第15話

「健ッ!大丈夫か!」


「大丈夫だ・・・ちょっと腕をかすめただけだって。お前は大袈裟過ぎんだよ!」


「悪ぃ、でも・・・」


誠は、健を撃った奴を睨んだ。


「お前!なんで健を撃ったんだ!」


「わ、私・・・・ごめんなさい!」


そこにいる女は、かなり動揺していた「


「謝って済むかよ!たまたま腕、かすったぐらいで済んだけど、一歩間違えたら取り返しのつかない事になってたんだぞ!」


「私・・・急に声がして、ドアが開いた瞬間びっくりして、いつの間にか引き金を引いてて・・・・本当にごめんなさい!!」


「それでもなぁ!・・・」


「もういいって!」


「健・・・」


「でも、あんまり弾の無駄使いは極力避けた方がいい。少なくとも俺達は、敵じゃない」


健は優しい態度で接する。


「君、名前は?というより俺達より歳上だよな?」


「私、野上 晴奈。歳は、18よ」


「俺は、城戸 健治(きど けんじ)。で、こっちが・・・」


「鬼村 誠(おにむら まこと)」


「2人共歳は17だ。それにしても誠、もういいだろ?彼女も故意にした事じゃねぇんだ。こんな小屋に1人でいて、急に外から身に覚えのない声がしたら、お前だって焦るだろ!?」


「そうだよな。ごめん!俺、健が撃たれて気が動転して・・・」


「いや、謝んないでよ。悪い事したの、私なんだから・・・」


「別に俺は気にしてないぜ。だから、もう気にしないでくれ!」


「うん」


「それにしても、どうしてこんな所に?」


晴奈は翔太の事、仁の事、京介の事、朝から今までの事を話した。


「・・・やっぱみんな同じか・・・」


健治は、一言つぶやく。


「なんか参考になった?」


「いや、謎が増えただけってゆうか、わかったのは その風戸 仁ってゆう奴は、このゲームの事、何か知ってるって事だ・・・」


「じゃあそいつに聞けば、この島から出る方法も!?」


「いや、そこまでは分かっていないと思う。分かっていたら、このゲームに参加せずに、脱出のことを考えているだろうぜ。まぁ、性格もあるんだろうけどな」


「おそらくこのゲームは、何種類かの役(キャラ)にわかれているんだ」


「役(キャラ)?」


「ああ、・・・まずは、野上さんのメモに書いてある【鍵人(キーマン)】そして、翔太君や、門垣さんみたいな、武器を持っている役・・・仁みたいに他のプレイヤーを襲う役か、このゲームの内容を知る役・・・そして分らないのが、野上さんと、昼間にいたその変態野郎、そんで俺達・・・まだ、このゲームで何をするか分らないプレイヤーだ・・・」


「じゃあ、早く仁って奴に聞きに行こうぜ!このゲームのこと・・・」


「それは、無理だろうぜ」


「なんでだよ!」


「お前、野上さんの話しちゃんと聞いてなかったのか?話しじゃ、門垣さんが血相変えて飛び出して行ったんだ。おそらく仁を殺しに・・・」


「殺しに!?なんでそこまでわかるんだ?」


「知らねぇのか?その仁って奴、5年前に捕まった、大量殺人鬼だぜ。おそらく、なんらかの恨みがある思う。

だってそうだろ?名前を聞いた途端に飛び出して行ったんだったら、野上さんを助けた時、そいつが仁だって事を知らなかった事になる。わざわざ とどめをさしに行くなんて、復讐ぐらいしかないんじゃないか?」


