第20話 ブラジャー

 中学生になっても私の下着は小学生用のシミーズだった。

 早い子は小学校六年生からブラを付けていたが、中学生ではまだ私には焦りは無かった、修学旅行までは……。


 修学旅行に行ったら、周りにブラじゃない事を知られるのが恥ずかしい

 そう思ったのではない。

 そんなのは全く考えていなかったし、何とも思っていなかった。


 というか、母が買い与えてくれないので、まだ私の年齢では必要のないものなのだと思っていた。


 けれどそれは修学旅行前の持ち物検査で変わることになる。


 私の通っていた中学では、何故か修学旅行の前日にPTAのおばさんたちによる手荷物検査があったのだが、そこで私のシミーズを見てまず叱られた。


 多分、今思うと子ども用のシミーズじゃなくて、大人用のシミーズだと思ったんだろうね。

 だから中学生がそんな物持って行っちゃいけないと注意してきたような気がする。


 だって、結構な理不尽な叱られ方だった。


 何も悪い事した憶えないのに、普段使ってる子ども用のシミーズに顔をしかめられて

「こんなものは持って行かないように」

 と言われるんだもの。


 それだけじゃ終わらなかった。

 かばんを探してもブラが見つからない事で、更に怒られたのだ。


 そりゃあ無いよね、子ども用のシミーズ一枚で、ブラなんて持ってないんだから。


 なんかさ、そのPTAのおばさんは私がふしだらな子どもとでも思ったのかもしれない。


 明日はちゃんとブラジャーも持ってくるように、となんか軽蔑するような目で言うんだよ。


 きつかったなぁ、この時。

 だから帰ったらすぐに母に事情を話して、ブラを買ってくれるように頼んだよ。


 けれど母は買ってくれなかった。


「何言ってんの、シミーズで十分。あんたブラジャーが必要な胸なんて無いじゃん」


 とこれまた思春期の娘の心をえぐるような事を言った。


 この言葉でもう、中学生の私はそれ以上ねだる事は精神的に出来なかった。


 この先も友達にブラを持ってないのを知られるのが嫌だという思いは多分、全く無かった。

 それよりもブラじゃない事が校則破りかもしれないという事が恐怖でシミーズを隠して持って行った。


 毒親で育った人のマンガや話を読んでいると、ブラを買ってもらえないというのは、かなりのあるあるらしい。


 そして皆さん、母親のブラジャーをこっそり盗んで使っていたようだが、私にはその発想は無かった。


 多分、母の下着を使うなんて気持ち悪くて出来なかったからだと思う。


 というわけでブラ関連は続きます。



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