第20話

爆発がしてから、1時間ほど時間がたった。


“ガラガラッ!”


突然、小屋の扉が開く。


「うわっ!?」


「京!もう急にびっくりするじゃない!」


晴奈は京に言った。


「何ゆうとんねん!こっちがびっくりするわ!1人や思うて、ちょっと驚かしたろう思たら、なんでこないにぎょうさん人がおんねん!」


京の小さな計画も、一瞬で終わった。


「で?どこで逆ナンしてきたんや?」


「違うって!皆、この森の中で迷ってた所にこの小屋を見つけたのよ」


「なんやそうかいなぁ。どうも、門垣 京介いいます。よろしゅうな(笑)っんで、こっちが妹の麻美」


「よろしく・・・」


「よろしく(笑)え~と私からも紹介するね、左から金森 和也さん」


「ょ、よろしく・・・」


「松井 翔太くん」


「よろしくね(笑)」


「城戸 健治くん」


「よろしく」


「鬼村 誠くん」


「よろしく」


「そして、私が野上 晴奈よろしくね麻美ちゃん」


「さーて、一通り自己紹介も済んだことやしそろそろ本題に・・・」


「その前に・・・あいつ・・・風戸 仁はどうなったの?」


晴奈の顔が急にこわ張った。


「心配せんでええ!あいつはまだ生きとる。それにあいつは、もう俺達の仲間や」


「どうゆう事?あいつは、私や翔太を狙ったのよ!」


「それはな―」


京介は、仁と肇の事を話した。


「なろほどね。だけど、なんか複雑ね・・・」


「大丈夫や本人がしばらくの間、仁は出てけぇへんゆうとるんやし」


「そうね」


晴奈の疑問と不安が消えた。


「で、さっき言いかけてた本題って?」


「あぁそうやったわ、これ見てくれ・・・」


“ガサッ・・・”


京介は、一冊の本を健治に渡した。


「【GAME】?なんですかこの本?」


「これは麻美が持っとった本や。書かれとる内容はこのクソゲームのルール・・・ええから読んでみ」


ルールを知らないメンバー全員が、その本を読んだ。


「すごい。健の推理当たってる・・・」


「なるほど・・・やっぱりな。だけど、まだわかんねぇ事だらけだ。でもまぁ、だいたいの事は把握した」


「これからどうするの?」


「今日はもう、この小屋で明日に備えてゆっくりと休むべきだろう。みんな慣れない環境に疲れていると思うし」


「そうやなぁ、健ちゃんの言う通りや(笑)」


「健ちゃん!?」


「なんや、気に入らんか?俺はこっちの方が呼びやすぅてええけど」


「ぃ、いやぁ別にそんな訳じゃないですけど・・・」


「ほなええがな(笑)」


健治も、すっかり京介のペースに飲み込まれる。

そんな時、和也が口を開く。


「あ、あのぅ・・・この暗号みたいなのは、なんでしょうか?」


それは、健も気付かなかった。


「ほんとだ。え~と、なになに【迷イシ蛇ガ、ヤマタノオロチニ変ワル時、天ノ光ガ次ノ道ヘト、導カン・・・】・・・」


「ねぇ?ヤマタノオロチって?」


「神話に出て来る、ひとつの体から首が8本ある大きな蛇の魔物のことだよ。」


「へぇ~、誠にぃちゃんも、物知りなんだね(笑)」


「なんだよ“も”は余計だろ!(笑)」


「迷いし蛇・・・ヤマタノオロチ・・・次の道・・・」


健治は、考え始めた。


「なんかわかった?」


「あともう少しなんだよ。あともう少しでなんか掴めそうなんだ」


「でもさぁ、蛇がヤマタノオロチに変わるってどうゆう事なのかな?」


「さぁな、それは俺も知らねぇよ・・・、神話の話しだしさ」


「首が8本あるから、8匹が合体したのかな?」


「バカだなぁ。それだったら体も8個になるだろ?」


「あっそっか!(笑)」


その時、翔太と誠の会話を聞いていた健治は、突然ひらめいた。


「なろほどね・・・」


「なんかわかったの?」


「あぁ・・・」


「なんて書いてあるんですか?」


「あぁ、今から説明する。まず、この文章のなかに書いてある“迷いし蛇”これは、俺達、このゲームに参加させられている人を指すんだ」


「どこだがわからない所にいる人間達・・「つまり迷いし蛇ねぇ・・・」


「・・・次に“次の道”これはおそらく、このゲームが次のステージになるということ。要するに、クリアに一歩近付くってことだ」


全員が無言のまま、健治の言葉を聞く。


「・・・そして最後に、“ヤマタノオロチに変わる時”・・・さっきまでこれが、頭の中で引っ掛かっていたが、翔太と誠の会話でわかった。これは蛇・・・つまり、俺達がヤマタノオロチ、に変われば次のステージに行けるってことさ・・・」


