第22話 毒母と進路
大学に行くつもりで進学クラスに編入試験を受けてまで入った私は、本格的に志望大学を絞ろうとしていた。
隣県にあった福祉大学がこの地方では一番、私の目指したい養護学校の先生になるには良さそうだったが遠いので通いでは無理だった。
ただ、パパの実家からは近かったので私の中でいざとなったらそっちを頼るなり近くに部屋を借りるなりするのもアリだとも考えていた。
ここを第一志望として、第二志望をこの学校の姉妹校になっている短大にしようかと考えた。
けれどその夢は高校三年生の冬に崩れた。
「あんた、大学なんて行くつもりにしてるみたいだけど、うちではお金出さないからね」
と急に言い出したのだ。
私が二年になる時に編入試験を受けた時には
「あんたはパパの血を引いてるから、その辺の大学なんて簡単に入れるでしょ」
と言って、大学に行くことに反対してなかったのに。
うーん、どうする?今更アルバイトして入学金貯めるなんて間に合わないよね。
と思っていたら母がある提案をしてきた。
「あんたさ、犬好きでしょ。△町にトリマーの学校あるから、そこならお金出してあげるから、そこに行きなさい」
と。大学に行きたかったが、お金の事で絶望的だと思った私はトリマーという言葉に「案外いいかも」と反応してしまったのだ。
高校三年生の冬に大学行くお金が無いとなったら、もう今は諦めるしかない。
だったら少しでも前向きに、しかもトリマーって悪くなさそう、いやむしろ楽しそう。
そう思って私は学校にも進路変更してトリマーの専門学校に行くという報告をしたのだった。
ところがそろそろトリマーの学校の願書も出さなきゃという頃になって
「やっぱ、学校行くお金なんて出せないわ。働いて」
と母は言い出したのだ。
いや働いてと言われても、学校の就職あっせんはとっくに終了している。
高校生の私が自分の力で就職先を探してくるなんてどうしていいか、その当時は分からなかった。
というか卒業も迫っているというのに。
大学の推薦をもらおうと、評価成績4.7(5段階評価の平均成績)を取っても何の意味も無かった。
とにかく高校卒業した後の進路を考えないとと思い
「働きながら学校に行くというのではダメ?」
と母に尋ねるも
「働くんだったら、学校行かずに家にお金入れて」
と言う。
就職と言っても方法が分からない私は本屋で売っているアルバイト情報誌を買ってきて探すぐらいしか出来なかった。
そしてそのまま何も決まらずに卒業。
私は無職で社会に出ることになったのだった。
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