第32話 玉の輿の勧め
29歳になっていた私。
そんな適齢期を過ぎた私に母は身近な人との結婚を勧めるようになった。
一番猛プッシュしてきたのは、ターロの弟さんだ。
ターロの弟さんはその時、確か50近かったが一度も結婚した事が無かった。
某大手企業に勤めていた弟さんは、母にとって魅力的な相手だったのだろう。
かなり太った人で、私は太っている男性には安心感を感じるので、別に嫌では無かった。
けれどターロは猛反対した。
「いいじゃん、いいじゃん、何でダメなの?」
と言いまくる母。
「ありえん!」
と話を聞きたくないとするターロ。
私はどっちでもいいと思っていた。
弟さんがダメならと、次に母が私に勧めてきた相手は従兄のヒロちゃんだった。
ヒロちゃんは私より四つ上で母の兄の子で鹿児島に住んでいる。
鹿児島の伯父さんのところにはヒロちゃんと、もう一人ヒロちゃんの弟がいたが、彼は20歳の頃に出来ちゃった婚をしてすでに離婚までしていた。
それもあってか、母は兄の方であるヒロちゃんを私に勧めた。
ヒロちゃんは、大人しくモテるタイプではない。
けれど私は鹿児島に行くたびに遊んでくれるヒロちゃんは大好きだったので、これまた嫌がる理由は無かった。
けれどこれも母が勝手に言ってるだけで、伯父さんも賛成はしなかったようだ。
母が私とヒロちゃんを結婚させたかったのは、鹿児島の家が欲しかったからだと思われる。母の中の図式では、私がヒロちゃんと結婚すれば、将来は鹿児島の家が自分の物になると描いていたようだ。
母は私を早く結婚させたかったというより、財力や家がほしかったのだ。
三人目に白羽の矢が立ったのは、前に母が務めていたお寿司屋さんの店長だ。
この店長はその後、九州に転勤になったのだが、母とはやり取りがあったようだ。
母と同じくギャンブル好きだが、某有名チェーン店の店長なので将来安泰を母は見たのだろう。
これに関しても、ターロの反対で無くなった。
やはりすでに50前後だった店長と29歳の娘を結婚させようとする事がターロは納得いかないようだった。
私自身は、店長は好みで無いしあまり乗り気はしないけれど、かなりな年上好きなのでその点については問題無かった。
母は矛盾しているのだ。
「あんたみたいなデブは結婚出来るわけないやろ」
と言うくせに、誰かと結婚させようとする。
結婚できないと言うくせに、玉の輿に乗せようとする。
もちろん、私のためというより自分の欲のためなのだった。
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