第30話 仕送りその後2
私はなんだかんだと五万円の仕送りを続けていた。
一緒に住んでいた、みーたんには私にチクりとくる「親離れが出来ていない」を連呼されたが、みーたんだって父親と妹さんに仕送りしていたのだ。
母親への仕送りの話をふと、会社の人にした時に
「親孝行なんだね」
と言われ、違うのだがハッとした。
親離れ出来ていないという恐怖というか、拭っても足蹴にしても付きまとってくる「一人っ子だから甘やかされて育ったんだろう」に続きそうな私が大人に慣れてないんじゃないかという他人からの評価が怖かった。
だから家から出て、他県にきたけれど、母からの支配から抜け出せずに仕送りを続けていた事は、いつ誰かに
「まだ親離れ出来てないんだね、一人っ子だったからかな、甘やかされて育ったんだろうね」
等の事を言われても仕方がないと構えていたのだ。
だけどその会社の人の「親孝行なんだね」という言葉は目からうろこだった。
それ使えるやん!
そうだよ、私は親離れ出来てないんじゃなくて親孝行だから母に仕送りしてるんだよ(実際は違うが)と言えるなと、やっと呪縛から抜け出せたのだ。
お給料は、前より下がった上に家賃、光熱費や食費などが必要となる。
いくら三人で折半にしているとはいえ、五万の仕送りは厳しい時があった。
そういった時に、三万で勘弁してもらえないかと交渉すると「高校を出してやった恩を仇で返す気か」と言われる。
今まで母に渡してきたお金で、もうその金額は返しきれたと思うが、そんな事言おうものなら
「何という親不孝!高校の費用だけで済むと思っているのか。食べるものも着るものも住むところも与えてやったのに」
とキレる事は目に見えている。
みーたんとの生活で精神的に疲れ切ってきた私には、母とまで格闘する精神力は残っていなかった。
好きなものも買えない。
五万円のお小遣いをもらっていた事がいかに贅沢だったかを思い知ったのだった。
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