ex 聖女の親友、持論を語る。
「あ、あの……シエルさん? なんか前に聞いた話と全然違うんすけど? 確か最近麻薬の取引現場に偶然居合わせたりした位だって……いや、それ位で流せる話じゃないんすけど、それはそれとして……じ、実は他にも巻き込まれまくってる感じなんすか!?」
「そだよ。でもまあ嘘は言ってないよね。実際それだけが最近あった事だよ。今月はそれだけ」
「いや……いやいや、あの場合の最近ってどう考えてもここ数か月とか半年とか、そんな感じな話だったじゃないっすか。アンナさんとは数年会って無かった訳だし……もうそれ半分嘘みたいなもんっすよ」
アンナがこの国に来てから大丈夫だったかの質問に対する解がソレだった訳で。
嘘では無いのだろうが……それでも聞かれた事をうまく躱したような物だから、それは嘘に限りなく近い何かだ。
そしてシエルは言う。
「まあそうかもね。でも馬鹿正直に流石に本当の事は言えないでしょ……少なくともこうやって速攻で切り替えができるようになる位には色々とあった訳だからさ。ただでさえ色々大変なあっちゃんにこれ以上心配はさせられないよ」
「……そうっすか」
それを言われたらそれまでだ。
そもそも咎めるような事でもないのでこれ以上追求はしない事にする。
麻薬取引の現場に居合わせる事は話せるというアンナとシエルの感覚というか昔あっただあろう色々な事件の話は聞いてみたくはあるけど。
「あ、分かってると思うけど、これあっちゃんには内緒ね」
「分かってるっすよ」
「なら良し……じゃあ一応踏み込んだ根拠とかを話しておこうか」
そう言ってシエルはアンナとルカの居るテーブルに視線を向ける。
「本当にヤバい奴はなりふり構わない。ああやってミカちゃんの相方が話し合いに応じている時点で、幾分かリスクは低くなる。それに多分目立つ事はやりたくないでしょ。それこそなにやってたのかは知らないけど、暗躍って言葉がしっくり来るような行動をしてるんだからさ」
「でも話すだけ話して、後は目立たない所で……って事もありますよね。私が言える事じゃないですけど」
「そうなった場合あっちゃんは勿論、聖女やってたシズクちゃん相手ならならどうやっても目立つ感じな事になるだろうし、そもそもそういうリスクがあるから向こうも穏便に進めてるんでしょ。まあウチが襲われたらどうにもならないだろうけど……まあ、そうなったらその時」
「その時って……そんなに軽く」
「ち、ちなみに他に理由は……」
「ああ、後は直感」
「「直感!?」」
突然IQが下がったような発言をされて二人してそんな声を上げるが、なおも真剣な表情でシエルは言う。
「そ。アホらしい話に聞こえるけど、物事判断する上で理屈並べるのと同じ位大事な事だと思うよ。それに従って良い思いも痛い目も見てきたウチの持論」
そう言ってシエルはミカに視線を向けて言う。
「ウチの直感が、此処で踏み込むリスクと得られるメリットを天秤に掛けて、メリットに傾いた。ゆっくり慎重に機会を伺って逃すより、此処で踏み込むべきだと判断したんだ」
「……あの、一つ良いですか?」
ミカがシエルに問いかける。
「そうやって色々と理由を並べても、やっぱり危ない事ですよね? それなのにどうして……」
「今日ウチらとミカちゃんは色々と勘違いして此処に一緒に居る。そんな偶然はそう無いし、今踏み込まなきゃ機会を失う。それに二人から別々に話を聞いておいた方が後で情報の真偽を測りやす――」
「あ、いや……そういう事じゃなくて」
ミカは一拍空けてから言う。
「シエルさんは……まあ話聞いてる感じ大変な私生活を送ってそうですけど……その、今起きている色々な事と関係の無い一般の方ですよね? それなのになんでそんなリスクをって話で……」
「立場なんて関係ないよ。親友が色々と巻き込まれていて、自分がそれを手助けできるかもしれない状況に立っている。リスク覚悟で踏み込むのにそれ以上の理由なんている?」
即答。
ただ当たり前の事を言うようにシエルはそう言った。
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