第18話

「ん・・・ん~・・・」


私は、目が覚めると見慣れない、木造の家にいた。


「・・・?・・・・・?」


しばらく辺りを見回したが、ここがどこだかわからない。


“パカッ・・・”


とりあえず携帯を開いた。


「10月7日(土)・・・13時12分・・・電池残量2・・・圏外」


ディスプレイには、そう表記されてある。


「嘘ッ!圏外なの!?」


私は、立ち上がり、同僚の名前を呼んだ。


「石川く~ん!!加藤く~ん!!」


しかし、返事は聞えてこない。


「たくっ、どこ行ったのよアイツら・・・」


私は、そのままこの家の出口へ向った。

ドアをゆっくりと開ける。


“ギィィィィイ・・・”


腐りかけた扉が、耳障りな音を発しながら開いていく。


“ザッザッ・・・”


私は、外へ出た。


「ここって・・・村?・・・だよね・・・」


目の前に広がった光景は、人気を感じさせないほど、静かで、今にも崩れかけそうな木造や、わらなんかでできた家が、建ち並んでいた。


「あっそうか!これは、私の夢だわ・・・」


時々、夢の中で、今自分が夢を見ているという自覚ができた私は、すぐにそう思った。

しかし それも・・・後々、現実だと思い知らされる。


“ザッ、ザッ、ザッ―”


私は村の中を歩き始めた。


「しっかし、リアルな夢だねぇ~・・・こりゃ私、昨日相当飲んだわね・・・」


思わず、言葉が出る。


「それにしても、ここまでリアルだと、逆に気味が悪いわ・・・」


リアル過ぎたのもそうだけど、人気の無い廃村が夢の舞台だったのも、この何とも言えない気味の悪さに繋がっているのだとわかった。


「でも待てよ・・"?・・・人間が睡眠中に見る夢って、確か記憶の整理だとかなんとか聞いた事あるけど・・・私、こんな村、来たことなんかないわよ・・・」



かすかに疑問もあったけど、夢だと思い込んでいた私には、ここがどこだとかいうよりは、早く夢から覚めないかなぁって考えてた・・・


“・・・ガシャーン!!”


すぐ後ろの家から、何かが割れるような音がした。


「ッ!?・・・何?今の音・・・」


目が覚めてから、今までの異様な静けさが、その音によって、さらに不気味差を増す・・・


「・・・猫?・・・これって夢なんだよね・・・」


あまりのリアルさに、少しこの夢の世界を疑う。

とりあえず、その音がした家へと足を向ける。


「・・・ホラー映画だったら、私って結構ヤバいポジションよね・・・」


そう言いながらも、一歩一歩その家に近づくと、その時・・・


“ギィィィィイ・・”


その家の出口が開いた。

私は、とっさに物陰に隠れた。


“ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・”


だんだんと足音が近付いて来る。

私はいつものように、上着のポケットから、銃を取り出す。


“ガチャッ”


「・・・ッ!?・・・誰だ!!」


「(ヤバい!気付かれた!・・・ってこの声・・・)・・・・加藤君?」


私は、物陰から出て、そいつの前に出た。


「え?黒柳(くろやなぎ)先輩?」


「なんだぁ~、加藤君かぁ~、脅かさないでよねもう~」


その家から出て来たのは、私の仕事仲間の後輩、加藤 英二(かとう えいじ)君

若干、二十歳で一課の私達の仲間に入ってから、5年。

普段はあんまり頼りないんだけど、コンピューターにかけては天才的でうちの署内なら、間違いなくNo.1・・・


「てゆーかさぁ、その“黒柳先輩”ってダッサイ名前で呼ぶのやめてくんない?私には、麗子(れいこ)ってゆう名前があるんだから・・・」


「すいません・・・つい、いつものくせで・・・」


「まぁいいわ。で、石川君は?一緒じゃないの?」


「いえ、僕もついさっき起きたばっかで、何もわかんないすよ・・・一体ここドコなんすかね?」


「さぁ・・・私も知らないわよ。ただ一つ言えるとしたら・・・ここは間違いなく現実の世界ね・・・」


麗子は、今いるこの世界が夢の世界じゃなく現実の世界だと、考え始めた。


「あっそうだ!・・・黒柳先輩!」


加藤は、何かを思い出したように、麗子に話しかける。


「だから、その呼び方は辞めなさいって言ったでしょ!」


「あぁ・・・すいません・・・」


「で?どうしたのよ?」


「実はですね、さっき僕が寝てた場所で、こんな物があったんスけど・・・」


“ガサッガサッ・・・”


加藤は、腰につけていた、ウエストポーチから、大きさはお弁当箱だいの、鉄でできた箱を取り出した。


「一体、何なんスかね?これ・・・」


「さぁね・・・とりあえず開けてみたら?」


「それがこれ、鍵がかかってて開かないんスよ・・・ほらここ・・・」


その箱には、1~3までのダイヤルが6個ついていて、さらに箱の上には、この鉄の箱を開ける鍵であろう、暗号が刻まれていた。

その暗号とは・・・


【・・・冥界ニ迷イシ、死人ノ魂ヨ・・・コノ箱ヲ開ケタクバ、我ガ名ヲ答エヨ・・・サスレバ地獄ノ道、開カン・・・】


「なんじゃこりゃ?・・・私には、さっぱりだわ・・・」


「あと・・・このメモ用紙も」


“カサカサッ”


紙を広げて麗子に見せる。


「何々・・・【この箱を守り、鍵人(キーマン)を探せ!】・・・ん~・・・これも、なんのこっちゃ・・・」


「・・・く・・・麗子先輩の所には、なんかなかったスか?」


「私のとこ?・・・そうね、あんまり周りを確認しなかったわ・・・」


“ザッ・・・”


そうゆうと、麗子は自分の目覚めた家に向った。


“ガサッガサッガサ・・・”


かなり荒れた家の中を、手探りで探す。


「・・・あっ!あった、これじゃないの?」


「なんすか?それ」


「・・・ん~なんか、島の地図みたいねぇ・・・あっ、メモもついてる!」


「読んでみて下さいよ」


「え~っと、【鍵人(キーマン)を探せ!】・・・また鍵人・・・なんなんだろうね、鍵人って・・・」


新たな謎が、2人を襲った。


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