「でも、ヤマタノオロチに変わるって、どうしたらいいのよ」


「確かに、普通、人間がヤマタノオロチになんか変われない。だけど、さっき翔太が言ってたように“合体”すれば、ヤマタノオロチに変わるんだ」


全員が、疑問を浮かべる。


「いいか?蛇、つまり俺達が、ヤマタノオロチになる方法・・それは・・・仲間になる事・・・」


「仲間?」


「ヤマタノオロチは8匹の蛇が一つになったもの。つまり俺達、このゲームの参加者が8人集まれば、次のステージが知らされるって事だ」


「なるほどねぇ・・・」


聞いていたメンバー全員が健治の推理に度肝を抜かれた。


そして、麻美は、その健治の姿に優のかげを重ねた。


「さっすが健ちゃん!俺が見込んだ男だけの事はあるわ(笑)」


「あ、ありがとう・・・」


「でも、どうします?ここには、7人しか・・・1人足りないですよ」


「ホンマやなぁ、こんな事やったら無理にでも風戸さんを連れてくるんやったわ」


「俺なら、ここに居るぜ」


“ガラガラッ”


突然、ドアが開き、そこには、風戸 肇の姿があった。


「なんや、来てたんかいな、それにしても、そないに急にドア開けたら、びっくりしまっしゃろ!(笑)」


「ハハハッ(笑)そいつはすまなかったな。話しは、途中から聞いたぜ。これで8人だ!さぁ、何が起こるのやら・・・」


あまりの突然の登場で、京介以外が言葉を失うと、その時だった。


“ピリリリリリリリィッ!!”


小屋の中にいた者の携帯が鳴り出す!


「なんや?なんや!?」


「圏外だったのに・・・」


「これがどうやら、次のステージの案内になるメールか・・・」


それは、今まで圏外だったはずの携帯が、一通のメールを受信した。


だが、依然として、ディスプレイに表示されているのは、圏外の2文字であった。


「ちょっと待ってくれよ、俺は携帯を持ってない・・・」


肇は言った。


「ぼ、僕もです・・・」


和也も同じ事を言った。


「てことは、メールを受信したのは、実質6人か・・・」


「で?なんて書いてあるんだ?携帯を持ってねぇんだ。早く教えろよ・・・」


「わかった、今から受信されたメール内容を読む・・・」


健治は、メールを読みはじめた。


「【おめでとうございます。まずは第1ステージ、クリアです。もうご承知でしょうが、第1ステージのクリア条件は、仲間8人の獲得でした。それでは、次に第2ステージの案内ですが、それは翌日、10月8日(日曜)午前9時丁度に、放送でお伝え致します。尚、第2ステージでは、“人数”が生き残る為の鍵になります。このままの調子で人数をお増やしになってもよろしいでしょう。8人以上の団体になられているのは、あなた達が2組目です。その他のプレイヤーは、第2ステージが始まると、かなり不利な状況になります。決して、今のこのメンバーから、単独行動などは、なさらないように。これは私達、案内人からのこのゲームを楽しんで貰う為の御忠告です。お受け止めになるかどうかは、あなた達次第です。それでは、引き続きゲームを楽しんで下さい・・・】だってよ」


「なるほどな、参加者はかなりの人数のようだな」


「あぁ、そして、明日から始まる、第2ステージは、今までとは違って、団体で行うもの・・・」


「それに、俺達みたいに団体になっているのが、他1組・・・」


「ますます、わからんようになって来よったな」


「でも、健の言う通り、明日に備えて、ゆっくりと休むべきよね」


「だな、考えてても放送が始まるまで、何もわからない訳だし、今日はもう休むかぁ」


「・・・その前に、一つ決めておく事があんで!」


「決めておく事?何よそれ?」


「それは・・・」


「それは?」


「リーダーや!(笑)」


京介は自信満々で言った。


「確かに、団体行動になると、リーダーが必要だな・・・」


「やろ?・・・俺は健ちゃんを推薦すんで!」


「え?俺ですか!?」


「そうね、健が適任かも(笑)」


「ガンバレよリーダー!(笑)」


「正解な判断と、瞬時の分析力・・・ピッタリですね」


「みんな、異論はないな!ヨッシャ決まりや!明日から頑張ってくれよ!」


「わかりました!俺、精一杯頑張ります!」


健治は心の中で決意した。必ずこのゲームをクリアすると・・・

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