43 聖女さん、帰国の朝 Ⅰ

 あれからある程度の時間を掛けて、無事体調は良好な感じに。

 私完全復活! 二日酔いなんかに負ける私じゃない!


 ……いやまあ100パーセントシズクのおかげなんだけど。

 ほんと助かったよ、この世の終わりみたいな時間だったよ治るまで。

 おかげで約束の時間には余裕で間に合った。


「しっかしほんと、段々抵抗無くなって来たよね此処に出入りするの」


「多分国中探してもボク達位じゃないっすかね。こんな軽いノリなの」


 私達がやって来たのは昨日も訪れたマフィアの事務所。

 今日私達は私の出身国のドルドット王国へ足を運ぶ訳だけど、その際の集合場所として設定されているのが此処だ。

 出発前に何か話す事もあるかもしれないし、そうなったら此処がベストだ。

 防音用の結界を張ればどこでも大丈夫ではあるけれど、そうした事をしない場合は面倒な情報が外に漏れたりする事が無いこの場所が一番良い。


「なんか改めて考えると拠点みたいになってきたっすね此処」


「私達一応冒険者なんだかあ、何かする時の拠点って冒険者ギルドになるもんだと思ったんだけどね。何か変な感じじゃない?」


「拠点にする程冒険者やってないじゃないっすか。まだ依頼消化したのも二回っすよ」


「Aランクだけどね」


「それだけ聞くと滅茶苦茶馴染んでる感出るっすね。ベテランっすよベテラン」


 そんな雑談を交わしながら、事務所の中に足を踏み入れると、まず最初に凄くマフィアマフィアしたビジュアルの男性と顔を合わせる。


「あ、部長。おはようございます」


「おうおはよう…………休み取ったのに出勤してるみたいな気分だなお前と挨拶すると」


「お、休み取れたんすか? 従業員に有給使わせた事をいつも死ぬ程怒られてる部長もついに有給取れたんすか! なんかちょっと感激っす!」


「……有給扱いにならねえだろうなぁ。多分無断欠勤扱いされて死ぬ程キレられる。ああ、くそ。明日出勤したくねえ」


 ……なんでこの人転職しないんだろ。


「つーか心配になってきた。絶対本部から訳分からねえ電話掛かりまくってるよな。皆は此処は任せてたまには休めって言ってくれたけど心配だ……大丈夫かなアイツら……申し訳ねえ……」


 ……うん、これこの人辞められないね、うん。人が良すぎる。

 それはさておき。


「それで、休んでまで此処にいるって事は、多分此処でやる事があるからって事だよね?」


「おう。知っての通りお前らのいない間に、あの地下の調査に入る。マコっちゃん達には休めと言われたが、流石に俺も関わるつもりだ。一応此処の頭張ってるからな……俺だけ蚊帳の外という訳にはいかねえよ」


 ……まあ流石の責任感と言った所かな。

 と、そう関心していた所で部長さんは言う。


「ところで蚊帳の外と言えばよ、なんか俺以外全員レリアとかいう幽霊の姿が見えている見たいなんだが……しかも俺は相性悪くて取り憑く事もできねえらしいし……もしかして俺、今回の件終わるまで一人だけずっと蚊帳の外なのか? 俺だけ見えないままなのかこれ」


 ……なんか不憫だなぁこの人。

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