42 聖女さん、二日酔い

「うえぇ……気持ち悪いよぉ……」


「大丈夫っすかほんと。とりあえず治癒魔術は掛けるんで、ゆっくり水飲んでください。ゆっくりっすよ? 一気に飲むと悪化しそうなんで」


 翌朝。目が覚めると自宅ではなくシズクの家で寝転がっていて、なんだか非常に気分が悪い。

 多分というか間違いなく二日酔いだ。途中から殆ど何も覚えて無いんだけどそんなに飲んだのかなぁ……うう、気持ち悪ぅ……。


「も、もう絶対お酒なんて飲まない……」


「昨日ステラさん達とまた今度飲もーって盛り上がってたのに何言ってるんすか。あとそういう事言ってその後お酒飲まなくなる人見た事無いっすよ」


「いやまあうん……楽しかった気はするしまた飲みに行きそう」


「その時はまた誘ってください。なんか心配なので」


「うん、普通に誘うよ……ところで私、なんでシズクの部屋で寝てるんだっけ?」


 うーん、全く覚えてない。


「これだけガッツリ二日酔いになってる人が超高度な転移魔術なんて使えるわけがないじゃないっすか。そりゃボクの家で泊まる事になるっすよ」


「あぁ……そういう。ありがと」


「どういたしましてっす」


「ところで皆は? 皆は無事に帰れた?」


「ああ、そうっすね。ミーシャさんは宿泊先のホテルがすぐそこだったんで送っていって、ステラさんもアンナさん位酔い潰れてましたけど、シルヴィさんが責任持って送ってくって」


「シルヴィ大丈夫だったんだ」


「ええ」


「良かった」


「ほんとっすよマジで」


 冷静に考えると結構怖い事なんだけど、何もなくて良かったね、うん。


「あとミカは?」


「ああ。なんかたまたまルカさんと鉢合わせたんで預けてしました」


「そっか」


「いやーなんか酔い潰れたマルコさん抱えてましたね」


「あっちはあっちで飲み会か……」


 アイツ少し予定あるって言ってたけど、終わった後飲みに行ってたのかな……マフィアの幹部と? いやまあ協力者同士だから仲が良いに越した事は無いんだけどさ。

 ……この組み合わせで何話してたんだろ。

 ていうかマルコさん、ザ・裏社会のやばい人間みたいな雰囲気だったからお酒とか普通に強そうなイメージあるんだけど偏見だったかな?

 ……まあとにかく。


「まあとにかくハプニングはあったけど、最後まで何事も無かったならいいか、うん……」


 いや、ちょっと待てよ。


「……本当に何も無かった? 私変な事とか言って無かった? ほんと全然覚えていなくて……」


「いやーそこまで変な事は言ってなかったんじゃないっすかね、うん」


「これ絶対言ってる奴じゃん!」


「いや、ほんと、そこまで変じゃ無かったっすよ」


「い、一体私どんな感じになってたの! ねえ!」


「そんな事より」


 シズクに半ば強引に話をそらされる。


「大丈夫そうっすか? 集合時間まではかなり時間ありそうっすけど、それまでに回復しそうっすか?」


「あー、まあシズクの治癒魔術があればどうにかなるでしょ。ほんとごめん助かったよ」


 ……うん、ほんと助かった。

 今日は紆余曲折あって里帰りする日だ。まあほぼ毎日帰ってはいるんだけど、とにかく里帰りの日だ。

 ……色々面倒な事もありそうだし、コンディションは戻しておかないと。


 この最悪なコンディションであの馬鹿と顔合わせるのは勘弁だし。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る