6 聖女の親友達、突き進む
「ボス。お前の言いたい事も分かる。実際良くねえ事が多いだろうな」
そう言ってマルコは頷くがそれでも反論する。
「だがそいつは本当にケースバイケースだ。関わらせない方が良かった、なんて事も今まで何度だってあっただろ。知らねえ方がお互いの為だったってな」
そして、とマルコは言う。
「最初から最後まで関わって、頭抱えて出した答えでもうまくいかねえってのに、あの聖女に関しちゃ俺達はまともな判断材料を持ってねえ。現状それを持ってるのはこの馬鹿だけだ。コイツが関わらせない方が良いと言ってるならその可能性が高いだろ」
「……」
「とはいえ俺達のボスはお前だ。お前が異を唱えるなら俺達はお前に従うが」
「…………選択肢がねえんじゃなくて、自分の考えでそっち側じゃねえか」
クライドは軽く頭を掻きながら溜息を吐いて言う。
「マコっちゃんの言ってる事は一理ある。比べて俺のは……ただの感情論か」
そして一拍空けてから、腹を括るように間を空けてクライドは言う。
「よし、お前ら。これは命令だ。あの聖女に勘付かれないようにうまくやってくれ」
……命令。
(これによって反対していた筈の人間が一気に事の責任者になった。レリアさんを見えてもいないのに……凄いなこの人は)
おそらく意図して命令という言葉を使ったクライドにルカが関心していたところで、クライドは続けて言う。
「で、これはマコっちゃんが3つ目の質問として挙げようと思った事なんだろうが……流れでこのまま俺が聞くぞ」
そしてクライドはシエルに……シエルを通じてレリアに問いかける。
「アンナ・ベルナールに気付かれないように事を進める、なんて形で話が進んでるんだ。それはつまり実質的にアイツらが返ってくる前にケリを付けるって事だよな……できるのか?」
「できる」
そう答えたのはレリアだ。
「できるそうですよボス」
「そうか……どうやって?」
「それはじゃな──」
「ストップレリアさん」
レリアの言葉をシエルが遮る。
「どうしたのじゃ?」
「役一名聞こえない人が重要人物だからちゃんと伝えないといけないけど、このままじゃテンポ悪いし……使ってよ、ウチの体」
「おい馬鹿、そんな軽々と──」
「別に大丈夫だよマコっちゃん」
シエルは平然とした表情で言う。
「既に何度も体貸してるし、これから本気でやってこうってなったら基本はこうだよ。とりあえず皆の前で予行練習も兼ねて、ね」
「……おい、コイツに妙な真似したらマジでブッ殺すからな!」
「せんせん。心配しすぎじゃ。それじゃあ使うぞ」
「どうぞどうぞ」
言いながらレリアがシエルに触れた次の瞬間、レリアの姿が消滅する。
否、シエルの中に入ったのだ。
「さ、これでやりやすくなったの」
シエルの声音、レリアの口調の声が周囲に響く。
「確かにこれで俺も会話に参加できるようになったが……その体の奴の事を良く知っている分違和感が凄いな」
「いやーウチも貸してるの違和感凄いんだよね。金縛りにあって体が勝手に動いてる感じ」
「し、シエルさん普通に喋れるんですか?」
「その気になればね」
ミカの言葉にそう答えるシエルだが、再びレリアの口調で言葉を紡ぐ。
「おい、今はその気になるな。その気になられるとワシは動けんのじゃから!」
「あーごめんごめん。ちょっと黙るね」
……聞いた話によるとシルヴィに乗り移った際はほぼ完全に体のコントロールを奪えていたようだが、自主的に貸してる影響なのか相性の問題なのか、シンプルにシエルという人間が凄いのか。とにかく主導権はシエルにあるらしい。
「……」
その事実に、あまりにも露骨に安堵の表情を浮かべるマルコを一瞥してからルカは問いかける。
「それで、どうやって短期間で事を解決するんですか?」
「シンプルイズベストじゃ。簡単なやり方がある」
そしてシエル、もといレリアは得意気に言う。
「アンナの父親の現在地を魔力を辿って探知して、そこに転移魔術で飛んで叩き潰す。分かりやすいじゃろ」
シンプルかつ……あまりにも滅茶苦茶なやり方を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます