第2話

 自由‥生まれてからこの方僕にはそんなものは与えられなかった。突然やってきた自由を掴むチャンスに初めて僕は胸の高鳴りを感じていた。だけどいつまでもこの感覚に浸っているわけにはいかない。朝になったらあの村の人たちが来るかもしれないから急いでここを出ていかないと。


「もうこんなところに入れられるのは嫌だもんね。」


 せっかく手に入れた自由を手放したくないし早くここを離れよう。でもその前に‥‥


「この人たちいろいろ持ってるからもらっていこうかな。」


 さっきドレインした男たちの持ち物を漁り、お金や服、食料、武器を手に入れる。もうこの人たちには必要のないものだから僕がもらってもいいよね。


「うーん‥この武器は持って行けそうにないなぁ。邪魔だし、何より目立っちゃうね。」


 リーダーの人が装備してた大斧は目立ちすぎるから持って行けそうにない。仕方がないからもう一人の人が持ってた短剣を装備して行こう。これなら目立たないし、軽いし使いやすそう。


「えっと、この人たちはどんなスキルを持っていたのかな?」


 ドレインで吸い取ったものを確認するために僕はステータスを確認する。


「ステータスオープン」


名前 プラム

年齢 12歳

状態異常 怠惰の呪い

称号 搾取者


HP  5400

MP  2000

物攻  3000

物防  1500

魔攻  1300

魔防  800

素早さ 750


スキル


剛力 Lv5

斧術 Lv4

短剣術 Lv2

鑑定 Lv2

夜目 Lv3

ドレイン ユニーク


「ほぇ~‥鑑定って便利~。それに狙い通りあの人たちのスキルも吸収できてる。」


 斧スキルのほうがレベルが高いけど‥まぁ短剣スキルも少しあるからやっぱりこっちでいいや。短剣を腰に差してゆっくりと立ち上がる。


「まずは近くの街まで歩いていけたらいいな~」


 あの人たちの記憶によれば少し歩いたところにそこそこ大きい街があるらしいから一先ずそこまで行きたい。まず近くの街を目標地点に定めた僕は長い年月を過ごしたのに何の愛着もない洞窟を後にして自由への一歩を踏み出した。





 洞窟を出て木々が枯れた森を歩いていると、どこからかちょろちょろと小川が流れるような音が聞こえた。


「こんな枯れてる森でも川って流れてるのかなぁ?でも、もしあるなら体を洗いたいよね‥」


 正直な話今の僕の体はとてもじゃないけれど綺麗とは言えない。なんせ幽閉されている間は体を洗うことなんてできなかったしね。そして音が聞こえる方向へと歩みを進めていると小さな小川を見つけることができた。昨日外から雨音が聞こえてたから、それでできた川かな?それでも今の僕にとってはありがたい。


「やった!!久しぶりに少しは体洗えそう。」


 ぶかぶかの服を脱いで小川の近くに畳んでおいて僕は小川にゆっくりと足を浸けた。


「~~~ッ‥つめたっでも我慢しないと」


 足を浸けた川はとても冷たく長い間浸けていたら感覚がなくなってしまいそうだ。それでも我慢して冷たい水で汚れた体を洗う。水をかけて軽く手でこするだけで黒ずんだ汚れが落ちてだんだんと元の白い肌が露わになってくる。


「~♪」


 昔聴いた歌を鼻歌で歌いながら体を洗っていると突然僕の周りでずるずると何かが這うような音が聞こえた。周りをよく見渡してみるとぷよぷよとしたまん丸い何かがこの川に何体も集まってきているのが見える。


「あれ?これって‥もしかしてスライムってやつだよね‥‥」


 なんでこんなところに集まってきてるんだろ?疑問に思って少しスライムのことを観察していると、スライムたちが僕のせいで汚れた川の水を吸い上げているのが目に付いた。もしかして‥ご飯を食べに来てるのかな?

 そんなスライムたちの奇妙な行動を観察していると、一匹のスライムが僕のほうににじり寄ってきた。そして僕の前でひっきりなしにそのプルプルしている体を震わせている。


「‥‥‥」


 まさかと思い、まだ洗っていなかった頭を彼らの前にすっと差し出すとそのスライムがぴょんと僕の頭の上に乗り、もちゅもちゅとうごめき始めた。


「おぉ~‥なんか変な感じ~」


 そして少しすると真っ黒になったスライムが僕の頭から飛び降りてきた。満足したのか真っ黒になったスライムは再び森の中へと消えてしまう。


「ん~!!さっぱりしたぁ~‥‥僕の髪ってこんなに白かったっけ?覚えてないや‥‥」


 久しぶりに体もさっぱりしたし、そろそろ街に向かって歩き出さないとね。再びぶかぶかの服を着て街へ向かって暗い山道を歩き始めるのだった。

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