第8話 別れ話

会社帰り

圭介は何時もの電車に乗ろうとホームに着くと

そこには一代が立っていた

圭介は一代に話しかけた

「これから帰るの?」

「うん、でも少し寄り道する」

そう言って一代は

いつもと違う圭介と同じ電車に乗り込んだ

圭介とナミ一代は空いている席に一人分空けて横並びに座った


人間とはおかしな物で普通の友達なら真横に座る物なのに返って怪しい関係になるほど

距離を取ってしまうものの様だ


圭介は一代に何処へ行くのか聞いてみたが

一代はハッキリ答えずただ寂しそうな顔を浮かべながら圭介の横に座っている


電車は圭介の降りる駅に着いた

一代は降りない

気になった圭介はいつもの駅で降りず

一代と共に次の駅に向かった

駅に着くと二人はホームに降り立った

そして一代が圭介に話がある事を話し

健太はとりあえず二人だけになれる

特急電車に乗る事にした


特急電車が吉野に向かって走り出した

ナミは高校時代から永く付き合っていた彼氏に

別れを告げた事を圭介に話した

その時圭介は何か責任の様な物を感じ

自分も早く優香と別れなければならないと

再び強く心に思った


二人は特急電車の中で寄り添い合い

その少しの時間に幸せを感じ

深く愛している事を再確認した


少しの会話だけで二人は満足だった

この時間が止まればいいのにと願った


しばらくして終点の吉野駅に電車が着いた

二人は駅に降りて

また新たに特急券を買って同じ特急電車に

乗った

二人は寄り添いながら帰りの電車に揺られ

自宅の方に向かった

往復で1時間もかからなかっただろうか?

電車は圭介が降りる駅に到着し

圭介は電車を降りた

幸せだった瞬間と

また寂しくなる瞬間

お互い軽く手を振りながら

走り出す電車の中の一代 を見送った


圭介は残業を終えて帰ったフリをして

家に着いた

優香がこう言った

「今日は早いね?どうしたの?」

圭介

「え?いつもと同じだよ!?」

圭介は時計を見た

18時10分

実は一本早い時間に着いた事に気付いていなかった

残業を1時間して帰れる時間では無かったのである


圭介は少し慌てながら部屋に入った

優香が訪ねる

「なぁ何処へ行ってたの?高田のデパート?」

「そうそう!」圭介は不意に嘘をついた

何か怪しそうな顔をしながら優香は

「ふぅーん」と言った


圭介は一代が彼氏と別れた事を思い出し

優香に真実を話す事を決意しのだ

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