第4話 ダニー・ボイル『イエスタデイ』

 休みの日に家で映画を観るっていい。凄く時間を有効に使った気分になれる。

今回は、最近久しぶりに観た映画『イエスタデイ』についてまとめたいと思う。


 本作は、「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督と「ラブ・アクチュアリー」の脚本家リチャード・カーティスがタッグを組み、「ザ・ビートルズ」の名曲の数々に乗せて描くコメディドラマである。

 イギリスの人気テレビドラマ「イーストエンダース」のヒメーシュ・パテルが主演を務め、「マンマ・ミーア!ヒア・ウィ・ゴー」のリリー・ジェームズ、「ゴーストハンター」のケイト・マッキノンが共演。シンガーソングライターのエド・シーランが本人役で出演する。


あらすじ

 物語の主人公となるのは、イギリスの小さな海辺の町に住む、シンガーソングライターのジャック。悩めるまったく売れないミュージシャンである。幼馴染の親友エリーから献身的に支えられているものの、音楽で成功したいという夢に限界を感じていた。

 そんなある日、世界規模で瞬間的な停電が発生。その中でジャックは交通事故に巻き込まれてしまい、昏睡状態となる。その後、回復し目を覚ましたジャックだが、周りの様子の"何か"がおかしい。彼は、この世に史上最も有名なバンド、「ザ・ビートルズ」が存在していなかったことになっていると気づいたのだが......。


 「ビートルズへのラブレター」を映画で表現するのに、バンドを伝記的に描くのでもなく、ミュージカル仕立てでもなく、熱烈なファンを通じて語るでもなく、「ビートルズが存在しない世界」を描いて実現させるという、その逆説明的なアイデアが秀逸が。

 主演のヒメーシュ・パテルは知らなかったが、哀愁を漂わせつつユーモラスな雰囲気も醸す表情がうまくはまっているし、自身で歌った歌も見事である。ビートルズの代表曲が劇中で多数演奏されていて、ファンにとっては歌詞もきちんと物語上の状況に一致しているという脚本のこだわりを感じる。あと。ジョンのファン感涙必至のエピソードもある。

 ヒメーシュ・パテルとリリー・ジェームズの絶妙なあ距離感と、それぞれの葛藤とと口に出せない想いに苦しむ演技が素晴らしかった上に、ビートルズというバンドは世界中に与えた影響が音楽だけでなく、文化や思想なんかに影響を与えたスケール感が面白くて、しかもちょっと泣けるのだ。

 ヒメーシュ・パテルの歌と演奏が吹替えじゃないのには驚いたが、本人の中にある「生み出した本人じゃない葛藤」具合が、ある意味良かった。ビートルズのコピーとして受け入れ安かった。


映画館で観ればよかったなとちょっと後悔が残る映画である。

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