第17話

俺達は、もう一度あの宝箱のあったポイントで集まっていた。


爆発までの残り時間・・・47分11秒・・・


「・・・・」


どれほどの沈黙が続いただろう。


そんな中、最初に口を開いたのは、麻美だった。


「私達・・・ここで死んじゃうのかな・・・」


「そんな事あらへんて!・・・きっと、なんか他にここから出れる方法があるって・・・きっと・・・」


啓悟も本当はわかっていた・・・


「・・・・」


「優!お前も黙っとらんとなんか知恵貸せ!・・・」


もう他に手が無いって事・・・


「俺、思うんだ・・・俺達にこんなゲームをさせてる奴は、本当に俺達をこっから出すつもりがあったのかって・・・」


「どうゆう事や?」


「この無線機の時間差の事もそうだけど、俺がもし、お前らと会っていない状態で、先に俺がこの宝箱を開けたら、仲間を見つける時間とそこから出口のポイントに行く時間・・・どう考えても40分じゃ足りないんだ・・・」


「ほんまやな・・・確かに俺ら偶然にも3人集まっとったから良かったけど。その事考えたら、絶対間にあってへんわなぁ・・・」


「じゃあ、私達がしてた事って無駄だったのよね・・・」


「いや、そうでもないんだ」


「どうゆう事や?」


「俺達の無線機の中に、たまにノイズがまじっただろ?数は6回・・・別に規則性もなかったし、俺は何かあると思うんだ・・・」


「ノイズねぇ・・・」


「でも、もう出口は開かないのよ!他に出口はないし・・・もう無理なのよ・・・ここから出るのは・・・」


「諦めたらあかんって!」


啓悟は、麻美を勇気づける・・・だが、空気はどんどんと重苦しくなる一方だった。


「麻美ちゃん、ここから出たいよなぁ?・・・」


「出たいけど・・・もう出口が・・・」


「いやっ、あるんだ・・・たった一つの出口が・・・」


「!」


「とりあえずついて来てくれ」


優は、そう言ってそのまま無言で歩き始めた。

麻美も啓悟も半信半疑の状態で優の後に続く・・・

だが、啓悟は気付く・・・優の向う出口を・・・

しばらく歩き続けた。優もこの建物の構造に慣れてきたのか、最初の頃とは全く違う速さで目的地に到着した。


「ここって・・・」


「そう・・・俺と麻美ちゃんが初めて出会った場所だ。この窓から外へ出られる・・・」


「・・・ちょっと待ってよ!この窓じゃ優も啓も出られないじゃない!」


「そんな事気にせんでええて!」


「嫌よ!私、1人じゃ出たくない!」


「俺達は大丈夫やから・・・」


「嫌!絶対に嫌よ!3人じゃないと、ここから出る意味ないじゃない・・・だから嫌!」


「麻美ちゃん、聞いてくれ・・・俺さ、赤ちゃんぐらいの時に両親をなくしたんだ。赤ん坊だったから、全然記憶にないんだけど、でもたった1人、親代わりになってくれた人がいてさ・・・その人が、死ぬ時こう言ってきたんだ…「私達の分まで生きて」ってさ・・・だから・・・」


「だから、俺達の分まで生きろって言うの?・・・そんなのなんか重いよ・・・」


「何言ってんだよ!今は、そんな事言ってる暇はねぇんだぞ!」


「でも・・・」


「頼むわ。麻美ちゃん・・・」


“サッ・・・”


優は、麻美の手を引っ張り、体を抱えて、無理やり外に出そうとする・・・


「嫌!私、1人でなんか全然嬉しくない!」


そして、麻美は優によって、無理矢理外に出されたと同時に、内側から鍵をかけた。


“ドンドンドンッ”


麻美が窓を叩く・・・


「・・・優!・・・啓!・・・開けてよ!私・・・1人じゃ何も出来ない・・・」


泣きながら窓に向って叫ぶ!


「どんなにかかるかわかんないけど、一緒にここから出るって言ったじゃない!」


「ごめん・・・約束破っちまったかな・・・」


「・・・大阪・・・案内してくれるって言ったじゃない!・・・」


「スマンなぁ・・・そらまた今度や・・・」


「そんなの・・・2人共、勝手だよ・・・」


「いいから早くこっから離れろ!こんなゲームを仕掛けてくる奴なんだ!いつ爆発するかわかんねぇんだぞ!」


「だけど・・・」


「いいから早く行くんだ!!」


優が叫んだ・・・

その声を聞くと、麻美は森の奥へと走って行った。


「ええんか、あんな言い方して・・・」


「いいんだよ・・・もう目の前で誰かが死ぬのは見たくない・・・」


「なるほどなぁ。でも、とうとう返せんかったなぁ~、あのCD・・・」


「ああ、あれか・・・かまわねぇよ」


「でもあれ、先生からの、誕生日プレゼントやったやろ?」


「ああ・・・でも、もういいんだ・・・」


「そうかぁ・・・でもあれ貰った時、困ったよなぁ」


「そうだったな、ディスクがあっても、肝心のプレーヤーがなかったもんな!(笑)」


「そんで、次の俺の誕生日にCDラジカセ貰て、2人で喧嘩しもって聞いてたもんなぁ(笑)」


「そうだったよなぁ・・・」


「ラジカセで思い出したけど、ラジカセに―」


優と啓悟は昔の話しをして時を過ごした。

そして・・・その約30分後・・・

時間通り・・・建物は爆破された。

その音は島中に響き、麻美の耳からは一生離れられない音となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る