呪いでスキルが一個しかないのでみんなから【ドレイン】で分けてもらうことにしました。
しゃむしぇる
序章
呪い子‥‥数多く生まれる人間という種族の中でごく少数呪いを持って生まれてくる子供がいる。僕もそのごく少数の中の一人だ。そんな人間は普通の人からどんな扱いを受けるかは想像に難くないと思う。もちろん呪いを持って生まれた僕も村の人たちからひどい扱いを受けている。村から少し離れた洞窟に作られた檻に幽閉され、ご飯は三日に一回ぐらい、しかも腐っているものを与えられる。最悪でしょ?
そして今日も僕に腐ったご飯を食べさせるために村の大人がやってきた。
「おら飯だ。それ食って早く死にやがれ呪い子め‥‥」
その人は乱暴に檻の中に腐ったご飯を置いて、愚痴を言いながら足早に去っていった。一秒でも早くこの場所から離れたかったのかな?
僕はその人が去ったあと、与えられた腐ったご飯の匂いを嗅いだ。いつも通りの最悪な臭いのほかに少し薬品のような臭いもする。どうやら今回は毒を混ぜ込んでいる特別製のご飯らしい。
「‥‥‥」
洞窟に住み着いているネズミにそれを与えてみると、食べてからすぐにバタバタと苦しそうにもがきながら泡を吹いて死んでいった。
「強力な毒‥今回は本気で殺しにきてるなぁ」
そろそろ本気で村の人たちは僕に死んでほしいみたい。まぁあの村の人たちは呪い子なんていても災厄しかもたらさないって思ってる人の集まりだから‥仕方ないかな。
「今日もご飯は食べれそうにないか‥仕方ないね。」
やれやれと、自分の境遇を呪いながら僕はひんやりと冷たい地面に手を当てて、目を閉じた。
「ドレイン」
そう唱えた瞬間に大地から温かいものが僕の手を通して体中に流れ込んでくる。この温かいものの正体はこの周辺の大地の生命力。ここに幽閉されてから毎日僕は腐ったご飯を食べる代わりにこれを大地から吸い取って生きてきた。
実を言えばこのスキルこそ僕が呪い子である理由なんだ。僕はこのスキル以外のスキルを自分で覚えることができない呪いにかかっている。だからいくら剣の鍛錬なんかをしても剣術スキルなんて身につかないし、魔法の練習をしても魔法が使えるようにはならない。他人に迷惑をかけるような呪いじゃないはずなんだけど‥呪い子は災厄をもたらすって言いがかりをつけられてここに幽閉されている。
「ふぅ‥いつになったらここから出られるかなぁ」
いつも通り生命力を吸収した僕は冷たい地面にごろんと寝転んでぼやいた。その時が意外にも間近に迫っているとは知らずに‥
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日が落ちて暗くなり始めたころ‥僕が幽閉されているこの洞窟に思わぬ来客が来た。
「あっ?お頭ぁこっちに洞窟がありますぜっ」
「でかしたバール!!今夜はここでやり過ごすぞ」
いかにも盗賊といったなりをした二人の男が僕のいる洞窟の中へと入ってきた。そして奥に幽閉されていた僕に気が付いた。
「あぁ?こいつぁ‥なんだ?こんなところにガキが閉じ込められてやがるぜ」
「俺ら以外の賊がとっ捕まえてたんですかねぇ?」
「へっ!!関係ねぇよこの辺で俺にかなう奴なんざいねぇからな。それにこのガキをよ~く見てみやがれ、ちょっと磨きゃあ悪趣味な貴族サマに高く売れそうじゃねぇか」
あぁ‥‥なるほどこの人たちは僕のことをどこかに売り飛ばそうとしてるんだ。僕が呪い子だとも知らずに‥
「さ~てぇ?じゃあ貴族サマに売る前にちょこっと奉仕について教育してやるとすっかぁ~」
「そんなこと言ってホントは自分が楽しむつもりっすよね?」
「う、うっせぇぞバール!!」
そしてリーダーらしき大男は僕が閉じ込められていた檻をいとも簡単に破壊し、下卑た笑みを浮かべながら近づいてくる。
「へへっ‥さぁ楽しもうぜ?お嬢ちゃんんん!!」
僕のことを女の子と勘違いした男は鼻息を荒くしながら僕を抱きしめ、脂ぎったいかつい顔を近づけてくる。そんな異常な状況の中、僕は思わず笑みがこぼれてしまっていた。
「ふふっ、ドレイン‥‥」
「なっ!?なん‥‥だ‥こ‥れ」
ドレインを使うとみるみるうちに男は干からび、やがてその場には男の服だけが残った。そう‥‥僕が彼を全部吸い取ったんだ。彼の知識、ステータス、生命力、スキルさらには記憶まですべてを吸収した。
その光景を目の当たりにした先ほどの男の部下の男は腰を抜かしその場にへたり込む。その男に僕はゆっくりと近づく‥
「ひっ!?くっ‥来るなッばっ化け物ォっ!!」
ずりずりと這いずりながら逃げようとする男の足首を掴み捕まえると、彼はじたばたと暴れて抵抗を始めた。だが今の僕は手はびくともしていない。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をぶんぶんと横に振りやめてくれと懇願する男を無視してドレインを使った。
「かっ‥‥たす‥けっ‥て」
ものの数秒で彼も吸い尽くされ衣服だけが残った。これで彼の全ても僕のもの‥‥そしてもう僕をここに縛り付けるものは何にもない。
「あはっ‥‥あっはははは!!これで‥僕は‥‥自由だっ!!」
ようやく手に入れた自由をかみしめながら僕は洞窟の中で初めて心の底から笑った。
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