第1章
第8話
それから何日か経って僕がギルドで依頼を探していると‥‥何やら頭の上にずっしりと重く柔らかいものがのしかかりその上から声がした。
「やっほ~プラムく~ん?今日も依頼探してんの~?」
「メリルさん‥‥その、重いです。」
「ん~?なぁにが重いのかな~?ちゃんと言ってくれないとわかんないなぁ~っ。」
困惑する僕の様子を楽しむようにメリルさんはその豊満すぎる胸をぐいぐいと僕の頭に押し付けてくる。周りの冒険者の人たちの視線が痛い‥‥。
「いじわるすると嫌いになっちゃいますよ?」
「えっ!?それはヤダからやーめよっと。」
ようやく僕の頭からメリルさんの胸が離れる。そして少しつまらなさそうな顔をしながらメリルさんは僕の正面に向かい合うように座った。
「もう仕事は終わったんですか?」
「もちのろ~ん!!だからこうやって~愛しのプラム君とお話してるのっ」
このメリルさんという人はこの冒険者ギルドのギルドマスターで僕がアマチュア冒険者だったころからいろいろと面倒を見てくれていた。だから最初の頃は面倒見のいいお姉さんって感じだった‥‥のだけれど最近はこういう少し過激なボディータッチとか、少し恥ずかしいことを言って僕のことを困らせてくる。まぁもう慣れたものだけど‥‥。
「‥‥僕なんかよりずっといい男の人なんていっぱいいるじゃないですか。」
「え~いないよ~、プラム君みたいに可愛くて~‥‥面倒見がいのある男の子なんてここにはいないっ!!私が宣言するっ!!」
ふんすっと大きな胸を張りながらメリルさんはギルド内で大きな声で宣言をした。聞いているこっちが恥ずかしくなってくる。
「あれれ~?プラムく~ん‥‥お顔真っ赤だよ~?何か恥ずかしいことでもあったのかな~?」
思わず顔が真っ赤になってしまっていたらしく、それを見たメリルさんが僕のことをからかってくる。
「もう!!いいですっ邪魔しないでくださいっ。」
「んふふ~恥ずかしがってるプラム君を見れて眼福眼福~‥‥。あ、プラム君に見とれすぎて忘れるところだった。はいこれっプラム君がゴールドランクに昇格するための討伐依頼ね。」
メリルさんは胸の間から折りたたまれた依頼書を取り出し僕に差し出してくる。手に取ったそれは生暖かかったけれど気にせず中を開いて内容を確認する。
「グリーンドラゴンの討伐‥‥これを単独で行うこと。報酬はゴールドランクへの昇格‥‥。ようやく昇格依頼とれたんですね。」
「うん、ただね~‥‥場所が場所なのよね。」
「場所?えっと‥‥」
メリルさんが気にかけているその場所を確認するために再び依頼書に目を通すとそこには‥‥。
「‥‥龍脈の大地。ここって確かエンシェントドラゴンが目撃されたところですよね?」
「うん、しかもそこの赴いた調査隊も帰ってきてないから本当にエンシェントドラゴンがいるのかも不明確‥‥現状トップクラスに危険なところ。」
エンシェントドラゴン‥‥龍種の中でも何千年と生き力を蓄えた存在のみがそう呼ばれる。つまるところの龍種最強。事実上のこの世の全ての生物の頂点。
普通の人ならそれがいるかもしれないと聞いただけでその場所に行くのを諦めるけど‥‥。
「これ、期限はいつまでですか?」
「っ!!まさか行く気なの!?」
「当たり前じゃないですか。僕は早くゴールドランクになってお父さんとお母さんを養いたいんです。」
そのためには多少の危険なんて‥‥目じゃない。
「はぁ‥‥まぁそう言うとは思ってたけど、取りあえず私から一つだけ言わせてもらうよ。もし、何か変な感じがしたらすぐに引き返すこと‥‥わかった?」
「わかりました~。」
「あと、一応期限は竜脈の大地からグリーンドラゴンがいなくなるまでだから‥‥まぁ気長に考えて大丈夫かな。」
龍種は一度そこに居つくと何年間かはその場所を離れない。だからこの依頼の期限はかなり長いものだと考えてもいいかもしれない。
「ねぇプラム君‥‥今ならまだ引き返せ‥‥ってもうサインしちゃったの!?」
「え‥‥だって今はこれしか昇格依頼無いんですよね?ならもう迷うだけ時間の無駄です。」
依頼書の上にコトリとペンを置き、サインをした依頼書をメリルさんに差し出した。
「シルバーランク冒険者プラムはこの依頼を受諾します。‥‥っていうことで後はお願いしま~す。」
ポカーンと呆けるメリルさんを残して僕はギルドを後にした。そしてお父さんとお母さんに危険な依頼を受けてくることを知らせるため家へと急ぐのだった。
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