第33話 母との関係の変化
実家に戻ってからは、S兄ちゃんがいたのもあるが、昔ほど母に酷い言動をされる事は無くなっていた。
昔の借家と違って、リフォームしたターロの実家だったので部屋数はある。
なので私も自分の部屋が持てて、同じ家に住んでいながら母と接する時間が減っていった。減ったにも関わらず、S兄ちゃんが相手してくれているおかげで私が呼ばれる事も少なくなった。
そして私自身も、再び家を出たい、しかも出るなら結婚して出たいと思い今でいうところの婚活を始める事にしたのだ。
母は悪いというか、えげつないぐらい利己的なところもあるが、利己的だからこそ人に何かしたいという知らない人から見たら『思いやり』に見える言動も良くする。
だから距離感を保って付き合うと、私まで母が『いい人』のような気がしてさえくるのだ。
何も変わってないのに。
何かスイッチが入れば、昔のようにキーキーとヒステリーに怒り出すし、信じられないような暴言も吐く。
何気ない会話で、聞き間違いかと思うような差別発言を絡めた毒を吐いてくる。
なのに、物理的に、そして時間的に距離をあける事が増えただけで、何だか違って感じるのだから不思議だ。
家を出ていた間ですら、そうは感じなかった。物理的距離感はあったのに。
多分それは母が私を牛耳れない怒りと、お金の問題があったからだろう。
この母との関係の変化は私の気持ちも変えて行った。
元々私は母の事は嫌いではない。
ただ、興味が無いというか無関心。
ほらあれだよ、好きの反対は嫌いじゃなくて無関心ってやつ。
私は嫌いというほども母の事、興味なかったし好かれたいとも思ってこなかった。
だから私にとって、不快な人である頻度が減ってくると無関心ではあるけれど人間としての情は沸いてきたのだ。
これが私と母との関係が変わってきた始まりだったと思う。
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