ex 受付聖女達、場所移動

 真剣な表情でそう語り終えたシエルを見てシズクは思う。


(か、かっけええええええええッ!)


 突然ぶっこんで来た時は暴走というか、マジで何やってんだこの人アホじゃないのか!? と内心少しは考えた訳だけれど、こうなってくると普通に格好良くて困る。


 そしてそんな格好良い雰囲気のまま、シエルは言う。


「まあウチが踏み込んだ理由なんてそんな感じ。切り込み方がちょっと強引だったかもしれないけれど、それでもまあ結果的に悪くない方に転がってくれて良かったよ。今なら色々と話しやすいし」


「とはいえあまり話せる事はありませんよ? ほら、結局隠れてこそこそやっている事ですし……」


「逆に話せる事は話してくれるんだ」


「……まあ、正体バレて追い詰められてるような感じではありますし、あなた達が悪い人じゃないのは分かりますから」


 そう言って一拍空けてからミカは言う。


「私達が話せる情報で、私達と同じ境遇かもしれない人達の命運が少しでも良い方向に転がるなら……寧ろ、話せるだけの事は話したい」


「……そうっすか。ありがとうっす」


 元々会話の節々から良い人なのは伝わってきてたけど……改めて確信する。


(うわ、この子めっちゃいい子じゃないっすか!)


 控えめに言って友達になりたい。

 ……まあ色々と難しいかもしれないけれど。

 そしてミカはシズクに視線を向けて言う。


「その代わり、なんて求めて良いのかは分からないけど……私からも聞きたい事とかあったら聞いても良いかな?」


「あ、勿論っすよ。こっちも話せる範囲でですけど」


「話せない事が一杯あるのは同じだね」


「そうっすね」


 とは言いつつも実際話せない事なんてそうそうないんだけど。

 話せない事なんて殆どない。

 精々現住所とかは職場とかは言うの控えた方が良いかなと思う位。


「で、どうする?」


 シエルがシズクとミカに尋ねる。


「ウチが色々と気付く前、なんかお店出るみたいな話してたよね? どうする? このままこの店で話すか場所移動するか」


「そうっすね。当初の流れ通り、注文した物食べ終わったら店変えないっすか?」


「そうだね。もしかしたらルカ君達の邪魔になるかもしれない訳だし」


「じゃあ決まりだね。店を変えよう」


「何か良い所とかあります? 私まあ……こういう立場なんで。あんまり知らないんですよこの国の事」


「じゃあウチの家近くだし……と思ったけど、実はウチ適当な理由でっちあげて絶賛サボリ中なんだよね。家帰ったらサボってた事バレちゃうんだぜ」


「あの……何かお仕事があるなら普通に帰った方が……あの、信用して貰えないかもしれないですけど、待ちますよ私」


「ああ良いよ良いよ気にしないで」


「……」


 滅茶苦茶気になる。

 正直結構真面目に仕事に取り組んでるタイプの人間なので滅茶苦茶気になる。

 ……まあ話がそれるので、これ以上は突っ込まないが。

 だからそれを突っ込む事より、とりあえず案を出す。


「あ、じゃあカラオケ行かないっすか? 密室だし……後クーポン券持ってるっす」


「よしナイスアイデア! それで行こう」


「カラオケ……話には聞いた事あるけど、行った事ないな」


「え、行った事ないんすか!?」


「マジで!?」


「え、あ、はい。その……立場的に」


 カラオケも行けない立場ってどんな立場だよとは思ったけど、話が逸れそうなので突っ込まず。


「じゃあ話しつつ少し歌う感じでどうっすか? 折角なんで」


「賛成!」


「え、なんか遊びに行くみたいな雰囲気になってる……」


 とまあそんな訳で、場所移動をする事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る