第15話
夏休みが始まりました。
夏休みといえば海、花火、お祭りetc...数えきれないほどのお楽しみが待っているわけですが、私は今暗くてジメジメした洞窟の中をさまよい歩いています。
肝試しではありません。ナニか得体のしれないものの目撃情報とかがあるわけではなくただの洞窟です。
「ギチギチィ‼」
「ホッ‼お姉ちゃんそっち行ったよ
気を付けて‼」
…まあ、モンスターは出るけど。
「任せてくださいフッカさん‼
私を母親呼びする、変な人もなぜかくっついている。
「ダンジョンへ行こう。」
夏休み前最後のホームルームが終わり私が帰宅すると先に帰ってアイスを食べて(アイスは晩御飯の後という決まりのハズだけど)いた風香に唐突に言われた
「え?」
「だから、ダンジョンへ行こ?
ダンジョンに入って一緒に冒険すれば私はお姉ちゃんの死霊術と双子のことで何か発見があるかもしれないし、お姉ちゃんはドウへ行くための費用を準備することが出来るからウィンウィンでしょ?」
なんだTWOの話しか
うーん、言われてみれば確かに。
実は先日狩ったラージットのドロップアイテムを換金しようとしたら思ったよりも利益が残らなかった。どうにも私達プレイヤーがラージットのドロップアイテムを大量に納品しすぎたせいで値が大分安くなってしまったらしい。かといってスライムを狩ろうにも今のラージットのドロップアイテムの価格より安いし、宿の清掃みたいな雑務はわざわざゲームの中まで来てやることではないという気がしてやりたくないからお金をどう稼げばいいか悩んでいたのだ。
ただ、一つ問題がある。
「ダンジョンって何?」
アリサさんが
そういえば後日聞いたらあの話は採算が取れないと判断されて白紙になったらしい
「ハァー…。お姉ちゃんマジで言ってる?
ダンジョンって言うのは…、」
風香は芝居がかった動作でアイスのスプーンで私を指すと深いため息をついた。
この後風香は長々とダンジョンの設定やダンジョンに入るのに必要な条件、最近のダンジョンのトレンドについて話してくれていたけどまあ、モンスターがいっぱい、罠がいっぱい、お金になるものがいっぱいある場所らしい。
「ってことで、お姉ちゃんはお昼ご飯食べたらすぐにinして私に連絡頂戴。
私は待っている間必要なものそろえたり、軽い依頼受けてるから」
そんな暇あるの?と思ったけど、現実で私がお昼ご飯を食べるのに三十分ぐらいかかるとするとその間ゲームの中だと半日進んでいる事になるからそう難しい話でもないのか。
お昼ご飯に冷凍のチャーハンを食べ、食器を片付けてから(何故か風香のも洗う羽目になった)TWOへログインすると、前回ログアウトした宿のベッドの上で目が覚めた。
このゲームではログアウトするとゲーム内時間で2時間程身体が無防備の状態で放置されるらしい。街の中であれば外と比較すれば安全だけどこの前路上でログアウトしたプレイヤーが馬車に轢かれてポリゴンになって砕け散ったのを目撃したことがあるので私はなるべく宿を使うようにしている。
カーテンを開けると早朝の様でちょうど日の出を見ることが出来た。
「あら、ハユさんお早いですね?
モーニングにはコーヒーと紅茶どっちにします?」
宿の食堂に降りるとこの宿を一人で切り盛りしている女将さんはすでに起きていた。
朝ごはんはパンにゆで卵、サラダとどれも魅力的な匂いがして先程お昼ご飯を食べたばかりだというのに食べれそうだ。
「あ...。おはようございます。
じゃあ....、コーヒーをお願いします。」
席について早速食べる。うん、どれも美味しい。
このモノの宿には大小含めてかなりの数の宿があるけど、ここの宿は部屋はきれいでご飯は美味しいし値段の割にはかなりの良宿なんじゃないかと思う。
「おいしそうに食べてくれて嬉しいわ~。
それにしても久しぶりに顔を見たけど今日は何か予定でもあるの?」
「ちょっと、この後友達と会うことになってまして....。」
良宿ではあるが、若干女将さんがフレンドリーすぎて困ることもある。
ログインしたらすぐ連絡をよこせと言われていたがどうせ寝ているだろう。私は朝ごはんを食べ終わるとフッカが起きだすころまでモノの街を散歩してみることにした。
プレイヤーはどうか分からないが元からこのゲームに住んでいた(?)
あ、そうだ。
「「…ゔぁ(ゔぉ)?」」
折角だからアンとウンも連れて行こう。
ここ最近はゲームにログインすると直ぐにラージットと戦うだけでそれ以外のことをやっていないし双子のことを理解するいい機会かもしれない。
早朝だからか「こんな朝早くにナニ?」と言いたげに双子はどちらも眠たそうな瞼をこすりながら私の方をのぞき込んだ。
「もしかして寝てた?
それだったらごめんね。ちょっと一緒に朝の散歩でもと思ったから…。」
もしも双子が散歩するのが嫌そうだったら宿でもうひと眠りなり、送還するなりしてあげようかと思ったが、双子も乗り気なのか私の両手を各々が握ると私を引っ張た。
「…尊い。」
うぇ?
気が付くと私は襟を何者かにつかまr…。チョッ、苦しい‼死ぬ…。
「ふ…、二人ともマ…って‼」
アンとウンがグイグイ私を引っ張り、後ろでは初心者装備の襟をつかまれた私はなすすべなく絞められる。
呼吸が、できない。
「ああ、私ったらごめんなさい!!
そちらの御子様たちが早く行こうと貴方を引っ張る仕草が尊すぎて、危うく絞め殺すところでしたね!!」
女性の声が背後から聞こえたかと思うといきなり襟を引っ張ていた手が離れ、その反動で私は前方にたたらを踏んでしまった。
「おおっと、大丈夫ですか⁉
…まあ、私がやったことなんですけども。」
後ろを振り返ってみるとそこには全身をゴシックロリータ?で固め背には幅広の大剣を背負った私と同い年くらいの奇麗な顔立ちの女の子が心配そうにこちらを見ていた。
彼女を一目見て分かった。
この子かなりやばい子だ。
「それで、こんな朝早くからそんな麗しい御子様方を連れてお散歩ですか?
…良ければ私もご一緒していいですか?」
そしてもう逃げられないことも。
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