第5話
それから数年後‥‥
「ただいま~っ!!」
「おうプラム!!今日は早かったな。」
「お帰りプラム、怪我はないかい?」
家に帰ってきた僕をいつものように暖かく迎え入れてくれたのはダンおじさんとナターシャさん。今の僕の両親‥‥つまりお父さんとお母さんだ。
「今日は簡単な依頼だけだったからすぐ終わったんだ~。もちろん怪我もしてないよ?」
今の僕は二人を支えるため‥‥そしてある目的のため冒険者という職業に就いた。冒険者はいわゆる魔物討伐の専門家で弱い魔物や強い魔物の討伐を行って報酬を得る職業だ。
冒険者になりたての頃はゴブリンやスライムの討伐を任され、慣れない戦闘で怪我を何回もしてきてはお母さんに怒られていたけれど‥‥今ではもう魔物の動きがわかってきて攻撃を喰らう事のほうが少なくなっていた。
「そうかいそうかい‥‥安心したよ。ほらご飯もう出来てるから手を洗ってきな。」
「は~い。」
お母さんに言われた通り手を洗いに行く。井戸から水をくみ上げ、きれいな地下水で手を洗い、再び二人の元へと戻るとすでにテーブルの上にたくさんの料理が並べられていた。
「今日も美味しそ~‥‥あっ!!シチューもあるっ」
シチューは僕の大好物だ。特にお母さんのはたっぷりチーズを使ってるから濃厚でとても美味しい。
「プラムはシチューが大好きだからねぇ~。さっそんなとこでよだれ落とす前にこっちに座って食べようじゃないか?」
「うんっ」
いつもの席に座りみんなで食卓を囲み食べ始める。いつものように美味しいご飯を食べているとお父さんが僕に質問をしてきた。
「プラム、今日は何を倒してきたんだ?」
「今日?うーんと‥‥オーク10頭にゴブリンキング一匹‥‥後は数えきれないぐらいゴブリンを倒したかな?」
今日の依頼はゴブリンキングが作った巣の殲滅だった。意外と共生してたオークも少なかったし、一時間ぐらいで全部倒し終わっちゃったんだよね。
「ゴブリンキングも倒したのか!?そいつってあれだろ?枯れ山‥‥あ、いや今は枯れてねぇか、まぁあっちのほうに巣くってたやつだろ?」
「うん、そうだよ?あっちまで行くほうが時間かかっちゃって大変だったよ~‥‥」
噂では僕が生まれた村もそのゴブリンキングに襲われたって聞いたけど‥‥まぁ今の僕には関係ないかな。
何気ない会話を挟みながら食事をしていると、家のドアがコンコンとノックされた。最近は宿屋としての営業はやってないから来客なんて本当に珍しい。それにこんな夜中に来るなんて‥‥
「ん?こんな夜中に来客か?」
「そうみたいだねぇ~‥‥ま、ちょっと出てくるよ。」
お母さんは一人立ち上がりドアのほうへと向かう。その様子をお父さんはただ眺めるだけだったけど、何か胸騒ぎがした僕は腰に差した短剣に手を添えながらお母さんの後ろを着いて行った。
「は~い?こんな夜中に何の用‥‥」
ガチャリと扉を開けるとその先には深いフードを被った気味の悪い男がいた。そしてその懐にはキラリと中からの明かりを反射する何かが‥‥
「呪い子を匿う咎人共が‥‥死ねぇッ!!」
「させないよ‥‥」
狂気じみた怒声を響かせながらお母さんへとナイフを突き出した男。
そのナイフはお母さんに届くことなく僕が短剣を抜いて受け止めた。
「~~~ッ!!プラムゥゥゥッ殺してやるッ!!」
「お母さん下がってて!!」
ひとまずお母さんの安全を確保してから、僕はその男と向き合い問いかける。
「僕を知ってるってことはあの村の人だね?」
「殺すッ‥‥殺すッ‥‥殺すゥゥゥッ!!」
問いかけに返ってきたのは殺す‥‥という言葉だけ。さて、問いかけにもまともに答えないなら、もうこのままでいる必要もないよね。
「ふっ!!」
「がっ‥‥ぐッ」
ナイフに力を込めるのに夢中でがら空きだったお腹を蹴飛ばす。すると男は数メートル程吹っ飛び腹部を押さえて崩れ落ちた。
「ふぅ‥‥危なかったぁ~。」
悪い予感って当たるもんだね。僕がお母さんの後ろに着いていかなかったら危うくお母さんがナイフで刺されちゃうところだったよ。
クルリと男に背を向けお母さん達の方へ歩みより、声をかけた。
「僕、ちょっと用事ができちゃったから外に出てくるね?」
「ぷ、プラム‥‥大丈夫なんだろうな?」
「もっちろん!!お父さんこそお母さんのことちゃんと守っててよね。あ、後今日は僕以外の人が来たらドアを開けちゃダメだよ?」
「あぁ、わかった。気を付けろよプラム。」
「うん、それじゃ行ってきます。」
お父さんとお母さんに見送られ僕は暗くなり始めた外へと出た。そして先ほど気絶させた男の近くに歩み寄る。
「‥‥‥‥そっちがその気なら僕もやらせてもらうからね。」
気絶させた男の頭を掴みスキルを使う。
「ドレイン」
ドレインで男の全てを吸い上げ、そこには男が着ていた服だけが残った。そして男の記憶からあの村がゴブリンキングに襲われていたのが本当だったことを知る。
更にその村の生き残りの人たちが僕のことを殺そうとしていることも‥‥。
「さて、じゃあ終わらせに行こうか。」
男の記憶からこの街のとある場所に生き残りの人達が集まっていることを知った僕はそこへ向けて歩みを進めるのだった。
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