感じるのだが…。
俺たちは、肝試しに備えて道を確認した後、キャンプファイヤーに必要な木材を取りに行くことになる。
「これ、一人で持つと結構重いな」
丸太の重さを確認するべく、端から持ってみることにした。
「よいしょっと!」
彼女は、普通に軽々と丸太を持ち上げて見せた。
「確かに重いけどこれなら持ち運べそうだね」
いや、その細い腕のどこからそんな力があるんだ?なんだか持てない自分を見ると情けなくなるな。
「もし、重くたくて持ち運べないなら、瀧くんはここで待っていても大丈夫だよ」
「こ、これくらいなら全然大丈夫だ…」
堀北さんに俺のプライドとしてもかっこ悪いところを見せるわけにはいかない。
「でもあんまり無理しないでね」
そして、彼女と一緒に丸太を持ち運んで、ようやく倉庫から丸太を運び出したところで、残り一つとなった。
「これでラストだな」
最後の力を振り絞り、丸太一本を懸命に待ちあげる。このまま、下のキャンプファイヤーの会場へと向かう。しばらくすると、堀北さんと鉢合わせることとなる。
「お疲れ様、これは瀧くんの頑張ったご褒美だよ」
彼女から、お茶のペットボトルを受け取る。
「ありがとな、でも俺のためなんかにわざわざ買わなくてもいいんだぞ」
「これは、私の気持ちだから遠慮せずに飲んでね」
正直、堀北さんにはいろいろと俺のために面倒ごとをかけてもらっているから、また俺の方から恩返ししていかないとな。
それと、ここを離れたら明日は山を登るんだよな、なんだか時間が進むのが早い気がするのは気のせいなのか、せいぜい俺の足が小鹿にならないように祈りたいところだが…。
俺たちはベンチで休憩を取った後、宿に戻ることになった。
二日目の朝、今日は朝早くに山を登ることになる。俺はベットから離れてトイレを済ませた後、洗面所へと向かう。
やはり、山の中にいると空気がひんやりとしていて、肌寒くなる。上にはパーカを羽織るようにしている。くしゃみが出ると、すぐさまティッシュで鼻を抑える。
コップに水を注ぎうがいをした後、歯ブラシに歯磨き粉をつけて、口の中をきれいにしていく。
その後、歯磨きをして、顔を洗い終わったら、食堂へと向かう。
そして、朝食を済ませて、山に登るための準備を終えると外で班ごとに固まって、そこから移動を開始する。
「この山を登るのにどれくらいの距離があるんだ?」
「だいたい10㎞ぐらいかな」
普通に水平に10㎞を歩くだけでも、二時間くらいかかるのに高低差までつくともっとかかるだろうな。あまり、体力に自信がないからほどほどにしてほしいところだが。
けど、中間点に差し掛かれば、昼休憩することができるので、それまでには辛抱しないとな。まぁ、堀北さんといれば何とかやっていけそうか…。
――数時間後
ようやく、中間地点にたどり着き、俺はかなりへばった。けど、手すりの向こうに見える景色は、今まで見てきた景色よりも気持ちが透き通ったような感覚だ。風にたなびかれながら味わうのも気持ちがいい。
意外と田舎で暮らすことに憧れているかもしれない。
「ここの見晴らしは、都会と比べるとかなりいいな」
「でも、頂上まで行くともっと良く見えるよ」
「そうだな」
ちょうど、景色を眺めていた時に結衣とスギもここに到着し、スギ達に誘われて一緒にご飯を食べることになった。そして、俺と目が合った花は、どこかに行ってしまった。
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