第32話

 二日目、



「『召喚サモン:アンとウン』」


 倒されたモンスターを再度呼び出すにはゲーム内で半日のクールタイムが必要らしい。『使役系』の才能は不遇の傾向にあるとフッカから聞いたことがあったけどその理由の一つなんだろう。


「「ゔぁー」」


「うわ、何この千年に一人の美幼女は、

 …って双子だから一人じゃないか。」


「フッカちゃんからすごいモンスターだって話は聞いていたけど、こんな可愛らいなんて…」


「掲示板で噂になっていた双子を連れた覆面のプレイヤー、

 まさかお姉さんだったとは…。世間も狭いわね。」


 双子と初対面だった3人が口々に感想を言う、

 …って、ちょっと待って。掲示板で噂になってたってどういうこと?


「ふふーん、だから言ったでしょ?お姉ちゃんのモンスターはすごいって。

 ネタバレしちゃうとつまらなくなっちゃうからずっと伏せてたのよね。」


 何もしていないのにフッカはなぜか得意げだった。


「そんなことよりもお姉ちゃん、二人に早く渡した方がいいんじゃない?」


「あ、そうだった。ちょっと待ってて…。」


 私は昨日手に入れた巨大棍棒を具現化すると双子の前に置いた。


「…ゔぉ?」

「ゔぁー!」


 ウンが興味なさそうにうめき声をあげたのに対して、アンはとても嬉しそうな声を出すと棍棒をつかんで軽々と持ち上げた。


「ゔぁ!」


 フッカが棍棒を振り回すと、ブォン‼︎という音とともに棍棒からでた風が私たちの方にも吹いてきた。どうやら持ち主が決まったようだ。


「棍棒の持ち主が決まったのはいいですけど、ウンちゃんも何か武器がないと寂しそうですね。」


 確かに、アンの方は武器をもらって豪華になったがウンの方は丸腰でなんだか目立たなくなってしまっている。

 これはこのイベント中にいい武器を見つけなくては…。


「さて、とりあえずこの後は昨日話した通りでハユさんは別行動でええんやね?」


「うん、問題ないよ。私がみんなの足を引っ張てしまうだろうし、報酬の分配も面倒くさいから。」


「うーん、そんなのげーむなんだから気にしなくていいと思うんだけどね。

 お姉ちゃんは変なところ真面目だからな~。」


「今日は近場を探索するし、昨日みたいなのを見つけても無理にはいかないから安心して別行動してよ。」


 昨日、私たちは寝る前に明日からの動きについて話し合ったのだが、フッカたちはこの湖を拠点にして昨日の大猪クラスのモンスターと戦うことを考えているらしい。私もそれに同行すればかなり儲けられるかもしれないが、レベルの壁というべきかフッカ達の足を引っ張ってしまうことは確実だ。なので私はこの湖周辺で簡単なチャレンジをクリアして小遣いを稼ぐことにする。


 デカいのを一発当てるのではなく、細かく積み上げていく。その方が危険は少ないし確実だ。


「んじゃ、そっちも頑張って。無理せずね」

「お姉ちゃんもね。」


 湖での別れ際にフッカ達にそう言うと私は湖から北側へ、フッカたちは南側へそれぞれ向かった。

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仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった 夏男 @kao-summer-season

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