第5話 手塚治虫『鉄の旋律』
本作は、1974年6月から1975年2月に「増刊ヤングコミック」において連載された手塚治虫の中編作品である。
本作のあらすじ
ダン・タクヤは、親友のイタリア系アメリカ人であるエディから、自分の妹である亜里沙と結婚したいと告白され、当人同士が好きならと2人の結婚を認める。だが、それが自分に降りかかる不幸の始まりであった。
実はエディはマフィアの一員であり、そのため、図らずともマフィアのファミリーとなってしまったダンは、とある事件が原因で、マフィアの掟を破ったとみなされリンチの末、両腕を失ってしまう。そのことで失望し、自分を助けようともせず、冷たく見放したエディに対する怒りを抱いたまま、とあるきっかけで自身の念動力で動く鋼鉄の義手を手に入れる。
鋼鉄の義手を手に入れたことにより、エディに対する復讐を誓うダンであったが、鋼鉄の腕は自分の思いもよらない行動を起こしていく。
復讐のための道具が本人の意志を離れて復讐を始めるというのは、よくある話のように思う。超能力と義手を組み合わせたのが、いかにも手塚流である。決着のつけ方が少々雑ではあったが、そのあとに起こる悲劇を予感させるラストカットには旋律を覚える。ストーリーはなかなか緊張感があり、ホラー的で好きだが、復讐譚としては消化不良感が否めない。
アメリカ社会において劣後的地位にあるイタリア移民一族の、偏狂的だが、強固な鉄の掟が悲劇を呼ぶ話である。一族レベルでも厄介な掟だが、それが国家レベルで歯止めがなく暴走するということは非常に恐ろしい。手塚作品の中でもかなり好きな作品の一つなのでぜひ読んで欲しい。
脳髄雑記。 脳髄ぱんち。 @genomen
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