第五節 終幕

「腕を上げたな、ゲルハルト。まさかたった数度で、見切るとは」


 決着が付いた後。

 アルフレイドと妻は、地面に降り立っていた。


「いや、まだまだだ。見切れはしたが、使いこなせなくては意味がない」


 ゲルハルトとパトリツィアもまた、Asrionアズリオンを元いた場所に戻し、地面に降り立っている。


「だから、まだまだ付き合ってもらうよ。父さんの本気、もっと見たいからさ」

「ボクは付き合うよー」

「お前じゃない、父さんだ」


 目の前で夫婦めおと漫才を繰り広げるゲルハルトとパトリツィアを見て、アルフレイドと妻は微笑する。

 しばしの間をおいて、アルフレイドは答えた。


「ああ、お前が満足するまで何度でも付き合おう、ゲルハルト。また来るがいい」

「私も共に、待っております」

「ありがとう、父さん、母さん。それじゃ、今日はこれで」


 ゲルハルトとパトリツィアは、“天界”の入り口へと向かう。

 そして、“天界”から姿を消した。


 二人が去った後、アルフレイドはポツリと呟いた。


「ゲルハルト。“守護神の御子みこ”としての自覚に目覚めだした頃だな。そんなお前を鍛える事こそ、私の新たなる使命」

「その使命、私も付き合います。あなた」

「ああ。頼むぞ」


 息子ゲルハルトの今後の成長を期待したアルフレイドは、笑みを浮かべたのであった。


     *


 ベルリール城の一室に、ゲルハルトとパトリツィアは戻ってきていた。


「戻ってきたか」

「たった5分だねー。けどさっきの戦いは、何倍もの時間に感じたよ」

「地上と“天界あちら”では、時間の流れが異なるのだろう。ともかく、今日の特訓はこれで終わりだ。だが、明日からはもっと多くの鍛錬を積む。忙しくなるぞ」

「いいよー、ボクはゲルハルトと一緒なら何だってー」

「ならば何も言うまい」


 そう言い終えたゲルハルトは、部屋の外にでる。

 パトリツィアもまた、後に続いていった。




 ここから、二人の長きにわたる特訓が始まるのであった……。






(了)

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魔導騎士(ベルムバンツェ)~ゲルハルトの鍛錬~ 有原ハリアー @BlackKnight

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