17 聖女くん、窮地
「相談……?」
「何かあったんですか? いや、合ったんでしょうけど……」
「ああ、合ったんだ……まあ立ち話もなんだ。中に入ろう」
ステラに促されて、私達は冒険者ギルドの中へ。
そして空いているテーブルを探した後、着席。
「確か軽食とか飲み物位なら頼めるんだったよな。二人は何か頼みたい物とかある? 奢るよ」
「あ、いえ、大丈夫です」
「それより何が有ったか教えてよ」
「あーうん。そう……だな」
少し言いにくそうにしながらも、やがてゆっくりと語り出す。
「昨日二人が店を出た後の話なんだけどさ、ちょっとヤバそうな雰囲気の連中が店に来たんだ」
「ヤバそうな奴?」
「あれは堅気の人間じゃねえと思う。まあそういう奴らが店に来たんだ」
「来て暴れたの? それで報復するから力貸してくれって事かな?」
「元聖女が三人も居ればその位は出来るかもしれませんけど……でもできるならもっと平和的な解決方法を探した方が……」
「あーいや、そんなんじゃない。ていうか連中全員ぶっ飛ばす位だったら俺一人で充分」
……うん、多分そんな気がする。
マフィアだとかそういう連中の所に単身カチコミをかけても無傷で出てきそうなイメージがある。
多分私もシルヴィもできるし……雰囲気的にステラは特に。
でもまあそんな荒事とは違うようで。
「まあ一言で話纏めるとな……店長と女将さんがさ、知人の連帯保証人になってたみたいなんだよ。なんというか、凄いお人好しだからさ、あの二人は」
「……は?」
正直想定していなかったベクトルの話をされて、思わずそんな間の抜けた声を出してしまった。
いや、だって……えぇ……。
なんというか……抱えた問題が現実的すぎない?
そして困惑する私とシルヴィにステラは続ける。
「それで、まあ……結構な額の借金を背負わされちゃったみたいで……その……このままだと二人の店が無くなるかもしれない」
だけど困惑しながらも、そこまでの話とステラが冒険者になっている事を考えると、一体ステラが何をしようとしているのかは理解できた。
「じゃあステラは……どうにかしてお金を稼ごうとしてるんだ」
「……まあ、そういう事になるな」
読み通りステラは頷いて言う。
「二人は私に何もしないでいいって言ってくれた。これは自分たちの問題で、危険な事はするなって心配もしてくれた。だけどさ……まだ出会ってそれ程長い時間を共有した訳じゃないけどさ、右も左も分からなかった俺は確かにあの二人に救われたんだ。俺はあの二人の事が大好きなんだ。なんとかしてやりたい……そう、思って此処に来た」
……それを聞いて、多分ステラは色々と損をする事が多そうな人間だなと思った。
きっと店長さん達の言う通り、ステラは何もしなくてもいいと思うんだ。
確かにステラは大きな恩を感じているのかもしれないけれど、色々と問題の規模が釣り合っていないような気もするし、そういう問題はあまり間に入って抱え込まない方がいいと思う。
ステラが働いているお店の店長さん達がそうだったように、そういう行動はきっと自分の身を亡ぼすと思うから。
だけど……そんな一般論は結局の所、当人達にとってはノイズでしかなくて。
そもそもそんな一般論は何も知らない外野だから言える事で。
ステラが何とかしようと思うに至った感情や、思わせるに至った店長さん達の優しさを否定するような事は言いたくなかった。
言える訳が無かった。
言うべきなのはもっと別の事。
「それでも、一人じゃまともに稼げる依頼が何も無かった……って所かな」
「……ああ。それに俺みたいな駆け出しじゃ他の冒険者は誰も相手にしてくれねえ」
私の読みに再びステラは頷く。
これで読めた。
ステラが私とシルヴィに何を頼みたいのか。
「つまりアレだね。ステラは私達とパーティーを組みたいって事なのかな?」
きっとこれで正解だ。
駆け出しが三人揃ってもあまり大きな変化は無いかもしれない。
だけどそれでも一人と比較すれば状況が著しく好転する事には違いない。
そしてそれは大正解だ。
「頼む……俺とパーティーを組んで、難易度と報酬の高い依頼を一緒に受けてくれないか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます