第29話 仕送りその後
会社を退職したので寮も出ることになった。
新しい土地に行き、部屋を借りる。
私一人だったらお金が足らず出来なかっただろう。
会社都合にしてもらって退職したので雇用保険がすぐにもらえたが、それも三か月のみ。それまでに仕事を決めなければならない。
誰も知り合いがいない、見知らぬ土地で、各自百万の貯金(私は少し足らなかった)を準備していたとはいえ、とても心細かった。
会社を辞めた事を怒っていた母だが、仕送りを止めないならばいいと言う。
いやいや、無職なんだから十万円も仕送り出来るわけないでしょうと無理な事を伝えると
「仕事辞めたのは、お前の勝手。十万が無理なら五万でも送ってこい」
と言う。いつもの死ぬ死ぬ脅しに負けながら私は、なけなしの貯金と雇用保険から五万円を仕送りしたのだった。
後から分かった事なのだが、どうやら私が仕送り形態にした辺りから、実家にはS兄ちゃん(母の弟)が一緒に住むようになっていたらしい。
そしてS兄ちゃんは部屋代と食事代と称して母にお金を渡していたらしい。
部屋代だったら母じゃなくて、ターロに渡すべきだろう。ターロの家なんだから。
でもまぁ、そういう経緯があったので母は私の仕送りが減っても怒りはしたが、案外あっさり引いたのだろう。
ターロは無職だったが、パチンコ等で自分の使うお金は何とかしていたし食費は母に渡していたはず。
母は働いていたし、そもそも家賃がかからない家に暮らしていたしそんなにもお金が必要だったとも思えない。
冷静に考えればそういう事が見えてくるのに、どうしても私は死ぬ死ぬ脅しにあうと母に従ってしまっていたのだ。
でもここからこそが私の生活は大変になる。
五万円ものお小遣いをもらっていたセレブ時代はもう二度とこないのだ。
そして本当の親離れが出来たのはこの頃だったと思う。
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