第四節 決着

「大盾は大剣とほぼ同様に扱える。だが、元々武器として存在する大剣とは違い、大盾は元来、防具として存在している。それゆえ、自由な扱いやすさでは大剣が勝るだろう。しかし、並外れた硬度と鋭利な縁という要素が合わされば、十分に武器として、それも剣や槍として扱える。まずは我が技、受けてみよ」


 言葉の後に、アルフレイドが右手を勢いよく突き出す。

 大盾を握り込んでいたそれは、槍となってゲルハルトのAsrionアズリオンに襲い掛かった。


「ッ……!」


 とっさに機体をひねって致命傷は回避したものの、完全には避けきれずにダメージをもらう。


「まだまだ!」


 アルフレイドの連撃は止まらず、左手の大盾による斬撃が飛んでくる。

 ゲルハルトもただやられるだけにとどまらず、完璧に防御する。


「よく防いだ。だが、これで終わりだと思うな」


 しかしアルフレイドは、それすら見越していた。

 自身のAsrionアズリオンの左手を急速に捻り、先端をゲルハルトのAsrionアズリオンの機体中央に寄せると、一気に左に振って弾き飛ばす。


「くっ、また大盾が……!」


 ゲルハルトのAsrionアズリオン持つ大盾のうち、右手にあるものが遠くへ飛ばされた。またしても、武器を奪われたのである。


 さらにアルフレイドは間髪入れず、左手の大盾も奪い去った。

 もはや、ゲルハルトのAsrionアズリオンを守るものは何も無い。


「敵の武器を使用不能にするには、壊すだけではない。このように手元から弾き飛ばせば、使えなくなる。当然拾いにかかるだろうが、そんな真似をさせるとは思わない事だ」

「そういう手もあったか……。今までは、武器自体の強度に任せて壊していたな」

Adimesアディメス結晶程度では、それで十分だろう。だが、それを上回る材質の武器が作られた時、やがて単純な破壊は困難になる事が予想される。ゆえに、必ずしも破壊を伴わない方法で敵の武器を封じる方法を教えたのだ」


 アルフレイドは油断なく、愛機に大盾を両手に構えさせながら、ゲルハルトをまっすぐ見据える。


「さて……これでお前の残る武器は、左腰に付けた大剣が一振りだけだ。手に取れ。そして、かかってこい」

「言われなくても……!」


 ゲルハルトの戦意はまだ、残っている。

 左手でつかを取ると、両手でしっかりと握り込んだ。


「一刀流の戦い方は久しぶりだな……。どこまでやれるか」

「やるしかないでしょ、ゲルハルト」

「ああ」


 真正面に大剣を構えた、ゲルハルトのAsrionアズリオン

 ゲルハルトの言葉とは裏腹に、構えは堂に入ったものである。


「ふむ、なかなかさまになっているな。さて、その力、見せてもらおうか!」


 アルフレイドは自身のAsrionアズリオンに、2つの大盾を構えさせる。

 そしてそのまま、再び突撃した。


(……)


 しかし、迫るアルフレイドのAsrionアズリオンを見て、ゲルハルトは妙に落ち着いていた。


「流石は父さん。前進する際も、構えに隙がまったく無い。けど、もう見切ったよ。必ず隙が生じる、それは……」


 アルフレイドのAsrionアズリオンが、攻撃の予備動作として右腕を振り上げる。


「そこだ!」


 隙とも呼べないほど一瞬の隙であったが、ゲルハルトは見逃さずに大剣をねじ込む。

 切っ先に大盾の先端が触れ、引っかかった。


「この僅かな時間で見切ったか!」

「うおおおおおおおおおおおっ!」


 ゲルハルトは大剣を引っかけたまま、一気に左に振り抜く。アルフレイドのAsrionアズリオンから、大盾が一つ奪われた。


「ならば……ッ、速い!」


 アルフレイドは冷静に対応するが、ゲルハルトはそれすら許さず、左手の盾も弾き飛ばす。

 予備のつかを握る頃には、既にゲルハルトのAsrionアズリオンは大剣を大上段に構えていた。


「ありがとう、父さん」

「フッ……」




 そしてそのまま大剣を振り抜くと、アルフレイドのAsrionアズリオンの頭部は、あっさりと斬り落とされたのであった。

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