「そうか・・・」


「私、止めた方が良かったかな?・・・」


「その人の復讐を他人はそう簡単に止められるもんじゃない」


健治は、少し表情を曇らせた。


「でも、どうする?これから?」


「お前は寝るんじゃなかったのかよ(笑)」


「バ、バカ、眠気なんかもうとっくに吹っ飛んだっつうの!」


「ハハハッ。まぁでも、門垣さんが来るまでここにいてもいいんじゃねぇか?俺達だけ出て怪我してる野上さんを1人にするなんて出来ねぇし」


「ごめんなさい・・・」


「だから気にしなくていいって」


「うん、あと、野上さんじゃなくて、晴奈って呼んでよ、歳、1つしか変わんないだしさぁ。それに、健君達の方が大人っぽいし(笑)」


「OK!じゃあ、よろしく!晴奈!」


「よろしく」


健治、誠、晴奈の3人は京介が戻るまで、小屋の中で待つことにした。


そして、数十分たった、時だった。


「・・・晴姉~!・・・晴姉~!」


小屋のすぐ近くで、晴奈にとっては、聞き覚えのある声が聞こえた。


「翔太?!」


「えっ?」


「・・・痛ッ・・・」


晴奈は立ち上がろうとしたが、また足に激痛が走った。


「俺が、呼んでくる!今の俺達には翔太君の武器を持つ役が助かる。それに翔太君、結構近くにいるみたいだしな・・・誠!お前は晴奈と一緒にここにいろ!」


「わかった」


「ごめん・・・本当だったら私が行くのに・・・」


「まぁ早くその足を、治すんだな(笑)」


「うん・・・」


「じゃあ誠、頼んだぞ。そんなに遠くないから、すぐ戻ってくる」


「おう!」


“ガラガラガラガラッ”


健治は、翔太を呼びに小屋を離れた。


「翔太くーん!」


俺は、晴奈に言われて翔太君を探しに森の中を歩いていた。


「翔太くーん!・・・!?」


すると、遠くの方で翔太君らしき人影ともう1人誰かがいるのが見えた。


“ザクッザクッザクッザクッ”


俺はその2人に近づく


そこには、翔太君らしき子供と、腰に刀をつけている男がいた。


「君、翔太君だよね?」


「そうだけど。お兄ちゃん誰?なんで僕のこと知ってるの?」


「あぁ、ごめんっごめん。俺は、城戸 健治。晴奈に頼まれて、君を迎えにきたんだ」


「そうだったんだ。ってことは晴姉は無事だったんだ!」


翔太の顔は、晴奈が生きていたとわかると、安堵の表情を浮かべた。だがすぐに、その場から晴奈を置いて逃げた事による罪悪感からその表情は、自責の念で曇っていった。


「どうした?翔太君?」


「ううん、なんでもない・・・」


「ところで、そっちの人は?」


健治は、翔太の横にいた人物を見た。

初めは、どこか見覚えのある顔で、誰なのか引っ掛かっていたが、腰につけている黒い刀を見た瞬間、その疑問は吹き飛んだ。

そう・・・その男は、俺と誠が森の中で、遭遇した男だった。


「え、え~と、私は、金森 和也(かなもり かずや)です。え、え~よろしく」


「・・・よろしく」


その人の容姿は、やせ型で眼鏡をかけていて、どこか挙動不審だった。

それもそのはず、俺の推理じゃ、こいつは人を殺しているのだから・・・


「さっき知り合ったんだ。ほら、仲間は多い方が心強いし。それにこの人、悪い人じゃないし」


「そうか・・・じゃあ、早いとこ、晴奈のところに戻ろう」


「うん!」


“ザザッザザッザザッ”


俺達は、あのボロ小屋に向っていた。


「あ、あの・・・城戸さんはどうしてこのゲームに?」


「(ゲーム?この男、やっぱり何か知っているのか?よし、少しかまをかけてみるか・・・)・・・いや、俺も俺の仲間も、目が覚めたら、既にこの島に・・・ほとんど強制的ですよ」


「そうですかぁ」


「(やっぱりだ・・・こいつ何か知ってる!)」


「えっ?・・・ここって島なの?」


「ッ!?」


翔太と和也は驚いた。


「あぁ、森の中でこの地図を拾ったんだ」


“ファサッ・・・”


健治は、地図を広げて見せた。


“サッ・・・”


「ここが、俺の目覚めた場所・・・」


健治は、自分達が目覚めた高台を指さした。


「へぇ~、じゃあ僕は多分・・・この建物かな。」


翔太も、同じように指をさした。


「ねぇ、和兄は、どこで起きたの?」


「ぼ、僕?・・・ん~、森の中だったし、どこで目が覚めたのかは、分らないなぁ。それに、翔太君と会うまでは、その場から動かなかったからねぇ。周りがどんなところなんて、わからないよ」


「(ッ?!・##なぜだ?なぜこいつ・・・)本当にその場から移動しなかったんですか?」


「は、はぃ・・・」


“スッ・・・”


