44 聖女さん、帰国の朝 Ⅱ
流石にあの屋敷に行けば相性良い幽霊も居るから、一回乗り移られてみればどうとは言える訳が無くて。
「ま、まあその内見えるようになるんじゃない。ははは」
「そうっすよ。気にしちゃダメっすよ。ははは」
二人してそんな愛想笑いをする事しかできなかった。
いやほんと、不憫だよこの人。
「……ま、この際割りきるしかねえか。疎外感すげえけど」
ため息を吐いて部長さんは言う。
「俺の目になってくれる奴はありがたい事に大勢いるわけだしな」
お、ポジティブで良いし、凄く良い感じに組織の上の人っぽい。
ちょっと可哀想な感じだけど、これなら大丈夫かな。
「そうっすよ。部長以外皆見えてるんですから。大丈夫っす! 支障ないっすよ!」
「それは個人的に嫌なんだよなぁ……」
……ほんと、ほんと何処に居ても大変だよこの人。
とまあナチュラルにシズクの失言が飛びつつも私達は事務所の奥へ向かう。
「そういえばもう誰か来てる?」
「お姫様と付き人の兄ちゃんが先に来てるな」
「まああの二人真面目だからね。なんとなく予想通り」
待ち合わせ時間のだいぶ早くに来て待ってそう。特にルカ。
「そういえばミカはあれから大丈夫だったっすかね。中々酔ってたっすけど」
「此処に来てるって事は大丈夫じゃない? 私みたいに二日酔いになっててもシズクがやってくれたみたいな事、ルカならできるでしょ。どちらかと言えばステラが心配かも」
「あー一人っすもんね。普通にダウンしてるかも」
シルヴィが送り届けたみたいだけど、多分泊まったりはしてないだろうし、泊っていたらステラの居候先が色々と心配というか……。
「ちょっと心配っすね」
「あとミーシャは……流石に大丈夫か。大人だし」
「お前ら飲み会してたの? ……って疑問は一旦置いておいて、酒癖の悪さというか学習しない奴はいくつになってもしねえぞ」
「「……」」
「……しねえんだ」
これ以上具体的に何があったとかは聞かないけど……誰かこの人助けてあげてくれないかなぁ。
とまあお酒には気を付けようという事で、私達は応接室へとやってきた。
「来たか」
「おはようございます」
中ではとりあえず無事そうなルカとミカがそれぞれソファに座って待機していた。
「おはようっすミカ。えーっと、大丈夫でした?」
「あーうん。後半の方あんまり覚えてない」
「シズクさん。昨日はありがとうございました。無事な人がいてくれてホッとしてます」
ルカがシズクに礼を言ってる。
……まああの状況でシズクとシルヴィが居なかったらどうなってたか分かんないしね。
というかやっぱ慣れない……ルカがシズクには普通に敬語なの。
確かに私達と違ってシズクとはおかしな出会い方はしてないし、ミカの友人だから丁重なのは分かるけど、なんというか……しっくりこない、別に良いんだけども。
そんな風に滅茶苦茶違和感を感じていると、ルカが私に向かって言う。
「ベルナール。これミカ様にも言ったが、今後飲みに行くなら絶対シズクさんみたいな酒に強い奴と飲みに行くようにしろ。間違っても一人でだとか信用できるか分からん奴と飲みに行くな!」
普通に忠告された。
というか……うん、やっぱこっちの方がしっくり来るなコイツの喋り方。
「まあその辺はほんとに肝に銘じておくよ」
「なら良い」
「そういやルカも昨日呑んでたて聞いたけど。いつの間に此処の人と仲良くなったの?」
「まあ色々有ってな。本当に……色々あったんだ」
何やら含みのある感じに言うルカ。
そっちはそっちで一体何が有ったんだろ……お酒って怖ぁ。
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