第2話 変わった街

3人は、手を繋ぎ街中を見てまわっていました。

思ったよりも広い街、多くの人々で賑わっていました。自分達と同じ恰好をしている人はいないが、他の人達は特に気にした様子ではなく、親しげに挨拶をしてくれました。

どんな人でも受け入れてくれる、そんな街なのかなと来た人は思う事でしょう。


しばらく街を見て回っていると、凛は入ってきた時のように、心がしんどいということがなくなっていると気づきました。安堵し、この世界を楽しもうといつもの笑顔を取り戻したのでした。


3人が街に入ってきてからその姿を高台から目で追っている者がおりました。その男は白い髪に白い服を着ており、大変見目が美しい者でした。男は近くに控えていた15歳くらいの少女に何かを告げ、その少女は話を聞き終えると出ていきました。

男はにやっと笑っているのでした。


貴方は恐らくこの人間を知っているのではないでしょうか?


ところでこの街ではお金のやりとりがなく、町中で欲しいと思ったものは、自分の持っているものと交換で手に入るという仕組みである。例えば、交換相手にとって必要そうな物や、笑顔なんかでもいいらしい。

交換を望まれた人がそれを指定することも可能なので、その場で泣けと言われたら泣くしかない。

変わった売買の仕方をしている街である。


3人はそれを知らずに手持ちのお金を出そうとして、笑顔でいいよと言われて、驚いていた。

夏菜子は笑顔で物がもらえるのが嬉しかったのか、色んなお店を巡っていた。


そんなことをしていると日が暮れ、夕方になった。3人はずっとお店を巡っていたので、疲れ果て、そろそろ帰ろうかと話しながらベンチで休憩していた。しかし、帰り道を教えてもらっていないばかりか、先程入ってきた通路の場所を思い出せなくなっていた。3人は困り果て、頭を悩ませていた。


そんなところに、一人の女の子が話しかけてきた。


よければ私の宿に泊まりませんか?

あなた達困った顔をされていたので、一晩眠ってから考えてみては如何かしら?

もう街の人も眠る時間ですし。


3人が周りを見渡すと、昼間いた多くの人が一人たりともいなくなっていた。驚いたが、疲れ果て、思考が停止していた3人は、女の子の言うことに素直に従いました。


3人が連れてこられたのは、如何にも街の宿屋といった感じの見た目をしたところでした。

一人一人部屋を貸してもらい、3人はそのまま眠りについた。


その夜、凛の夢の中に、大きな白い鯨が出てきた。

凛は綺麗だなぁと見ていたが、その鯨がどんどんと凛の方に近づいてきて、ぱくりっと凛を食べたのでした。


凛は目を覚ました。

ひどい汗をかいていたが、ひどくリアルで非現実な夢だったと思ったのでした。



その凛の横に綺麗なブロンドの女性が座っており、貴方のことを見ています。凛はその女性に気づいていません。その女性もまた凛に気づいている様子はありません。ただ貴方を見ているだけです。






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