7 偉人の魔術師達、襲撃作戦
(……本気で言っているのかこの人は)
あまりにも簡単に言ってのけたレリアの言葉にルカは戦慄する。
一応自身も空間転移の魔術の使い手であるが故に、その発言があまりにも常軌を逸していると、そう思えてならない。
だからこそ、思わず問いかける。
「……そんな事が出来るんですか?」
分かっている。
できるから言っているのだという事は。
だがしかし、それでも空間転移の魔術の難しさを知っていると受け止めがたい。
例えばアンナ・ベルナールはシズクの自宅と自宅までの間を移動できる空間転移の陣を築いているそうだが、あれは予め設定した地点Aと現在地を移動する事に限定しているが故に、どちらのポイントにも実際に足を運ばなければならない。
ミカがルカの元へと飛ぶ空間転移も、今現在もルカに供給されている力を辿って飛ぶというやり方だ。明確な繋がりがそこにはある。
そうでないやり方であれば精々が十数メートル程度の移動が限界となってくるだろう。
これがルカでもやれるやり方……ルカでも常識の範囲内だと思えるやり方だ。
だけどレリアは違う。
「この空間に残った魔力の痕跡で、世界中から約一名の居場所を炙り出して、そこに到着地点の転移魔術の陣も事前に組まずに飛ぶ。本当にそんな事が……」
「できる。流石に半日程時間は掛かるがの」
「……」
即答だ。
それも半日。
世紀の大魔術と言っても良いそれを、たったの半日で。
やはり……話の流れを途切れさせるように発言するのもおこがましかったと感じる程の差が、現代を生きる魔術の研究者とレリアの間には。
自分と彼女の間には存在する。
(素直に凄いで良いだろ。凄い人が凄い事をやって事態が好転する。良いじゃないかそれで……)
「……す、凄いですね」
ルカから転移魔術を教わっていたが故に凄さが正しく理解できるであろうミカもそう反応する。
(そう……凄いんだこの人は。俺と違って)
内心でそう呟いてから、そんな考えを掻き消す。
(変な事を考えるな……俺の事なんてどうでも良いだろう)
それよりも、これからの事だ。
「レリアさん。それでその術式で、何人程移動が可能なんですか?」
最早どういう理屈でなんて事は聞かない。
詳しいプロセスを聞いたところできっと自分程度には理解できないだろうし、そんな事よりももっと建設的な話をするべきだ。
……此処から先、こちら側が勝つ為の話。
「良い質問じゃ。この術式で飛べる人数はワシとこの娘で一人換算で考えて6人じゃな」
だから、とレリアは言う。
「場合によっては黒幕をこっちに連れてくる事になる事を考えると、突入メンバーはワシら含め五人という事になるの」
「五人……か」
マルコは小さく呟いてから言う。
「つまり半日間の間にカチコむ面子残り四人を決めろって事だな」
「そうなるの。まあ内二人は決まっているような物だと思うのじゃが」
そう言ってレリアはミカに視線を向ける。
「そこの聖女と、こんな大事な時にこっちに参加する訳でもなくアンナ達の方に行く訳でもなく、何故かバイトに勤しんでる聖女……ステラじゃったな。この二人は内定じゃ」
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