第16話
「ギチギチィ!!」
「気持ちわるいっ‼」
奇声を発しながら飛びかかってきた巨大なムカデのモンスターをギリギリで避けることができた。
「「ゔぁー(ゔぉー‼︎)‼︎」」
ムカデの飛んで行った先で待ち受けていた双子がムカデの突進を受け止め、頭部(?)をガッチリと捕みそのまま腕力にものを任せて絞めはじめた。
「ギィ…、チチチチッチチ…」
残念なことに私はムカデ語を理解することはできないが、苦しそうに身をもがいている様を見るにどうやらアンとウンの絞めは効いているようだ。
うわっ、ムカデの何本もある足や腹の部分をチラッと見てしまった。
とりあえずガッチリホールドしている双子はここから出たら体を洗わせないといけない。
ああ、キモチワルキモチワルキモチワルキモチワルキモチワr...
「ちょっとお姉ちゃん!?
このゲームにはSAN値なんて存在しないんだからぁ発狂しないの‼」
「そうですよお義母さん!!
お義母さんにはもとより期待していないので回避に専念していてください!!」
ゴスロリを着た女の子、マーレが大剣を振り回しながら突っ込んできて私もろとも絞められているムカデを吹き飛ばした。そう、私もろとも。
朝、アンとウンを連れて散歩に行こうとした時に運悪く彼女と出会い、何故かフッカと意気投合してしまった為に現在、一緒に洞窟のようなダンジョンを探索中だ。
彼女が言うには私の連れているアンとウンが『見た目や仕草が非常に尊い』らしく、戦っているところを見れば幻滅すると思っていたがそのワイルドさも逆にアリという意味のわからない理屈で二人のことをかなりいやらしい目で見ている。
まあ、重度の
それにしても、二人の主人である私には「お義母さん」呼びではあるけど態度にあまり敬意がこもっていない様な気がするのは果たして気のせいなのだろうか…?
「ふぅ…、現状でも高難易度で有名な『腐蝕の洞窟』がこんなにもサクサク進むのは流石β版4位の実力ですね。」
ダンジョン攻略の休憩中、マーレがそう言いながらアンとウンの方をチラチラと見た。当の本人たちは彼女が苦手なのか視線に気がつくとササっと私の後ろに隠れた。
あ、ちょっと悲しそうな顔してる。ざまあない。
だけど、一つ聞き捨てならないのはフッカはゲーム初心者の私を高難易度なダンジョンに連れてきたということだ。
それが関係しているのかどうかは定かではないがさっきから私の攻撃(ナイフ)は襲いかかってくるモンスターにダメージを与えられていないため、戦闘に全くと言っていい程役に立っていない。
まあ、でも別にいいか。私とすればついて行くだけでお金がもらえるのだから。
あれ?『寄生虫』とデカデカ書かれたのぼり旗が突然頭の中に浮かんだ。
なんでだろう?
「別にそれ程でもないかなぁ、
それにマーレちゃんもすごい強いじゃん‼︎」
フッカは謙遜した様な口ぶりではあるが、褒められたのが嬉しかったのか頬を赤くした。
我が妹ながらとても分かりやすい。将来詐欺や悪い人間に利用されないことを切に願う。
「二人とも強いのは分かったけどマーレちゃんは攻撃の度に私を巻き込まないで欲しいな…。」
「あははー、それは申し訳ございません
私のエモノがエモノですので、あまり細かい戦い方ができないのです。それにモンスターがすぐに義母様の方へ向かってしまうのでどうにもならないんです。」
マーレの戦いっぷりは華奢な見た目とは裏腹に大剣を軽々と振り回して襲ってくるムカデをバッタバッタとなぎ倒していくアンと同様バーサーカーのような豪快な戦い方で私を巻き込まなければとても優秀な
「でも敵の目の前には私やフッカちゃんがいるのに何故義母様ばかり狙われるのでしょうか?」
それは私も気になっていた
今現在、パーティーの並びは前からフッカ→マーレ→私→双子と列になって進んでいるのだが、向かってくるムカデは全てフッカとマーレを抜かして私に照準を定めて襲いかかってくる。私からの攻撃は受け付けないのに対して
「ん〜、多分お姉ちゃんがこのパーティーで一番ステータスが低いのとお姉ちゃんを倒すとアンとウンちゃんも消滅できるからだろうね。それに私たちの中にヘイト管理できる人がいないから余計に狙われやすいんだろうね〜。」
マーレの疑問にフッカが良くぞ聞いてくれたと言わんばかりに答えた。
なるほど、どうりで私ばかりにムカデが向かってくるわけだ。
それにしても脳があるのかないのか分からない見た目をしているくせに意外と頭がいい行動をするもんだ。
…ひょっとしてこのムカデに限らず双子と私だけで手強いモンスターを相手にするときは真っ先に私が狙われる?
今はアンとウンの他にもフッカやマーレがいるから問題ないがこのダンジョンから出たら自衛の手段を身に付けなければ。もふもふを抱きしめる前に死んでしまう。
「さあ、もうすぐこのダンジョンの最奥だよ‼︎
気を引き締めてイコーッ‼︎」
休憩は終わりだと言わんばかりにフッカは立ち上がると元気いっぱいに号令をかけた。
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