第9話
「よし!!ここで二階は最後」
ガラガラドシャーン!!!
色々と考えた結果ガラクタを窓から外に捨てるのが一番手取り早いと判断した私はまずガラクタを窓から落として部屋の中のものを無くすと、軽く壁の埃をハタキを使って落としその後床を箒ではくという作業を淡々とこなしていった。
本当は水拭きや天井も掃除した方がいいんだろうけど部屋は8個もあるので労力を減らすのとそもそも目一杯腕を伸ばしても箒が天井に届かないので諦めることにした。
まあ、報酬も500クレジットと労力に見合わないので多少のことには目を瞑ってくれるだろうと思い手抜きできるところはしていこうという精神である。
それに昼間で明るいと言ってもこんなボロボロの館に一人でいるのは少し心細い。
そういえば、私がここを掃除する前に入ってきたNPCの方々も一人で探索したのかしら?
その後罠を間違えて起動してしまい部屋が毒ガスで溢れたり、床から火柱が上がったりしたが被害はモップが一本焦げた程度で(天井まで火柱が上がっていたのに不思議と天井は焦げていなかった)怪我もなく二階全ての部屋を掃除し終えた私は少し休憩をすると今度は一階を掃除する為階段を降りた。
居間は二階の小部屋と同様に埃が溜まっており、部屋の隅にある大きな暖炉の中は埃と灰がいっぱい詰まっていた。
家具や調度品の類いは全て持っていかれてしまった後で、居間はがらんとしていた。
所々穴の開いた壁には何箇所か額縁が飾られた跡があり部屋に額縁や絵が見当たらないのでそういった類のものは全て持ってかれてしまったようである。
とりあえず灰が飛び散るのは明らかだし暖炉の中をきれいにしてそのあと部屋を掃除するべきかな。
私は暖炉の前に屈むと持ち手の小さいホウキとちりとりで暖炉の中の塵や灰を掻き出しにかかると途端に周りが灰や埃で覆われ目を開けるのもやっとと言う有り様だ。
「うわっととと」
思わずバランスを崩した私は思わず暖炉の床に手をつけ…
「きゃっ!!」
なかった。何故か私は暖炉の床を
居間を掃除する前に資料に目を通したけど確か棚を触ると毒針が飛んでくる罠とかある床板を踏むと火柱が上がって踏んだ人を丸こげにする罠のことは書いてあったけどこんな罠があるなんて書いて無かった筈だ。全く嬉しくはないけどもしかしたらこの館の新しい罠を発見したのかもしれない。
急勾配の穴の中を猛スピードで滑り降りている私は一瞬このまま底まで落ちていくのかと不安にかられたが穴は緩やかに平らになっていき、最終的に私は硬い地面にお尻から投げ出された。
「いったー…くない?」
床は硬い石だたみでできており本来ならお尻が割れるばかりの痛みに襲われそうなところだけど不思議と痛みは無かった。やはりゲームの中だからだろうか?
それにしてもここは一体どこだろう?身体に付いた煤や埃を払いながら私は当たりを見回すが暗すぎて何も見えない。
もしかして閉じ込められた?
そういえばあるゲームでは壁があるのにすり抜けてゲームの裏世界に入っちゃうって事件があったような。
確かゲームの販売元がそのプレイヤーをゲーム内で見つけるまで3日かかってその間真っ暗で何もない空間をただただ落ち続けたとか…
と、とりあえず今自分の持ち物とできることは何かを確認してそのあと行動に移そう。
メニューは…開けるね。ログアウトも問題なくできるようだ。最悪ゲームの中の身体を捨てて現実に戻ることはできるようだ。しかもゲーム内の回線も繋がっているから万が一の時は知り合い、まあアドレスを知っているのがフッカだけだからフッカにしか連絡できないんだけど。
もしもこんな状況をフッカに見られたら絶対に笑われて黒歴史になる事間違い無いわね…。
うん、
さてと、暗い空間に一人ぼっちで心細いけど本当に最悪な状況では無さそうだ。
よし、今度は今持っているものをチェックする前に明かりを確保しよう。確か地下室を掃除するために渡されたマッチと蝋燭をポーチの中に入れていたはず。
このポーチはゲームを始めると最初から持っているもので中は異空間に繋がっているのか手を入れてもポーチの底に手が触れることはなく、ポーチの中に入れたものを思い浮かべるだけでその物を取り出すことが出来る優れものなのである。
私は手探りでポーチの中を探るとすぐにマッチ箱と蝋燭をとりだした。マッチをこすって火を点けると消えないように手で風よけを作りながら蝋燭に火を移した。
うん、明かりがあるだけで落ち着く。
他に持っているものは…、いつもラージットをテイムする時に使っている初心者ナイフとさっき脱いだペストマスク、後は暖炉から落ちていた時に持っていた小さい箒と塵取りだけかぁ。
箒は燃やせば松明の代わりになるかもしれないけど一体これでどうしろと?
まあ、明かりのお陰で多少なりともこの部屋を見ることができるしちょっと調べてみますか…って
「え、なにこれは…。」
思わず口に出てしまった。
それもそのはず、蝋燭の明かりで僅かにだが見ることのできたそれは黒い大きな棺だったからだ。
ア、これは無理。
私は大慌てでウィンドウを開くとフッカにSOSを送った。
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