66 聖女さん達、ランクアップ
色々と釈然としない話をワイワイとしながら朝食を終えた私達は、着替えを済ませて家を出る事にした。
まずは転移魔術を使ってシズクの部屋へ。
「「「お邪魔します」」」
「ただいまー」
「「「お邪魔しましたー」」」
「行ってきまーす」
そしてシズクの部屋を素通り。
ちなみによく見たら部屋の隅にベースギターが置かれていたのは確認できたので、今度セッションするのが少し楽しみになったよ。
まあそれは少し先になると思う。
私は実家住まいだから何も捨てては無いけれど、シルヴィとステラは必要最低限の私物しか持ってきていない訳で。
昨日聞いた話だと買い直さないといけないらしい。
まあ二人共今回の報酬使えば買える思うんだけどね。
これからも依頼ごとにお金も入ってくるんだし。
次からは正規の方法で受けた依頼で。
「あー緊張するっすね」
道中シズクが不安そうな表情でそう言う。
「もしクビになってたら、ボクちょっとショックで立ち直れないかもしれないっすよ」
祈るようにそう言うシズクと共に向かっているのは冒険者ギルドだ。
別に仕事をしに行くのではなく、目的は二つ。
まず一つ目は私とシルヴィとステラの冒険者ランクが上がっているかどうかの確認。
そして二つ目が……シズクがクビになっているか否かである。
「まあポジティブに行こうよ。数か月の謹慎程度で済むよきっと」
「そうですよ。きっと謹慎で済みます」
「信じようぜ、ギルドの部長が謹慎を勝ち取ってくる事を」
「それポジティブなんすかね?」
シズクは腑に落ちない様子だったけど、正直結構ポジティブな考えじゃないかなって思う。
とにかく、そんな風にポジティブな期待を抱きながら私達は冒険者ギルドへ。
そしてギルドの前にまで来たところで。
「あ、部長だ」
そう言ってシズクが視線を向けた先の、屋外喫煙所でたばこの煙を吹かすクライドさんが居た。
ちなみに冒険者ギルドは二週間前から屋内禁煙になったらしいよ。
そして向うもこちらに気付いたらしく、たばこの火を消してこちらに歩み寄ってくる。
「おー朝早くからよく来たな」
「部長、おはようございますっす!」
「おう、おはよう」
シズクの挨拶にそう返すクライドさんの表情からは気まずさのようなものは感じられない。
これは……勝ち取ったね、謹慎。
そしてそんなクライドさんにシズクは問いかける。
「それで……ボクどうなったっすか?」
「その件も含めて、こんな所で立ち話するのもなんだろ。中入れよ。特に元聖女のお三方には渡す物もある訳だしな」
渡す物……更新されたギルドカードかな
それしかないだろうし。
……まあとにかくシズクは自分の進退を聞くために。
私達三人はギルドカードを受け取る為に、クライドさんと共にギルドの中へと入った。
そして案内されたのは昨日と同じ端のスペース。
そこに私達を待機させて、クライドさんは事務所から渡す物を取ってくると言って消えていく。
「まあ間違いなく皆さんに渡す物はギルドカードっすね」
「だと思うよ。ちなみにシズク的には私達どのランク貰えると思う?」
「そうっすね……力量的な話だけで言えば、皆さん間違いなく最高位のSSランクとか貰っても良いと思うんすけど……でもギルドのランクってそんなに単純に決められてるものじゃないっすから。こればっかりは査定に携わってないボクじゃ何も分かんないっすね。そもそも今回みたいなケース自体が基本はマニュアルに無い事っすから……ボクの進退が危ぶまれる位には」
「う、うん、そうだね……イレギュラーだね」
頼む! なんとかクビは回避してあげて!
と、祈るようにそんなやり取りをしていると、クライドさんが戻ってくる
その手にあるのは三枚のカード。
「大体察してると思うが、渡す物っていうのは更新したギルドカードだ。態々朝から来て空振りに終わんなくて良かったな」
そう言って差し出されたカードを私達三人は受け取る。
記されているランクは……Aランクだ。
「ん? どれどれ。結局ランクはどうだったっすか……ってAランクっすか。SSランクは多分無いなって思ったっすけど、Sランクですらないんすか」
確かにSSは無理でもSランク位貰えたりするのかなってぼんやり考えてたから、少し意外だ。
だけどクライドさんは言う。
「まあ実力的にはもっと上なんだろうってのは分かってる。分かってるが……基本査定で見られるのは実力だけじゃねえ。例えばどのランクの依頼を何回受けているとか、そういう所も見られるんだわ。で、お前らは昨日の依頼一回だけだろ? Aランクってのはこれでも上げられるだけ上げた結果なんだぜ?」
「なるほど……回数ですか」
「普通はAランクに上がるのにも何度も相応のランクの依頼に何度も行って貰わねえといけねえんだ。Aランクでも特例中の特例だよ……不満か?」
「あ、いや、全然大丈夫」
「そうですね。別にSランクにならないと駄目っていう事情も無いですし」
「そんなにガチ勢って訳でもねえしな」
「ならいい。まあお前らなら適当にやっててもすぐに上に上がれるさ……で、別に今のが大事じゃないって訳じゃねえんだが……そろそろ本題入っとくか。面接の時みたいにガチガチに緊張し始めてる奴が約一名居るしな」
「……ッ」
そして告げられる……運命のジャッジが。
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