9 聖女くん、かわいい

「あ、ちょっと待っててくれ。てんちょー! 俺ちょっと休憩取っていいっすかー!」


「いいよー!」


「あざーっす!」


 そう言ったボーイッシュなウェイトレスさん……否、ボーイッシュな元聖女さんは、近くの椅子を持ってきて私達のテーブルの前に陣取った……と思ったら何か忘れ物をしたかのように厨房へと走っていき、オレンジジュースを持参して着席。


「社割で飲めるんだ。良いだろ」


「そ、そうですね」


「い、良いんじゃないかな」


 そう言って私とシルヴィが苦笑いを浮かべていると、ボーイッシュ聖女さんは言う。


「俺の名前はステラって言うんだ。同じ追放された聖女同士これから仲良くしていこうぜ」


「ど、どうも、シルヴィって言います」


「私はアンナ。よ、よろしく」


「よろしく!」


 妙にテンションが高いステラと自己紹介を交わした。

 ……しかし追放された聖女同士仲良く……ね。


「しかしまさかこんな所で三人目に出会えるとは思わなかったよ」


「いやー俺もだよ。まさか俺みたいにアホみたいな理由で追放されてる奴がいて、それがまさかの二人もいるなんてよ。こんな事あるか普通。世の中狭いわー」


「いや、普通は無いと思いますよ……というか一人でも追放されてるのがおかしいっていうか……」


「しかも理由が理由だしね。聞いた感じだとステラの所も王様とかの女絡みでしょ?」


「そうなんだよ。聖女の仕事舐めんなってんだよマジで」


「ち、ちなみに後任の人、どんな感じの人でした?」


「あー俺と違ってすっげえ女の子女の子してたわ……俺と違って。すっげえ可愛かった。いや、あの王子にそういう気はねえんだけどさ……なんかすげえ負けた気がした」


「「……」」


 は、反応に困る。

 なんか私達とはまた別なベクトルのダメージの受け方してる!

 な、なんて声を掛けたら良いのか……。


「す、ステラさんも凄く可愛いですよ!」


 シルヴィちゃん行ったぁ!

 この難しい空気にうまく突っ込んだ!

 私も続け!


「そ、そうだよ。ステラさ、すっごい美人さんじゃん!」


 嘘は言っていない。

 この人がさつな喋り方とボーイッシュさでなんというか……クセはあるんだろうけど、女の私が見てもすっごい美人だと思うよ。


「そ、そうか……ありがと」


 ステラは少し顔を赤らめて視線を反らす。

 ……うん、この人普通に可愛いよマジで。

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