第8話
[手伝:屋敷の清掃]
モノの街外れにある職業斡旋所所有の屋敷を清掃してください。以前は名のある魔導師が所有しており、屋敷内のものはお譲り致します。
また、屋敷内での不慮の事故(四肢欠損、死亡等)は当方責任を負いかねます。
依頼主:職業斡旋所
「あ、ここですね。」
斡旋所のお姉さんが指す方向を見るとそこには二階建ての半分朽ちかけた洋館がたっていた。
洋館の壁の大部分は枯れた蔦で覆われ、蔦の隙間から見える壁面は薄ら汚れひび割れていた。
今にもお化けが出てきそうな館だけど残念ながら今はお昼少し前、幽霊が出てくるのにはまだ時間が早く折角のホラーっぽい洋館もただの古ぼけた館にしか見えない。
「ええっと。作業を開始される前に説明だけしておきますね。
このお屋敷は5年ほど前まで冒険者業で財を成した魔導士が建てた邸宅でして、当人はかつての大戦で正気を失いそれからしばらくして消息を断ちました。」
一番低ランクなのに内容が濃い…
お姉さんは手元の資料を読みながら内容を続ける
「こういったケースでは屋敷を売却するか解体して更地にしてしまうのがセオリーですがいかんせん主の魔導士がかけた魔法が強力でして如何なる方法を使っても屋敷を解体する事が出来ませんでした。
また、屋敷の中には何箇所か危険な罠が確認されており一般人では危険な場所ですので屋敷を売ることもできません。」
そう言ってお姉さんは屋敷の見取り図と罠の配置が事細かに書かれた紙を渡してくれた。
んー?見た感じ上からタライが落ちてくるというコントのような罠から致死性の毒ガスが壁から噴射されたり、壁が迫ってきたりする本気で人を殺しにきている罠まであるらしい。
まあ、基本的にそういった罠はここを訪れた
しかしそんな建物なんて掃除もせず放置でいいんじゃないだろうか?
「そう考えるのが妥当だと思いますが、斡旋所内の上役の間でこの屋敷を初心者のダンジョン攻略の研修施設にするという話が出まして屋敷を掃除してくれる方を探していたのです。」
そう言って肩を竦めるとお姉さんは私に箒や塵取りなどの掃除用具を渡してきた。
宝探しとかではなく純粋に掃除をして欲しかっただけらしい。
因みにダンジョンは入ったことはないけどフッカいわく「罠とモンスターと浪漫で満ち溢れた場所」らしい。フッカの説明ではよく分からなかったけど、私としては浪漫よりも
それにしても不幸な事故とか物騒な事が書いてあったけど罠がいっぱい仕掛けられた屋敷の掃除をFランクの依頼にするのは少し危ないんじゃないのかな?
それにそれくらい危険が伴うのならもうちょっと報酬を増やしていただいてもいい気がする。
私がその事を斡旋所のお姉さんに尋ねてみると、
「何分研修施設に作り替えるために頂いた予算が少なくてですね…。
依頼料を抑えるにはFランクの依頼にせざるおえなくて…。」
ランクごとに依頼料の最低値が決まっているらしく、諸々の予算を考えると館の清掃に充てることのできるお金はこれ以上捻出できないそうだ。
こっちが気を遣うレベルで謝ってくるお姉さんをみて私はそれ以上何も言えなくなってしまった。
結局報酬は500クレジットのままになった。
まあ、もしかしたら珍しいモノが見つかるかもしれないしクヨクヨしていても始まらない。
掃除用具を小脇に抱えた私は荒れ果てた庭を通り抜けて玄関の戸を開けた。
とたんに中の埃が舞い上がりペストマスクをつけているのにも関わらず鼻がムズムズしてきた。
マスクって名前に付いているのに役立たずかい!!
慌ててペストマスクを外し代わりに口元を布であてがって埃を防ぐと私は中に入った。
玄関と廊下には段差がなく、外国の家はそうなっていると聞いたことはあったが実物は初めて見たので少し興奮した。壁紙のはがれた壁には所々に穴が開いており軽く指で触ってみると埃がびっしりと指先についた。
資料によるとこの建物は地下にはキッチンと倉庫、1階には居間と食堂、2階には書斎や寝室などに使われたであろう小部屋が8個あるそうだ。
小部屋の方が掃除しやすそうなので先に2階から掃除を始めよう。
資料に書かれている罠を避け玄関の真正面にある階段を昇って2階に向かうと廊下が左右に分かれており、1階と同じく床に埃が積層され一歩踏み出すたびに足跡が床についた。
1番近くにあった小部屋を一つ開けると家財道具の類は持ち出されており窓と埃と隅に置かれたガラクタ以外には何も無い部屋だった。
資料を確認するとこの部屋は罠の類は無いようなのでガラクタの処分をして後は普通に掃除してしまえば十分だろう。
なんとなくやる気が出てきた私はガラクタをどう外に出すか考える事にした。
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