7 聖女さんと馬鹿、バチバチ 上

「な、なんか急にバチバチとした空気になったっすね……」


「ここ最近結構修羅場潜ってきましたけど、なんか若干違うベクトルで修羅場って感じしますよ……一触即発というか……」


 シズクとシルヴィが戦々恐々とした様子でそう呟いた時、少し遅れてロイとミーシャが部屋へとやって来る。


「ほんとですよ! アンナさんはともかくなんでグラン様までそんな喧嘩腰なんですかぁ!」


「少なくとも今回は間違いなくグランが悪いのですから、もう少ししおらしくした方がいいと思いますわ!」


 ほんとだよ、何が感謝しろだよ腹立つなぁ。


「やだね。コイツ相手にそういうのは無理だ」


「あ?」


 何言ってんだマジでコイツ。


 と、そこでシルヴィが小声で言う。


「シズクさん。とりあえず何かあったら向こう側はミーシャさん達が抑えてくれると思うんで、私達はアンナさんを」


「そうっすね」


 そしてまるでシルヴィ達とアイコンタクトを取るように、ロイとミーシャが静かに頷いた。


「えっとなに……なんか私の扱いも悪くない?」


「いや自覚無いかもしれないっすけど、今のアンナさんかなりアレな雰囲気纏ってるっすよ」


「人って本当に苦手な相手前にするとこうなるんですね……」


「人っていうかアンナさんがというか……」


「いやいやいや、いつも通りだよ。冷静冷静」


「……ステラさん達が見てもビックリしそうですわね。そこまでとは……あの、ウチのグランがすみません」


「おいミーシャお前どっちの味方だよ」


「この件に関しては完全にアンナさんの味方ですわ」


「ちっ……ロイ、お前は?」


「えぇ!? いや、あの、その……なんて言いますかね…………中立という事で此処は一つどうでしょうか」


「その沈黙どう考えても中立側の奴がするもんじゃねえよ」


 そう言って馬鹿は軽く溜息を吐いてから言う。


「まあそんな風にちゃんと思った事言ったり分かりやすく表現したりしてくれる辺り、やっぱお前らは良いな。多少イラっと来てもまあ良いかってなる」


 そう言って微かに笑みを浮かべた馬鹿は私に向かって言う。


「そういう意味じゃ今のお前はそこまで悪くねえな、アンナ・ベルナール」


「は?」


 急に何を言い出すんだコイツ。


「それだよそれ。その敵意剥き出しな感じは死ぬ程腹立つけど悪くねえ」


「…………まさかドM?」


「んな訳ねえだろ。普通に不快に決まってんだわ。だけどよ……そういうのを隠して平然としている奴の方が気持ちわりいだろ。聖女やってた頃のお前みてえのがな。馬鹿みたいに猫被りやがって」

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