「ねぇ?健兄、晴姉がいる小屋ってあれ?」


「え?・・・あぁ、そうだよ。あそこに晴奈と俺の仲間がいるんだ」


小屋を目の前にして、翔太の足が早まる。


“ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・”


そして小屋の前で立ち止まる。

そっと、扉に手をかけ、扉を開ける。


“ガラガラガラガラッ”


「翔太!!」


「晴姉!」


間髪入れず、晴奈が叫んだ。


「アンタどこまで逃てたのよ!心配したじゃない!」


翔太の顔が、悲しい表情になった。


「ごめんなさい。助けを呼びに、行ってたんだ」


翔太の顔を見た晴奈からは、いつの間にかその怒りは消えていた。


「・・・・・」


「本当にごめんなさい!」


「ふぅー、まぁいいわ。でも、本当に無事で良かったわね」


「晴姉・・・」


晴奈は、健治の方を向いた


「健、ありがと。私の代わりに翔太を迎えに行ってくれて」


「いやぁ、別に俺は感謝されるような事は何もやってねぇけどな(笑)」


「そんな事ないわよ。あれっ?そっちの人は?」


「あぁ、和兄は森の中で知り合ったんだ」


「こ、こいつって・・・」


誠が気付いた。


「シィッ!(俺達が森でこいつを見た時の事は、黙ってろ)」


健治は誠にしか聞こえない声で話す。


「(なんでだよ!こいつ、人を殺してるかもしんねぇだぞ)」


「(いいから!今は、知らないふりだ!)」


「(わかった。その代わり、後でちゃんと教えろよ)」


「(あぁ、わかってるって!)」


「あ、あの、どうかしましたか?」


そんな小さな会話の中、和也が鋭くつっこんできた


「えっ?!いや、あの・・・その・・・・(汗)」


「あぁ、誠もやっぱそう思うか?

ほらっ、俺達の友達の・・・」


「・・・友達・・・そうそう友達!」


そう言って二人で会話を合わす、


「友達ですか?」


「えぇ、俺達の学校に、金森さんに似てる人がいるんですよ(汗)だから、なんか懐かしいなぁ~なんて・・・」


「そうなんですかぁ」


「(ククッ・・・)」


健治は、誠をうまくフォローしたのと、それに見事に乗った誠に対して下を向いて薄く微笑を浮かべてた。


「え~と自己紹介が遅れましたね、俺、鬼村 誠っていいます」


「私、野上 晴奈っていいます」


「え、あ、あの・・・金森 和也です・・・、よ、よろしく・・・」


こうして、また1人このゲームのプレイヤーが集った。

“ドゴォォオオオン!!”


突然、小屋の外から とてつもない爆発音がした。


「ッ!!?」


5人は驚いた。


「何?今の音」


「爆発・・・だよな?」


「近いぞ」


“ガラガラッ”


健治は、外に出て周りを確認するが辺りは既に、夜が来ていた。


「くそっ・・・!周りが暗くて、どうなってるのか わかんねぇ」


そこはただ、夜になって周りが暗くなっただけじゃなく、森の中だった為でもあった。


「なんだったんですかね?今の音・・・」


「さぁ・・・」


「ねぇ、確かめに行こうよ」


「いや、今日はもうやめておいた方がいいだろう」


「そうよね、京も帰って来る事だし、明日の朝の方がいいんじゃない?」


「わかった」


「(だけど本当になんだったんだろう。やっぱ、このゲームに関係あんのか?一体何なんだ?俺達が参加させられてるゲームって・・))」


健治は考えていた。このゲームの事を・・・


同刻・・・~森の中~


「しかし、なんやったんや?さっきのものごっつい音は・・・しかも、晴奈ちゃんがおる小屋の方から聞こえて来たな

こら、はよ戻ったらんと、あの子1人やからきっと寂しがっとるやろなぁ」


俺は、仁の血の跡を追っとったんやけど、途中で見失ってしもた・・・どないしよ・・・もう暗なって来て、探す事も出来んようなってもた。

ほんま、どないしよ・・・」


手掛かりを無くした京は、八方塞がりだった。


だが、もう諦めて、晴奈のところに戻ろうとした京に、またチャンスが訪れた。


「ん?なんやあれ?」


京のいる場所から、300mぐらい先に、かすかに光が見えた。


京は、その光の方へ向った。

片手の銃を握り締めて。


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