第4話 白い鯨
「君がここに入ってくる時に誰かの存在を感じなかったかい?」
どういうことだろう。そう思いたかった。
凛は身に覚えがあった。ここに来る時、妙に違和感があったからだ。
誰かの存在を感じた訳では無いが、あれが誰かの気配を強く感じたがために起こった違和感ならば納得がいくなと、そう思ったのだ。
凛が異変を感じたのはここにやってきた時。
そのあとは、時々自分を呼ぶ声が聞こえた時。
私を呼ぶのは誰だろう。
凛はずっと探していた。
凛は村長の質問に答えずに出ていった。
その日は大きな白い満月の日でした。
現実の世界ではここまで大きな月を見ることは叶わないでしょう。
そんな非現実的な夜でした。
やっと見つけた。
そんな声が聞こえます。凛は街に一人佇んでいましたが、その後ろから綺麗なブロンドの髪を靡かせて近づく者がおりました。
お互いに探していて、お互いに求めていた相手。
綺麗なブロンド色の髪を持つ彼女。
綺麗な青い目を持つ凛。
二人が出会ったとき、封印された力が開放される。
これはどこかの誰かが呟いたこと。
彼女が触れた時、凛の視界は真っ白に染まりました。
そして、自分の体が異様に軽く感じた。
飛びたいと願えば飛べるのではないか?
そんな風に思ったのです。
凛は上を向いて、とんっと地面を蹴りました。
するとふわっと浮かび、空を飛ぶ。
凛は今までに感じたことのないほどの満足感を味わいました。プールを流れていく時に感じる心地よい浮遊感のようなもの、また誰かに優しく包まれているのかと思えるほどの温かさを感じました。
凛は目を瞑ると全てを委ね、ひたすらに宙を漂う。
白い鯨が満月に照らされて海の上を泳いでいた。
それは月の明かりで一層白く光ってみえ、美しい鯨だった。
その姿を見たものは後にそう語った。
白い鯨の漂う空 月白藤祕 @himaisan
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